「安倍晋三という強力なライバルがいなくなった喪失感は大きい」立憲民主党・辻元清美議員が語る
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2022年7月14日 20時55分
衆院予算委員会で、平成29年度予算案の集中審議について、民進党の辻元清美氏(左)の質問に答弁する安倍晋三首相。右奥は稲田朋美防衛相=14日午前、国会・衆院第1委員室
立憲民主党の辻元清美議員が7月14日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。7月8日、街頭演説中に狙撃され、亡くなった安倍晋三元総理について語った。
一度は選挙運動を中断 ~「このままでは言論の自由が奪われてしまう」と思い直し最後まで戦った
飯田)まず一報を聞いたときに、どういった思いを抱かれたでしょうか?
辻元)信じられなくて呆然としました。
飯田)日本でこのような事件が起き、しかも選挙中でした。ご自身もマイクを持って全国を回っていらっしゃいます。その辺りはいかがでしたか?
辻元)私も今年(2022年)に入ってから、事務所に不法侵入者が窓ガラスや壁を破って入ってくるということがありました。また以前には、ネットのデマを信じた男性だと思うのですが、街頭で襲い掛かられそうになったこともありました。先日もベランダに生卵を投げられ、言論に対して、暴力で封じ込めようとする動きへの危機感はありました。
飯田)言論に対して。
辻元)安倍元総理の事件の場合は、動機がまだよくわからないのですが、命を落とされたわけです。あってはならないことなのですが、呆然としてしまって、選挙運動をする気がなくなってしまったのです。「どうすればいいのだろう」と。それで一旦引き揚げました。
飯田)選挙活動を。
辻元)ただ、よく考えてみると、暴力があったからと言って民主主義のいちばんの源である選挙活動を萎縮させたり、発言を控えるということをしてしまうと、さらに言論の自由が奪われていくのではないかという危機感の方が強くなったのです。それでもう一度気を取り直し、「やはり街頭に立とう」と。また夕方、街頭に立って、翌日は徹底的に怖がらずに街頭に立ち、最後まで選挙を戦いました。
民主主義を守ることを街頭でも訴えた
飯田)国会議員、そして我々市民もそうですが、いまこそ矜持を見せなければいけないと思った方は多いと思います。だからこそ投票率も上がったのだと思いますが、そういう部分の共有はまだまだ日本人にもありましたか?
辻元)私ははっきりとそういうことを申し上げたのです。「皆さん、民主主義を守りましょう」と。「ですから投票に行ってください。皆さんの1票をいただくために、私たち政治家は命懸けで街頭で訴えているのです。その1票を疎かにしないで欲しい」ということを訴えました。
安倍元総理への質問回数が多かった辻元議員
飯田)安倍さんは辻元さんと政策の部分で、あるいは政治手法の部分でぶつかるところがありました。安倍さんと対峙してきて、どういう人だとお感じになっていましたか?
辻元)たぶん、私がいちばん安倍さんへの質問回数が多かったのではないでしょうか。安倍さんが3年生で、私が2年生のころから、「国家観の違う2人」ということでよく取り上げられていたので、お互い強く意識していました。自民党の議員よりも私の方が、ある意味では縁が深かったと思います。対極の考え方なのです。
飯田)そうですね。
辻元)対極の考え方だから、議論していて「こんちくしょう」と思ったこともたくさんあるのですが、立法府は対極の考えの人間がいて、議論を戦わせる。これが民主主義だと思うのです。安倍さんを失って、そう感じるようになりました。
飯田)「こんちくしょう」と思うけれど、それを言葉で戦わせていくのが民主主義なのですよね。
辻元)そうです。
強力なライバルがいなくなったという喪失感
飯田)「これは痛いことを言われたな」とか、「これは1つ得点を取ったぞ」など、覚えていらっしゃることはありますか?
辻元)ありますよ。安保法制のときも、パネルを使って「朝鮮半島などで有事があれば邦人保護ができない」と。しかし、アメリカが明確に「やらない」と言っていた答弁を私が見つけてねばったり。
飯田)ありました。
辻元)また「桜を見る会」の問題では、ANAインターコンチネンタルホテルの回答文書を突きつけて、安倍さんの言っていることの根拠が崩壊してしまったこともありました。でも(その後も)彼は言い繕ってきましたから。憲法についても相当、議論しました。例えは悪いのですが、スポーツ選手でもライバルでお互いに意識している方がいなくなると、喪失感があると言うではないですか。そういう感じなのです。
見応えのある、本気の議論だった「安倍VS辻元」
ジャーナリスト・鈴木哲夫)安倍さん側の人に聞くと、辻元さんが質問に立つときには苦手意識ではないけれど、「ええ~」という感じを安倍さんが持っていたと聞いています。でも、逆に言うと「辻元VS安倍」というところで、委員会などでは安倍さんの本音や感情も強く出てきましたよね。
辻元)出てきました。
鈴木)本音の議論という意味では、見応えがありました。いま、そういう議論が国会からなくなっているでしょう。紙やパネルを見て、役所が発表した数字を見て議論するというようなものが多い。そういうなかで見応えのある本気の議論が、私は「安倍VS辻元」だったと思うのです。そういう意味では手応えもあったと思いますが、先ほどおっしゃったように喪失感も大きいのかなと想像できます。政治全体のためにも、ああいった議論が見られないのはマイナスのような気もするのです。
辻元)お互いに存在をかけて議論していた気がします。
飯田)最後に、もし安倍さんに一言かけられるとしたら、どんな言葉をかけますか?
辻元)「ゆっくりおやすみください」と言いたい。いかばかり無念だっただろうと思うのです。それを思うと、痛いですね。
飯田)残された者としては、この議論をずっと続けていかなければならないでしょうね。民主主義というものを。
辻元)そうですね。
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