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「小惑星の資源採掘へ」月面探査で終わらない、中国が宇宙開発でアメリカを追い越す日

ニューズウィーク日本版 / 2025年1月9日 17時3分

月面着陸を果たした中国の嫦娥6号 CNSA/XINHUAーAAPーREUTERS

シモネッタ・ディピッポ(伊ボッコーニ大学宇宙経済進化研究所長)
<月の裏側探査を成功させた中国は、次なる目標を小惑星や火星、さらには木星圏へと拡大。宇宙経済を基盤に、この分野で世界一を目指す戦略を推し進めている>

2024年6月25日、宇宙開発の歴史に新たな「初」が記録された。中国の無人探査機「嫦娥(じょうが)6号」が月の南極付近に着陸し、採取した岩石のサンプルを地球に持ち帰ったのだ。

中国国家航天局(CNSA)は、嫦娥6号が月の裏側にあるアポロクレーターの南縁に着陸し、約1.9キロの岩と土を持ち帰ったと発表した。

月の南極は中国が主導する国際月面研究ステーション(ILRS)の建設場所になる予定だ。ILRSは事実上の国際宇宙機関として機能しており、ロシアやベネズエラ、南アフリカ、エジプトなどがパートナーとして参加している。

中国は宇宙経済を築き上げ、この分野で世界一になるという戦略的な目標を掲げている。月などの天体や小惑星で鉱物を探査・採取し、われらが太陽系に存在する水氷などの宇宙資源を活用したい考えだ。

その第一歩が月面の探査であり、次に狙うのは地球近傍天体(NEO)と呼ばれる複数の小惑星。その後は火星に行き、火星と木星の間にある小惑星帯を経て、天体間の重力が釣り合って安定した空間(いわゆるラグランジュ・ポイント)に宇宙ステーションを浮かべて木星の衛星群を調べ上げる。そんな計画だ。

実に壮大な話だが、当座の目標は26年に打ち上げ予定の無人探査機「嫦娥7号」を月面に送り込むことだ。

嫦娥7号は月の南極に極めて近いシャックルトン・クレーターの縁に着陸を予定している。月の南極付近は太陽光の差す角度が浅いので、大半が長い影に覆われている。しかしシャックルトン・クレーターの縁の隆起した部分は、常に太陽光に照らされて輝いている。

そこが着陸地点として魅力的なのは、クレーター内部へのアクセスが容易なためでもある。クレーターの内部は暗闇だが、大量の水氷があると考えられている。いうまでもないが、水はILRSの建設・運用に欠かせない資源だ。水があれば酸素ができるし、ロケット燃料に使う水素も取り出せる。

月の南極付近の岩石サンプルを地球に持ち帰った嫦娥6号のカプセル XINHUA/AFLO

ちなみにアメリカも、月の南極付近に基地を建設する構想を描いている。シャックルトン・クレーターの周縁は、いわば月世界の一等地。中国は嫦娥7号で、そこへの一番乗りを目指している。

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