トランプのおかげで「プーチンの夢」が叶う?...再来するトランプ・ワールドの外交・内政・経済を徹底予測
ニューズウィーク日本版 / 2025年1月17日 14時0分
タイム誌の「今年の人」に選ばれればニューヨーク証券取引所の鐘を鳴らす(24年) NYSE GROUPーSIPA USAーREUTERS
日本も関税攻撃を覚悟すべきだ。トランプは1990年代に、「日本はアメリカを笑っている」とよく語っていた。笑わせないために関税をかけ、譲歩を引き出し、特定の品目については交渉次第で妥協する。それがトランプ流だ。
トランプは条約や同盟関係を嫌う孤立主義者でもあるから、日本や韓国、オーストラリアなどとの安全保障上の約束を歴代の大統領ほどに守るとは思えない。中国の外交的・軍事的な横暴にどう対処するかも不透明だ。恫喝や威嚇はするだろうが、その先の出方は分からない。
ロシアや中国と並んで「新たな悪の枢軸」を構成するイランと北朝鮮について、トランプはかねて「最大限の圧力」政策を提唱してきた。圧力をかければイランの核兵器開発も北朝鮮の核・弾道ミサイル開発も阻止できると信じているからだ。
しかし、現実には逆効果だった。イランの中東における代理勢力はイスラエルとの交戦で骨抜きにされたし、イランが通常兵器でイスラエルに勝てないことも明白になった。だからこそ、あの国は核兵器の開発に一段と力を入れている。
トランプは「最大限の圧力」を叫び続けるだろうが、結果は一段の緊張激化と軍事衝突のリスク増大だろう。ただし現在のイランは経済的にも困窮しており、政権基盤も揺らいでいる。くすぶる社会不安が火を噴けば、政権崩壊の可能性もある。
■「力こそ正義」の国際秩序
孤立を好み、敵を増やし、一国主義のトランプ外交の行き着く先は世界的な保護主義の台頭と国際機関の衰退だ。関税攻撃の程度にもよるが、アメリカを含め世界中で物価が上がり、経済成長率は鈍化またはマイナスに転じる。株価は下がり、国際協力は衰退する。
規範とルールに基づく国際社会のシステムは、ついに引き裂かれるだろう。これまでのアメリカは擁護者だったが、これからのトランプは一貫して国際社会を敵視し続ける。
アメリカは今後も地球上で最も影響力のある国であり続けるだろうが、既に世界は複数の大国が競合する多極化の時代に入っている。
強固な同盟関係や国際機関がトランプの孤立主義で弱体化すれば、東欧や中欧の近隣諸国を抱き込んで「大ロシア圏」を構築するというプーチンの夢がかなう可能性もある。
中国は既にアメリカと並ぶ超大国だが、アジアと西太平洋における優位性を一段と強固なものにし、自国を中心に据えた独自のルールと制度を押し付け、アジアと西太平洋に君臨する帝国を樹立しかねない。
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