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「臓器を摘出」する予防法も...がんは「治す」から「防ぐ」時代に、新たな医療アプローチ「VBC」とは?

ニューズウィーク日本版 / 2025年1月23日 17時44分

癌検診の普及を阻むもの

では、早期発見のための癌検診をめぐる状況はどうなっているのか。検診にお金を出しても個人レベルでの効果が見えにくいこともあり、人々が積極的に検診を受けたがらないのが現実だ。

BMCヘルスサービシズ・リサーチ誌に最近発表された研究によると、アメリカで癌検診により延びた寿命は過去25年間で総計1200万年に達するが、前述のようにアメリカ人の7割近くは定期の癌検診を期限までに受けていない。

「私たちの社会では、雇用と医療保険が結び付いている。そのような状況では、保険に加入しない人がどうしても出てきてしまう」と、ピスターズは警鐘を鳴らす。「保険に加入していないと、ある種の検診は受けないままになる場合がある」

ただし見落としてはならないのは、癌による死亡例の70%は、検診の方法が確立されていない癌によるものだという点だ。それに多くの癌検診には、不安、出血、痛みなど、ある程度のリスクが伴う。

しかもほとんどの場合、このような弊害は検診の恩恵を上回るとは限らない(アメリカ癌協会が癌検診を広く勧めていない理由はこの点にある)。

過剰な検診は、ただでさえ過剰な負担にあえいでいる医療システムに一層の負荷をかけかねない。

いま多くの医療機関が採算を取ることに苦労しているなかで、採算が取れている医療機関はたいてい、主として既に病気になっている患者を対象とする医療を行っていると、冒頭で紹介したラトナーは言う。

一方、プライマリーケアはほかの医療分野ほど多くの収益を期待しにくく、膨大な量の患者を抱える医師たちは1人の患者に15分ほどしか時間を割けない。

これでは、患者の医療上の問題をじっくり話し合うことは難しい。まして患者の食生活について詳しく話したり、受けるべき数々の検診について一とおり説明したりする時間などない。

検診が最新の治療薬に比べると地味であることも、癌検診の普及を妨げる要因になっている。子宮頸癌の細胞診や大腸癌の大腸内視鏡検査は最良の癌対策かもしれないが、画期的な新発明とは言い難い。

それでもラトナーは、明るい兆しが見え始めていると感じている。

ビジエント社とアメリカ病院協会の最新の報告書によると、乳癌と大腸癌の検診件数は、19年第4四半期から24年第1四半期の間に80%以上増加した。これは、医療機関と医療従事者の「目を見張る努力」のたまものだと、報告書は指摘している。

「私は朝起きるとまず、自分が生きていることを確認して感謝する」と、ラトナーは言う。「それくらい、私の家系には大勢の癌患者がいる。というより、私たちは誰もが癌で死んだ祖父母や親戚や親しい友人を持っている。その点では、私が特別なわけではない。全ての人がそのような経験をしている」

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