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「臓器を摘出」する予防法も...がんは「治す」から「防ぐ」時代に、新たな医療アプローチ「VBC」とは?

ニューズウィーク日本版 / 2025年1月23日 17時44分

若い世代は幼少期からより多くの発癌物質にさらされてきた可能性が高い WILDPIXEL/ISTOCK

アレクシス・ケイサー(医療担当)
<癌がなくなって廃業に追い込まれるなら本望だ──病気になってからではなく、なる前に手を打つ予防医療に重点を移す医療機関が増えている理由とは?>

マイケル・ラトナーが脳腫瘍と診断されても、弟のブルースは希望を捨てなかった。彼には患者の家族の多くが持たない切り札があった。それは「アクセス」だ。

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ニューヨークで数々の開発事業を手がけた元不動産デベロッパーのブルース・ラトナーは、ウェイル・コーネル医科大学とメモリアル・スローン・ケタリング(MSK)癌センターの理事を務めていた。そのため世界最高クラスの癌専門医の何人かに個人的なつてがあり、大半の最先端治療にアクセスできる立場だった。

開頭手術で切除できない2つ目の悪性腫瘍が見つかっても、ラトナー兄弟には希望が残されていた。ブルースがMSKの医長に頼み込み、癌細胞を特異的に攻撃する新薬を処方してもらったのだ。

マイケルの症状は寛解し、家族と過ごす時間を与えられたが、治療で体が弱っているところに厄介な感染症にかかり、それがもとで亡くなった。享年72。最初に脳腫瘍の診断を受けてから8カ月後の死だった。

それから8年後の今、ブルース・ラトナー(Bruce Ratner)は「癌の早期発見のためのマイケル・D・ラトナー・センター(Michael D. Ratner Center for Early Detection of Cancer)」の創設者であり、昨年刊行された癌の早期発見の大切さを訴える本の共著者でもある。

この本で彼は、兄には最先端の治療を受けさせることができたと述べている。ただ残念なのは、受けるのが遅すぎたことだ。

MDアンダーソンでは癌のリスクを軽減するための啓発活動にも注力 THE UNIVERSITY OF TEXAS MD ANDERSON CANCER CENTER

不幸なことに、治せたはずの癌や防げたはずの癌はあまりに多い。

2019年のアメリカにおける癌の死亡例の半数近くは、喫煙、アルコール摂取、過体重など改善可能なリスク因子によるものとみられると、アメリカ癌協会発行の医学誌CA7月号に掲載された論文は報告している。

癌の治療法は目覚ましく進歩したが、患者数は減りそうにない。公衆衛生専門誌のランセット・パブリック・ヘルス8月号の掲載論文によると、3000万人超の癌患者と癌による死者を対象とした調査でX世代とミレニアル世代はそれ以前の世代と比べ、小腸、骨髄腫、腎臓、膵臓など17種の癌のリスクが高いことが分かったという。

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