トランプのおかげで「プーチンの夢」が叶う?...再来するトランプ・ワールドの外交・内政・経済を徹底予測
ニューズウィーク日本版 / 2025年1月17日 14時0分
グレン・カール(本誌コラムニスト、元CIA工作員)
<間もなく米大統領に就任するドナルド・トランプは「自分に服従しない者には容赦しない」。条約はただの紙切れに。大ロシア圏や中国帝国が台頭する「力こそ正義」の国際秩序が待っている?>
2016年の11月、ドナルド・トランプが初めて大統領選に勝利したあの日、私は仕事でウガンダの首都カンパラにいた。翌朝、ウガンダ軍情報部に所属する仲間がやって来て皮肉ながらも善意に満ちた言葉をかけてくれた。お望みならいつでも「政治亡命」を受け入れるぜ、と。
2カ月前にトランプが再び大統領に選ばれたときはベトナムの首都ハノイのホテル・メトロポールにいた。第1次インドシナ戦争中の1953年に作家グレアム・グリーン(Graham Greene)が投宿していて、現地の解放勢力が手榴弾を投げ込んでくるなかでフランスの高級ワインをすすり、時にアヘンに救いを求めていた場所。彼がアメリカ人の悲惨な自己欺瞞に気付き、あの名作『おとなしいアメリカ人(The Quiet American)』の構想を練っていた場所だ。
トランプならきっと「アメリカを再び偉大に」してくれる。2カ月前に投宿していたアメリカ人の中には、喜々としてそう言う人もいた。でも私の目には70年前のグレアム・グリーンの亡霊が見えた。
トランプ2期目のアメリカ(と、この世界)はどうなっていくのか。以下、ポイントごとに予測してみよう。
■条約も協定もただの紙切れ
世界中の国々はアメリカの指導者の弱腰に付け込んで利益を得、あらゆる国際機関はアメリカの自由と権力、富に縛りをかけている。トランプはそう信じて疑わない。
ロシアのプーチン大統領と語り合うトランプ(18年) KEVIN LAMARQUEーREUTERS
1945年以降の米外交の軸となってきた同盟関係や国連以下の国際機関、TPP(環太平洋経済連携協定)や気候変動対策のパリ協定も、トランプの目にはただ弱小国(つまりアメリカ以外の国)がアメリカを食い物にする手段と映る。
だから、ホワイトハウスに舞い戻れば再びパリ協定から離脱することだろう。脱退まではしなくても、WHO(世界保健機関)や国連の権限や影響力を弱めようとするだろう。
【関連記事】そもそも「パリ協定」って何?...知っておきたい、世界共通の「2度目標」と「1.5度目標」
NAFTA(北米自由貿易協定)に代わるUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)は2026年に再交渉の時期を迎えるが、トランプはこれを見直すか弱体化させると公言している。そもそもUSMCAは1期目のトランプ政権が、力ずくで押し付けた協定なのだが。
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