SVBなど米2行の破綻は金利リスクを見逃していた「規制当局にも責任」
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年3月22日 17時40分
米連邦準備制度理事会(FRB)本部(アメリカ・ワシントン)
数量政策学者の高橋洋一が3月22日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。シリコンバレー銀行など、経営破綻した2行の預金を全額保護するとした米政府の特別措置について解説した。
預金全額保護
アメリカのイエレン財務長官は3月21日、アメリカ銀行協会のイベントで講演し、シリコンバレー銀行(SVB)など2行の経営破綻で実施した預金を全額保護する異例の対応について、他行でも預金流出が起きれば同様の措置を取る可能性に言及した。金融不安の広がりに歯止めをかける狙いがあるとみられる。
飯田)当初は特例だと言っていましたが、他の銀行でも預金が流出しかかっているような状況があるようですね。
長期債に回し、金利リスクに対応していなかったSVB ~規制当局が金利リスクを見逃していた
高橋)預金が流出すると、特例でなくなる可能性があるのです。SVBがなぜ破綻したかと言うと、普通の銀行なら、受け入れた預金を貸し出しに回すのが普通ですよね。
飯田)通常は。
高橋)それを全部貸し出しに回さず、一部は有価証券にするのですよ。でも有価証券にするということは、金融リスク対応のためなので、あまり長期運用してはいけない。これが原則なのですよ。
飯田)なるほど。
高橋)しかし、シリコンバレー銀行は貸し出しが伸びなかったから、長期債、特に環境関連などの長期債にかなり回していました。環境関連でなくても長期債に回すと、金利上昇したときに含み損が出ます。だから金利リスクの対応にはなっていません。
飯田)金利リスクの対応にならない。
高橋)金利リスクの対応ができていないことを、規制当局が掴んでいないといけないのです。ストレステストで簡単に掴めるのですが、積極的に行われていなかったようですね。規制当局のミスということも言えるのではないでしょうか。
典型的な金利リスク対応のミス
飯田)もともと預金で集めたお金はいつでも引き出せるものなので、短期の資金である。これを長期に回してしまった。
高橋)ダメですね。おまけに金利リスク対応にもならず、長期に回すと金利が上がったときに価値が下がるのです。流動性を確保するために売却して、含み損が実現損になってしまったという、典型的な金利リスク対応のミスです。
飯田)金利リスク対応のミス。
高橋)それを規制当局はある程度掴まないといけないし、自分でもわかっていないといけません。でも貸し出しが伸びないから、つい長期のもの、特に環境関連などは体裁がいいでしょう? そこに手を出してしまったのですね。
飯田)体裁がいいし、長期だからある程度利率もよく、儲かると。
経営に問題があったクレディ・スイス
飯田)シリコンバレー銀行の話と、そのあとに出てきたヨーロッパのクレディ・スイスの話は、要因が違うということですか?
高橋)全然違います。クレディ・スイスに関しては不祥事が多くてよくわからないですね。
飯田)ここ2年ほどでCEO(最高経営責任者)が次々に交代するなど、経営が不安定だったようです。
高橋)クレディ・スイスの場合は、脆弱なところにインパクトがあったから破綻した可能性もあると思います。経営問題のような気もしますね。
飯田)クレディ・スイスは発行していた「AT1債」が、社債ではあるけれどかなり劣後している。特に国から何か介入が入った場合には無価値になってしまいます。その分、利率が高いという社債だったようですが、これを使って自己資本比率を増やしていたというような話があり、その価値がなくなってしまったようですね。
高橋)これもSVBと好対照なのだけれど、ある意味で預金も銀行の負債なのですよ。AT1債も銀行の負債なのです。これを使って貸し出しに回すのだけれど、片や預金が全額保護で、片や全額棄損というのは変わっていますね。普通、債券は株式より優先されるので、株式を棄損させてゼロにしてから、次に債券となるはずですが、株式の方を守ってしまったのですね。
飯田)株式の方はUBSが買収するため、比率的には22対1や23対1なのですが、一応はUBSの株を交換で貰える。
高橋)守ってしまったのですね。本当はゼロにしてから、残りの損失があればAT1に回すのですが。面白いやり方というか、こうなると「劣後債は株式より酷いのか?」という話になってしまうので、劣後債市場の人は驚きますね。
飯田)例えば今後、社債が起債しづらくなったり、同じ手のものは起債できなくなったりするかも知れない。
高橋)普通は「劣後債、優先株、普通株」の順番でリスクが変わるのですが、ずいぶん変わったやり方だなと思いました。普通の人にはあまり関係ないかも知れませんが、プロは気にすると思います。
金融監督の責務を果たしていないFRB
飯田)この話が出てから、3月16日には欧州中央銀行(ECB)の理事会があって、21日からはアメリカの中央銀行に当たる米連邦準備制度理事会(FRB)のFOMCがある。金利の上げ下げの見通しはどうなりますか?
高橋)筋論から言うと、アメリカでは失業率が低くなっていて、さらにインフレが加速しています。だから利上げなのですが、金融機関を慮ると利上げのペースが弱まるという意見もあります。
飯田)いままでは議会証言でも、「雇用が堅調でインフレ率がまだ高いから利上げするのだ」と言っていましたね。
高橋)筋論です。でもFRBは金融監督としての立場もあるので、自分たちがしっかりしないと「監督していなかったお前のせいだろう?」と言われたら、困ってしまうかも知れません。
飯田)なるほど。SVB以外にも、ファースト・リパブリック・バンクで住宅ローンが焦げ付いているのではないかという話も出ていますね。
高橋)結局、いろいろなストレステストをしておらず、金融監督の責務をきちんと果たしていないのですよ。どうするのでしょうか。
飯田)FRBは自分の腹も痛いところが少しある。
高橋)痛いですね。
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