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関係改善に動きながら、尖閣領海侵入を繰り返す中国の意図

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年10月12日 11時35分

写真

尖閣諸島の魚釣島(沖縄県・尖閣諸島魚釣島)

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月12日放送)に慶應義塾大学教授・国際政治学者の細谷雄一が出演。尖閣諸島沖合で、中国海警局の船2隻が日本の領海に侵入したニュースについて解説した。

尖閣諸島の魚釣島(沖縄県・尖閣諸島魚釣島)=2005年4月27日 写真提供:時事通信

尖閣沖で中国海警局の船2隻領海侵入~今年21日目

10月11日午前、沖縄県の尖閣諸島沖合で、中国海警局の船2隻が日本の領海に侵入し、日本の漁船に接近する動きを繰り返しみせ、海上保安本部は周囲に巡視船を配置して、警戒を強めている。尖閣で海警局の船が領海に侵入したのは、8月28日以来、2020年に入って21日目だ。

中国、尖閣周辺の休漁終了 祥芝中心漁港を出港する中国漁船=2020年8月16日、中国福建省石獅市(共同) 写真提供:共同通信社

政治的には関係改善に動きながら、領土問題、軍事問題は攻勢に出る中国~それぞれの部署が連携なくそれぞれが受けた指令を進めている

飯田)尖閣周辺の接続水域までというのは、35日連続だそうで、官邸の危機管理センターのなかに情報連絡室がありますが、これを官邸対策室に切り替えて、情報の収集、警戒、監視にあたっているということです。常態化して来てしまっているということで、本当に由々しきことですよね。

細谷)この問題を考えるときに、いくつかのことを同時に考えなければいけません。今年(2020年)4月に習近平首席が訪日する予定でした。基本的に中国は、米中関係が悪いですから、対日関係をよくしたい。ですから、日本としても日中関係をよくしたいという意向があった。ところが、そういうときに限って、中国はむしろ領土問題などに関して、積極的な攻勢に出て来る。これに気をつけなければいけない。日中関係がよくなるだろうという期待感があって、このような問題を看過すると、東南アジアの南シナ海も同様でしたが、領土問題で我々が不利な方向に立たされてしまいます。「政治的には関係改善に動きながら、領土問題、軍事問題は攻勢に出る」ということが同時に進んでいるということを、我々は理解しなければいけません。

飯田)普通に日本人のメンタリティで考えると、「仲よくしようとしているときにわざわざこんなことはしないだろう」と思うのですが、これをして来るというのはどのような意図があるのですか?

細谷)いくつか理由があるのですが、1つはそれぞれの部署がまったく連携が取れていないということです。

飯田)ああ。

細谷)海警局ですけれども、少なくとも外交部は日中関係をよくしたいわけです。ところが、指導部からは「領土問題を譲歩するな」ということと、「対日関係を改善せよ」という指令を同時に出しています。だから、それぞれの部署は横の連携なく、指令を進めなくてはいけません。

習主席、国連総会の一般討論演説=2020年9月11日 写真提供:時事通信

中国の防衛費は日本の4倍~油断しているときに攻勢に出る

細谷)もう1つは、バランスから考えると、中国はどんどん軍事的に強くなっています。30年前には中国の軍事力は日本の1/10しかなく、20年前は半分だった。ところが、いまは日本の軍事費の4倍です。どんどん軍事費が開いて行きますから、有利になっているのであれば、それに合わせて攻勢に出て来るということです。最後にもう1つ、これは中国のなかで相手が油断しているとき。つまり、「日中関係をよくしたい」という気持ちが日本のなかにあれば、むしろ、それとは逆に攻勢に出やすいということになります。ですから、増やし方が非常に微妙で、劇的に増えているわけではないけれど、少しずつ増えている。「日中関係をよくしたい」というメッセージを送りながら、同時に領土問題でも優勢に出るということが見て取れることだと思います。

2020年10月6日、表敬を受ける菅総理~出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/actions/202010/06hyokei01.html)

厳しい態度を取りながら、政治的に日中関係を良好にする

飯田)自民党のなかの議論などでは、「尖閣周辺の海域などで、アメリカ軍も含めて合同演習をやったらどうか」とか、あるいは前から言われている公務員の常駐だとか、いろいろ言われていますが、どう守って行けばいいと思いますか?

細谷)これは、ハンドリングが非常に難しくて、決して油断してはいけない。日中関係がよくなっても、中国は領土問題で譲歩したり、抑制して来ないということで、これはきちんと対応しなければいけない。しかし、日本側からエスカレーションしてはいけません。あくまでも、日本も抑制的に、ハンドルを握って蛇口を抑えてきちんと厳しい態度を取りながら、可能な場合には、日中関係を政治的によくするという両方を常に同時に見ることが重要だと思います。

飯田)そうすると、「一足飛びに」というよりは、海保に頑張ってもらいながら、他方、外交ルートで圧力をかけるということをやらざるを得ない。

「中国式法治」香港に拡大 中国の習近平国家主席を映す北京市内の大型ビジョン=2020年5月(共同) 写真提供:共同通信社

防衛費を増やし、日米関係の強さを見せつける

細谷)さらには、防衛費を十分に増やして行くということも重要です。

飯田)そういうのも数字で見せるのはメッセージになるということですね。

細谷)日本の防衛費と、日米関係の強さを見ながら、中国は対応して来ます。日米関係が弱くなれば、向こうは攻勢に出るということです。

飯田)むしろそこにヒビを入れようとしているわけですか。

細谷)おっしゃる通りです。

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