東京五輪に間に合うかがワクチン開発の大きなポイント~WHOは新型肺炎対応に主体的介入すべき
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年1月31日 17時40分
ニッポン放送「ザ・フォーカス」(1月30日放送)に元外務省主任分析官・作家の佐藤優が出演。新型コロナウイルスによる肺炎の拡大について解説した。
中国、武漢市から第2便が到着~13人が発熱やせきの症状
中国湖北省武漢市を中心に、新型コロナウイルスによる肺炎が拡大していることを受け、武漢に住む日本人210人が30日、政府によるチャーター機の第2便で羽田空港に到着した。厚生労働省によると、帰国した210人のうち13人に発熱やせきの症状が出ている。(※編集部注:チャーター機第3便が31日午前、在留邦人149人を乗せ、東京・羽田空港に到着)
森田耕次解説委員)厚生労働省によりますと、湖北省武漢市から日本政府の全日空の第1便で帰国した日本人のうち3人が検査で新型肺炎の陽性となりました。3人のうち2人は症状が出ていないということです。これで国内の新型肺炎の患者は9人。感染が確認されたのは11人ということになりました。症状のない人がウイルスの感染源になるのかどうかはよくわかっていないところがありますが、厚生労働省は「否定できない」としています。
一方、30日は現地在住の日本人210人を乗せた第2便が到着しました。210人のうち合わせて13人が東京都内の病院に搬送されています。せきなどの症状があったということで、東京都内の駒込病院、墨東病院、豊島病院、荏原病院に搬送されました。一方、検査した後に症状のない人は東京府中市の警察大学校や、北区の西ヶ原研修合同庁舎に滞在するということです。第2便の帰国者では検査を拒否した人はいなかったということです。29日の第1便では2人が検査を拒否しました(※編集部注:その後検査を受けたいと申し出たことが明らかになった)。武漢からの客を乗せたバスツアーに同乗した運転手らが感染したケースについて、厚生労働省は「国内で人から人への感染が認められた」と発表しております。
30日は政府が安倍総理大臣を本部長とする対策本部を設置し、初会合を国会内で開きました。
安倍総理大臣)これまで実施してきた水際対策などのフェーズをもう一段引き上げていく必要があります。あらゆる措置を講じてまいります。残りの希望者全員の確実な帰国に向けて引き続き取り組むと共に、帰国者の皆さんの健康管理に万全を期してまいります。
森田)安倍総理はフェーズをもう一段引き上げるということで、水際対策の強化を指示しました。それから、DMAT(災害派遣医療チーム)も活用する方針を示しているということです。
佐藤)危険ということをちゃんと認識すると共に、怖がり過ぎないことの両方が重要になります。同時に、いまのところ法整備の不備がありますよね。基本的な人権はあるのですが、この場合において検査拒否ができてしまい、それによって広がる不安は大きいものです。
緊急の政治判断が求められている
森田)チャーター機で帰って来た方は、エコノミークラスの片道正規料金のおよそ8万円を徴収するということですが、これについて公明党の山口代表は「緊急事態でやむを得ず帰国を余儀なくされたのだから、政府が負担すべきではないか」と話しているようです。
佐藤)その辺のラインを決めておいた方がいいと思います。政府がお金を負担するということならば、きちんとした検査を受けてもらうことも合理的になるのですよ。
森田)帰国直後の検査で陰性だった人も、2週間くらいは外へ出ないように要請していますが、政府は2週間後に改めて検査をする方向で検討を始めたということです。検査漏れを防ぐために二重にチェックする体制をこれからつくっていくということです。
佐藤)重要だと思います。しかし、新種の感染症の場合には一定の期間法的措置によって隔離する方が本人のためにもなるし、社会全体の不安を解消することにもなるので、緊急事態に対する対応が必要です。この機会に全体を整備しなければいけません。
急速な拡大で追いつかない対応~WHOが介入すべき
森田)武漢市で日本人の60代男性が重い肺炎にかかっている件については、入院先の病院が「再検査をして判定を確定させることが難しい」という見解を示していたということで詳細がわかっていないのですが、どうも人手不足、機材不足ということで現場が混乱している可能性があるようです。中国政府は29日までに武漢市へ6,000人規模の医療団を派遣していて、専門の病院を新しくつくるために工事もしているのですが、感染者の急増に対応できていないようです。
佐藤)早くWHOが介入した方がいいと思います。
森田)中国本土の死者はチベット自治区でも確認され、これで31の省、自治区、直轄地すべてで感染者が出て、死者が170人、感染者が7,700人を超えているという状況になっています。WHOは日本時間の30日21時半に専門家による3回目の緊急委員会を開くということで、公衆衛生上の緊急事態を宣言するかどうか判断するようです(※WHOは緊急事態を宣言)。
佐藤)恐らく、専門家たちが最初に予測したよりも感染力が強いということなのですね。ただし、いわゆるパンデミックというほどの感染力でもない。ここのところで専門家たちの見解が割れているのでしょう。
森田)致死率も2%から3%くらいということで、中国の死者ははっきりとした数字が出にくいのですが、平均年齢は70歳くらい、そのうちの6割が高血圧や糖尿病の持病があった人のようだということです。
佐藤)いままでになかった感染症で、世界的に急速な広がりを見せているわけですから、WHOが主体的に取り組まなければいけないことだと思うのです。
森田)ワクチンの開発にも時間がかかりそうですものね。
佐藤)見切りでワクチンを開発して、とりあえずやってみようとなった場合、今度は薬害の心配が出てきます。ところが、この種の場合は完全なワクチンが完成してから打っていくということにはなりにくいと思います。具体的には、東京オリンピック・パラリンピックまでに間に合うのかどうかは1つの大きなポイントになると思います。
日経平均株価が3ヵ月ぶり安値
森田)SARSのときは、2002年の11月ごろから終息宣言までに半年以上かかっていましたからね。経済的には、30日の東京株式市場の日経平均株価の終値は、29日に比べて400円以上安くなって、3ヵ月ぶりの安値。終値は2020年の最安値を更新しました。
佐藤)それから、アベノミクスの大きいところはインバウンドです。これは主に中国ですから、直撃するわけです。
森田)経済的な影響も出てくるということになりますね。
佐藤)感染症も含めて法整備が不十分であり、これは国家の緊急事態ですから、政治がもっと緊張感を持って欲しいです。
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