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「偽情報・誤情報」研究が直面する5つの課題

ニューズウィーク日本版 / 2024年12月29日 7時38分

やがて、じょじょに懸念を表明する専門家が増えてきた。主たる懸念は共通しており、次の5つだ。

1.偽・誤情報の定義が曖昧で共有されていない
2.偽・誤情報問題は政治的である
3.影響や被害の特定は困難かつ評価方法は定まっていない
4.データアクセスに制限がある
5.世界各地で偽・誤情報問題は起きているが、調査研究は米国を対象したものばかりである

最近、公開された「A field's dilemmas Misinformation research has exploded. But scientists are still grappling with fundamental challenges」と「Misinformed about misinformation: On the polarizing discourse on misinformation and its consequences for the field」をもとに、その懸念をご紹介したいと思う。

課題1 偽・誤情報の定義が曖昧で共有されていない

最初から情けない話しだが、この分野の言葉の定義は曖昧で共有もされていない。

実際に150人の専門家を調べたところ、バラバラであることがわかった。ふつうに解釈するなら「偽・誤情報に関する調査研究の対象はそれぞれ異なる」ということになり、共有も議論も成立しないことになる。

余談だが、偽・誤情報そのものは問題ではない、と私は考えており、同じことを主張する専門家もいる。理由は簡単で、科学や情報は常に更新されるものだからである。

つまり、いま正しくないと言われていることが、のちに正しかったことがわかることもある。冤罪が晴らされることもあれば、未検証だった科学理論が検証されることもある。

昔、アメリカが世界中を監視、盗聴していると言ったら陰謀論と言われただろうが、スノーデンが機密文書を公開して、それは誤りではなかったことがわかった。偽・誤情報の存在を悪であると決めつけることや、いまの判断尺度で判断することは、新しい発見や真実を埋もれさせてしまう。

世の中には埋もれさせていい偽・誤情報と、埋もれさせてはいけない偽・誤情報があると考える人もいるかもしれない。しかし、その判断はあくまで現時点のものでしかない。その判断の根拠になる科学的知見は更新されるし、文化や思想の変化で評価が変わることもある。そう考えると、偽・誤情報がある方が正常な状態と言ってよいだろう。

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