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「臓器を摘出」する予防法も...がんは「治す」から「防ぐ」時代に、新たな医療アプローチ「VBC」とは?

ニューズウィーク日本版 / 2025年1月23日 17時44分

多くの場合は、地域の総合病院と連携している地元の開業医など、いわゆるプライマリーケアを提供する医師が、その地域の住民に生活習慣の改善などを助言する。

だが専門病院の場合、予防医療の対象となる「地域住民」が明確ではない。名だたる専門病院には世界中から患者が集まってくるからだ。

しかも癌専門病院には連携している開業医のネットワークもないため、違った形で予防医療に取り組む必要があると、MSKの経営者であるシェリー・アンダーソンは本誌に語った。

アンダーソンによれば、癌を引き起こす要因は遺伝子と生活習慣と環境だ。このうち2つはある程度まで制御できるが、遺伝子は変えられない。

そこでMSKでは、患者の癌が遺伝性とみられる場合、希望があれば親族の遺伝子検査を行う。変異遺伝子が見つかると、予防的に臓器の摘出手術を受けるなど「大胆な選択」をする人もいると、アンダーソンは言う。

一方、テキサス州ヒューストンのMDアンダーソンには癌予防の研究調査と地域で実践される啓発活動の立案を行う専門部門がある。

同部門が立案した「ビー・ウェル・コミュニティーズ」は、癌のリスクが高い地域に重点的に資源と支援をつぎ込み、住民の健康向上を推進している。

テキサス州ベイタウンもこの取り組みの対象エリアだ。ここには、全米で3番目に大きい製油所であるエクソンモービルのベイタウン製油所がある。

ピスターズによると、製油所近辺の住民はある種の癌のリスクが高い可能性があり、エクソンモービルはMDアンダーソンの協力を得て、新鮮な農産物を住民に配ったり、ウオーキングクラブを設立するなどの取り組みを進めている。

MSKも地元ニューヨークで同様の活動を行っている。「移民の健康と癌格差」プログラムでは、巡回型の保健チームが市内各地に赴き、医療保険制度について説明し、健康面の不安などの相談に乗っている。

このプログラムでは、例えばニューヨークのタクシー運転手向けに保健サービスと健康診断や癌検診を無料で提供している。タクシー運転手はずっと座って仕事をし、しばしば食生活も健康的とはいえず、大気汚染が深刻な場所で長時間過ごす。これらの要素は、癌と循環器疾患のリスクを高めることが分かっている。

MSKの乳腺腫瘍科医ニール・アイエンガーは「生活習慣の最適化」の重要性を説く。具体的には、好ましい食生活と運動により、肥満度の判定基準であるBMI(体格指数)を27未満に抑え、体内時計に合った良質な睡眠を取り、過度の日焼けを防ぎ、喫煙とアルコールの摂取を避けよ、というのだ。

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