不倫相手はいずれ妻の元へ帰る。そのとき私はどうするの【不倫の精算#40】前編
OTONA SALONE / 2022年2月24日 22時0分
後ろ指をさされる関係とわかっていても、やめられない不毛なつながり。
不倫を選ぶ女性たちの背景には何があるのか、またこれからどうするのか、垣間見えた胸の内をご紹介します。
既婚の彼と「ずっと安定の関係」にいたけれど
Wさんは45歳のバツイチで、10年前に離婚して以降はひとりで息子さんを育ててきたのは知っていた。
最後に話したときは、子どもが来年成人式で、という話題で盛り上がったのを覚えている。
その後もLINEでは「落ち着いたら食事に行こう」と話していたが、改めて「会ってほしい」とお茶のアポイントが送られてきたとき、長らく話に出なかった“既婚の彼”の名前が出て少し驚いた。
まだ続いていたのか。
そう思ったがもちろん口にはせず、平日の午後、人が少ない時間帯に決めた。
待ち合わせたカフェのテラス席で、一年ぶりに顔を合わせるWさんは以前と変わらず血色のいい肌で、目元に笑顔を作って迎えてくれた。
お互いの近況を語り合うひとときは楽しく、お互いに健康であることが第一、と確認が済んだ頃、Wさんが切り出した。
「あの人のことなのだけど」
うん、と姿勢を正して顔を上げると、合った視線をふとそらす彼女に戸惑いが見えた。
「別れようかと思って」
「え……」
それは、はじめてWさんが口にした言葉だった。
今まで、彼女は既婚の彼との“動かない関係”に、「これでいいの」と穏やかな笑顔を作っていたのだ。
私たちは人生の節目を迎えている。そこで考えることは
「何かあったのですか?」
そう尋ねると、Wさんはすぐに首を横に振った。
「ううん、喧嘩したとか、そういうのじゃなくて。
私がね、もうやめたくなったの」
そう言ってため息をつくWさんの表情は、マスク越しで口元が隠れていて伺えない。だが翳りのある瞳からは嘘のなさが伝わってきた。
「……」
どう答えればいいのか考えていると、Wさんが続けた。
「息子がさ、来年成人式だって、前に話したじゃない?」
「はい」
「あのとき思ったのよね、息子は大人になって、私から離れていく。
たとえば就職して家を出たとき、私はひとりになる。
そのとき、あの人は私のそばにはいてくれないの」
「……そうですね」
“既婚の彼”とは、もう5年以上の関係になるはずだった。
Wさんとの不倫を続けながら奥さんとふたりの娘さんとの生活も維持させている男性は、大手の会社で人事部長の肩書きを持っていた。
「このままでいい、と思っていたけど、正直老後がもう遠くないじゃない? 私たちの年になると」
「はい」
「私ね、婚活しようと思って」
婚活、という言葉もWさんから聞くのははじめてで、思わず目を見開いた。
「いいですね」
すぐに返せたのは、自分のものにならない不倫相手に愛想を尽かして別れたいのではない、「次の希望」をちゃんと持っているとわかったからだ。
「別に、今の時代おかしくないよね?
バツイチで10年過ごして、今から婚活しても」
ふふ、と照れくさそうに笑うWさんに、「おかしくなんてないですよ」とこちらもトーンを上げて答えながら、改めて45歳という年齢の重さを感じた。
なぜ不倫を選んだのか。バツイチ女性には「事情」があった…
Wさんは20年以上公務員として働いており、年収は高い。
ひとり息子を抱えて生活していけるだけの収入があったので離婚ができた、と以前よく話していた。
自立できているのなら、その後独身男性と再婚する道もあったはずだが、Wさんはその可能性を捨てていた。
「もうね、懲りたの。
前の夫は年収が私より低いことがコンプレックスで、フルタイムで働く私に家事も育児も全部押し付けて、自分はこっそりギャンブルにお金を使っていたのよね。
それがバレて離婚したいって私が言えば今度は暴力よ、結婚なんて二度と無理」
元夫について話すとき、Wさんはいつも憎々しげな口調になる。
何年経とうと消えない痛みと憎悪は、再婚どころか独身男性との普通の恋愛すら、彼女から遠ざけていた。
そんなWさんが「相手の人生を背負わなくていい関係」として今の男性と不倫関係になったのは、自然だったとは決していえないが、「そのときは受け入れやすかった」のが事実かもしれない。
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