“品薄”で需要に火を付けた「ニューバランス」&新規層を開拓した「コンバース」のブランド戦略【スニーカー解説】
ORICON NEWS / 2024年4月10日 6時0分
スニーカーをあらゆる側面から解説した『スニーカー学』(KADOKAWA刊)が発売された。著者は、スニーカーショップ「atmos」創設者で、スニーカービジネスの表と裏を知り尽くす業界のキーパーソンとしても知られる本明秀文氏。二次流通、プレ値、SNS消費 インバウンド 投資 NFT 真贋鑑定 コラボ テック系といったキーワードをもとに、スニーカーブームのからくりや、「投資財」としての役割なども解説する。同書から、「ニューバランス」と「コンバース」のブランド戦略について解説した内容を、一部抜粋して紹介する。
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■独自の路線を歩み続けている「ニューバランス」と「コンバース」
「ナイキ」は巧みにトレンドに乗りながらプロモーションをおこなっているのに対し、独自の路線を歩んでいるメーカーが「ニューバランス」です。
もともと「ニューバランス」はスティーブ・ジョブズ(※)が愛用していた991やM1300といったヘリテージを愛する本格志向の層に加えて、アジアメイドのMT580をシュプリームのクルーが愛用したり裏原ブランドの「ヘクティク」がコラボしたりといった経緯からストリート層の支持も集めているという、2面性を備えたブランドでもあります。
またコラボレーションも「コム デ ギャルソン」や「パレス」、「オーラリー」などのブランドとアジアメイドのモデルでおこなったほか、近年ではUSA・UK製の品番でも「ダブルタップス」や「エメレオンドレ」、「キス」といったブランドとコラボをおこなったことで注目を集め、通常モデルも枯渇するほど人気を博しました。
本来、本物志向のヘリテージ層で「ニューバランス」が好きな人は流行りに関係なく履き続ける傾向がありますが、良くも悪くも常に安定した購買行動を取るため、爆発的な人気を集めることは少ない傾向にあります。しかし、彼らの需要を掘り起こすきっかけとなったのが、ML2002Rの復刻と993の日本発売です。低価格帯の2002とハイエンドモデルの993と、ともに異なるレンジで高い人気を誇るモデルでしたが、その人気を煽ったのがコロナ禍における品薄です。
2022年前半までML2002Rは試着もできないほどの品薄でしたし、特にUSA製の993はコロナで生産ラインを縮小した関係もあって品薄状態が続いたことで逆に需要に火を付ける結果になりました。
これらは「ニューバランス」が意図して起こしたハイプではありませんが、スニーカー業界の人たちのなかでも今まで「ナイキ」ひと筋だった人が「ニューバランス」を履きはじめるなど、少しずつ人気が高まりつつありました。
しかし、コロナ禍以後の急速なインフレによって顧客も製品の良さは認めているものの、若者の手に届かないブランドになりつつあるのは否めません。
一方で1908年に創業した歴史あるスポーツシューズのメーカーのひとつである「コンバース」は、さらに独自の道を歩んでいます。その代表作が1917年に誕生したオールスターです。
当時のスタープレイヤーだったチャールズ・H・テイラーの名前をアンクルパッチに冠した世界最初のバスケットボールシューズのシグネチャーモデルにして、ブランドを代表する定番モデルとして親しまれています。
オールスターが100年以上のロングセラーを記録している理由が、キャンバス地のアッパーにローテクのソールを採用したシンプルさのため安価とあって、街履き用として愛されていること。50年代以降にアイビーリーガー(※)たちがキャンパス内や街中でも履くようになったことを皮切りに、70年代以降はパンクをはじめとした音楽シーンでも愛された、いわば街履き用のスポーツシューズの元祖とも言える存在なのです。
また、女性にスニーカーカルチャーを根付かせるのは至難の業ですが、コンバースの価格帯はマス受けする1万円以内のモデルが多いこともあって、女性の愛用者が多いのも特徴です。実際に店舗前を歩く女性のスニーカーを調べた時は、オールスターの比率が目立っていました。ただし、これは逆に言えば今のスニーカーブームとは違う層から親しまれているブランド、とも言えるでしょう。
「コンバース」も新たなブランドバリューを創造するためにUSA生産のモデルを立ち上げたほか、2008年に日本企画のハイエンドラインである「コンバースアディクト」を立ち上げたり、2014年に過去のアーカイブをもとにした「タイムライン」を立ち上げたりと挑戦を続けています。しかしスポット的にリリースされる「コンバースアディクト」のゴアテックス(※)搭載モデルやワンスター Jなどは時折二次流通市場で人気が出るものの、今ひとつハイプできていませんでした。その理由のひとつとしてハイプスニーカーファンの多くはストリート系のスタイリングであるのに対し、オールスターを履く人たちの多くは古着やアメリカンカジュアルを好む点が挙げられます。
こう言うとブームの波に乗り遅れたブランドのように聞こえるかもしれませんが、言い換えるとハイプスニーカーブームが終わっても「コンバース」の業績は変わることなく、堅調を維持し続けています。ちなみに、日本で売られているコンバース製品はアメリカのものとは別物です。現在、アメリカの「コンバース」は「ナイキ」の傘下となっています。
※スティーブ・ジョブズ…アップルの共同創業者として知られるカリスマ経営者。『イッセイミヤケ』のタートルネックセーターと『ニューバランス』の991を常に着用していた。
※アイビーリーガー…アメリカの東部8大学に通う学生のこと。富裕層の子弟が多く、キャンパスライフで培われた服装術はメンズファッションに大きな影響を与えた。
※ゴアテックス…1971年に開発された、透湿防水素材。アウトドア用品やレインウェアを中心に採用さ
れ、1979年に「ダナー」がダナーライトではじめて靴に採用した。
■本明秀文プロフィール
atmos創設者。元Foot Locker atmos Japan最高経営責任者。1968年生まれ。90年代初頭より、米国フィラデルフィアの大学に通いながらスニーカー収集に情熱を注ぐ。商社勤務を経て、1996年に原宿で「CHAPTER」をオープン。2000年に「atmos」を開き、独自のディレクションが国内外で名を轟かせ、ニューヨーク店をはじめ海外13店舗を含む45店舗に拡大。2021年8月、米国の小売大手「Foot Locker」が約400億円で買収を発表。スニーカービジネスの表と裏を知り尽くす業界のキーパーソン。
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