日米首脳会談~米が日本にサイバーセキュリティ分野での協力を求める理由
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年4月12日 17時45分
4日、米大統領選で優勢となり、デラウェア州で演説する民主党のバイデン前副大統領(ロイター=共同)
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月12日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。4月16日から行われる日米首脳会談について解説した。
日米首脳会談~サキ報道官が「日米関係の重要性を示すものになる」と意義を強調
4月16日、米ワシントンで開催される日米首脳会談。ホワイトハウスのサキ報道官は9日、今回の会談について「アメリカと日本の関係の重要性を表すものになる」と会談の意義を強調した。また、会談の成果を声明などの形で発表し、記者会見を行う見通しも示している。
飯田)バイデンさんが初めて、対面で会う外国の首脳が日本の菅総理大臣ということになります。その重要性をサキさんも強調しました。かなり具体的にいろいろな話が出ています。
サイバーセキュリティ分野での日米の連携協力の確認
須田)サキ報道官は5日の会見で、会談のポイントについて、具体的に踏み込んでいます。半導体のサプライチェーンの強化などで協力を組みたいという考えを示しています。首脳会談では、最大の競争相手と位置付ける中国を念頭に、日本との連携、協力を確認することになると見られているわけなのですけれども、ここは非常に重要です。ただ単純に半導体のサプライチェーンではなく、サイバーセキュリティの分野なのです。
飯田)サイバーセキュリティの分野。
須田)これから5Gが普及されるなかで、いよいよIoT(Internet of Things)の世界に入ります。車の自動運転が最たるところになるのだろうと思いますが、そのなかでの半導体などの部品も含めて、サイバーセキュリティ対応を取らないと、ハッキングなどのリスクが高まって来ます。この辺りについても、名指しで中国排除というところを打ち出してはいませんが、中国の排除を進めて行くという流れになっています。ただ中国は国家安全法があります。
製品のなかに入っている半導体を含めた部品もホワイトな製品を使いリスクを弱める
須田)メーカーサイドが中国政府、共産党に求められると、情報提供をしなければならない。これに対してアメリカは、日本もそうですけれど、非常に強い懸念を持っている。国家安全法に対して従わない、そういう求めがあっても情報提供を拒否するという中国メーカーが仮にあるとすれば、それはウェルカムで迎えようと。でもそんな企業は出て来ませんから、結果的に中国企業の排除ということにつながります。そうすると最終製品だけで、そのサイバーセキュリティが守れるかというとそうではなく、製品のなかに入っている半導体を含めた部品も、ブラックではなくてホワイトな製品を使わないとリスクが高まります。そういうところを含めて、日米連携を進めるということです。
西側陣営の形成するネットワークのなかで日本の役割をどう位置付けるか~サイバーセキュリティの強化
須田)アメリカとしては今後、アメリカ・ヨーロッパ、そして日本を含めた民主主義の西側陣営が形成するネットワークと、中国の形成するローカルなネットワークが二極化して、相互のやり取りは出て来ないだろうという見方をしています。そのなかで日本の役割をどう位置付けて行くか。それはアメリカだけでできる話ではないので、日本にも全面的に協力して欲しいということです。だから、半導体のサプライチェーンの強化というニッチな経済分野のようにも思えるのだけれど、そうではなく、サイバーセキュリティ全体をフォーカスするということなのです。
自動運転の車などが進むとセキュリティが重要になる
飯田)半導体ができないということで、車がつくれなくなったりするということだけではなく、情報通信のインフラの心臓部分を担うということになるわけですね。
須田)単純に携帯電話の端末やiPadなどということではなく、今後、自動運転の車が出て来れば、自動車ではなくて、「走るスマートフォンです」と言われるような存在になるわけでしょう。
飯田)そうですよね。
須田)IoTの世界に入ると、ありとあらゆる工業製品が、言ってみればスマートフォン化します。そういう機器に組み込まれる部品についても、安全性が求められるのです。そこに中国の影響力がある、中国が関与していると思しきメーカーの部品を使えますかと。
飯田)デジタル分野が進んで、設計するのはアメリカではあるけれども、実際につくるのはいままでは中国だった。そこを日本が担うということに、これからなって行くということですか?
信頼のおける日本のメーカーに付加価値が出て来る
須田)大量のチップが必要になりますから、TSMCなどの台湾メーカーなどもやりますけれど、それだけでは足りない。そこで中核になって来るのがNTTであり、それと連携している日本電気(NEC)、富士通というところが注目されているのです。そういう企業はいままでのベースがありますから。
飯田)そうすると、いままでのやり方は、垂直統合という感じで、自分たちが仕様をつくって、製品化するところまで一気通貫でやるということがありましたけれど、今後はどうなるのですか?
須田)認証が重要になります。企業に対する信頼性・信用性に加えて、つくり出す最終製品、そしてチップなどの半製品、部品に関して、認証をどう書き加えて行くかというところが必要になって来ます。信頼のおけないメーカーのものは使えないということになります。
飯田)誰の手が加わったか、トレースできるようになって行くということですか?
須田)信頼のおけるメーカーは自社のつくっている部品に対して認証を与えて、「これは安全ですよ」という形を取って行くと。
飯田)そこに付加価値が出て来るわけですか?
須田)そうなのです。
米中の冷戦へ
飯田)そう考えると、企業活動というものが、完全に安全保障と合致する方向に行くのですね。
須田)完全にリンクしますね。普通の家電製品からハッキングされる可能性もありますから、それをどうするのか。
飯田)そこへ来て、アメリカと中国の権威主義的な体制なのか民主主義的な体制なのかという、二項対立になって行く。そこに企業活動も組み込まれるし、経済全体もそうなって行くと、これは完全に冷戦になって行く。
須田)そうですね、分断の構図がそこには出て来るのではないでしょうか。注目されていたのは、バイデン政権になって、中国と宥和的な方向に向かうのかということです。しかし、アメリカ議会の上下院ともに中国に対しては対決姿勢を強めているなかで、大統領がそれをやるとは考えられません。まさにバイデン政権はそういう方向に進みつつあるのではないでしょうか。
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