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「偽情報・誤情報」研究が直面する5つの課題

ニューズウィーク日本版 / 2024年12月29日 7時38分

2つの論考では触れられていなかったが、そもそも因果関係は適当にデータを入れればわかるわけではなく、因果関係を仮定しなければならない。適切な仮定を作ることができていない可能性は高く、さらに悪いことで不適切な仮定であっても因果関係の検証はできるため、一見妥当なものに見えてしまう。

課題4 データアクセスに制限がある

この領域の多くのデータはSNSプラットフォームなどの民間企業が保有しており、研究者が扱えるのはその一部にすぎない。これまでの、そしてこれからの研究は、民間企業が提供するデータに依存している。

さらに特にやっかいなのはWhatsAppやTelegramなどメッセンジャーである。メッセンジャーでやりとりされている内容は原則として公開されない。

その一方で、入手困難なものの、そこに莫大なデータがあることがわかっているために、過剰にそのデータに依存している可能性も危惧されている。確かに、これまでの調査研究におけるSNSプラットフォームからのデータは非常に貴重で、数多くとりあげられてきた。

しかし、SNSプラットフォームは偽・誤情報問題を引き起こした張本人と名指しされることも多い。その犯人が自分たちに不利になるようなデータを渡していると考えるよりは、都合のよいデータを渡していると考える方が自然だろう。

実際、フェイスブックは調査の最中にモデレーションポリシーを変更して調査結果に影響を及ぼしたことがある。フェイスブック・ファイルには同社社内のこうした問題がいくつも暴かれている。

課題5 調査研究は米国を対象したものばかりである

偽・誤情報問題は世界規模で発生している問題だが、ほとんどの調査研究および対策は北半球、特に英語圏さらに米国に偏っている。

そして、共和党と民主党に焦点を当てたものが多い。米国を対象とした調査結果が、そのまま他の国にあてはまると考えるのは無理がある。そもそも複数国を対象にした調査研究では、国による違いが報告されている。

たとえば、デジタルメディアと民主主義の因果関係に関する496の論文を調査した「A systematic review of worldwide causal and correlational evidence on digital media and democracy」では、地域差が大きかったことなどが指摘されており、さらに米国の論文には、一般化することへの注意が欠けていることが多かった。

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