高野菜々 ミュージカル「SUNDAY」3度目上演「真っすぐ生きることの大切さ感じて…」
日刊スポーツ / 2024年4月18日 7時59分
<情報最前線:エンタメ 舞台>
高野菜々(34)が音楽座ミュージカル「SUNDAY(サンデイ)」(6月13~17日、東京・赤坂の草月ホール)に主演する。18年に初演され、20年の再演では高野は文化庁芸術祭新人賞(演劇部門)を受賞し、22年には文化庁新進芸術家海外研修で1年間ニューヨークに留学した。3度目の上演に挑む思いと、ミュージカルを志した経緯などを聞いた。【林尚之】
◇ ◇ ◇
★やせるために…
高野は小学5年の時に広島の市民ミュージカル劇団に参加した。「その時はちょっと太っていたので、やせようと思ったんです」。14歳の時に劇団四季のミュージカル「キャッツ」を見て衝撃を受けた。ダイナミックなダンスや美しい歌声に魅せられて「毎日、『キャッツ』の曲を歌っていました」。
「くるみ割り人形」を上演した時、同学年の女の子が男役をやることになり、参考に宝塚歌劇のDVDを一緒に見て、その華やかさに圧倒された。広島音楽高校に進み、高校2年で宝塚を受験したが、不合格。高校を中退して通信制高校に編入し、バイトしながらレッスンに明け暮れる日々を送った。2度目の挑戦は最終試験まで残ったものの、合格できなかった。
「人生最初の挫折。もう何もやる気力がなくなりました」。そんな時に高校時代の恩師から「新妻聖子さんの広島でのコンサートで、バックコーラスとして出演しないか」との誘いがあった。そのリハーサルで、高野の歌声を聞いた新妻は「あなた、輝いていた」と声をかけた。その一言が運命を変えた。新妻が音楽座ミュージカル「21C:マドモアゼル・モーツァルト」に主演したことを知り、音楽座のオーディションを受けて入団。新妻との出会いから7カ月後には同じ「マドモアゼル・モーツァルト」に主演していた。19歳の時だった。
その後、「シャボン玉とんだ宇宙(ソラ)までとんだ」「リトルプリンス」など音楽座の数多くの作品に主演した。「1つ1つの舞台が私の財産になっています」。22年には文化庁の新進芸術家海外研修で1年間ニューヨークに留学。研修制度は往復の飛行機代、滞在費などが支給されるもので、過去に野田秀樹や野村萬斎らが留学している。
「ニューヨークに行くまでは、舞台で良く見せないといけないとか、他人からの評価を気にするところがありました。でも、米国特有の盛り上がったパフォーマンスを体験して、責任感を持って見る方に舞台を届けるのも大切だけど、自分も楽しまないといけないことに気が付きました。余白の中で生きて、瞬間を楽しむことをニューヨークの1年間で学んだ気がします」
帰国後の23年には初めて音楽座以外の舞台に出演した。ホリプロのミュージカル「生きる」で、主人公・渡辺勘治に寄り添う元部下の小田切とよ役で出演した。
「音楽座では『ここはこうしなさい』というような演出は受けたことがなかったんです。演出の宮本亞門さんから愛の1000本ノックを受け、演出を体現することに必死だった私に『自分を信じて』と言ってくださった。体現するよりも、その時に生まれた感情にうそをつかないことが大事だと気づいたら、吹っ切れました。そんな時、亞門さんに『何かあったの。良かったよ』と言われて、新しいステージに立てた思いがしました」
英国の世界的な作家アガサ・クリスティの小説が原作の「SUNDAY(サンデイ)」は3度目の挑戦となる。
「音楽座は1度上演した作品でも作ったものを恐れず壊して、作り直していきます。初演はオリジナルキャストとして立ち上げ、再演はコロナ禍の中で祈るような気持ちで演じていました。3度目ですが、今が一番もがいています」
★一番必要なもの
理想的な家庭を築いたと自負するジョーンが、自らの人生に向き合い、その真実に目覚める姿を、確かな演技と圧倒的な歌唱力で演じ、芸術祭新人賞を受賞した。
「ジョーンは自分の中の嫌な部分を直視して自らの痛みに飛び込んでいる。ジョーンを通して、生きるという痛みの中に勇気を持って踏み出す姿をお見せして、真っすぐ生きることの大切さを感じてもらえたらと思います。舞台は不要不急のものと言われることもありますが、この時代に一番必要だと思います」
ニューヨークでは英語で歌うライブも行い、外部の舞台を経験した。一回り成長した姿を「SUNDAY(サンデイ)」で見せる。
◆高野菜々(こうの・なな)1989年、広島市生まれ。2008年に音楽座のオーディションを受けて入団。音楽座ミュージカルの代表作「シャボン玉とんだ宇宙(ソラ)までとんだ」「泣かないで」「リトルプリンス」「マドモアゼル・モーツァルト」などに主演している。声優としてもアニメや映画の吹き替えなどで活躍している。
◆SUNDAY(サンデイ) 英国の作家アガサ・クリスティの小説「春にして君を離れ」をもとに、18年に初演された。弁護士の妻として子供たちを立派に育て上げたジョーンは、バグダッドに次女を見舞った帰りに、大雨のため砂漠で足止めをくう。時間を持て余したジョーンは自らの「素晴らしい人生」を振り返る。夫や子供を正しく導いたという、美しく塗り込まれた思い出は、時間とともに少しずつ真実の姿をさらけ出していく。東京公演後、7月10日に名古屋・日本特殊陶業市民会館、7月28日には広島・JMSアステールプラザでも上演。
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