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近いうちに訪れる"世界不況"が株の買い時

プレジデントオンライン / 2018年8月12日 11時15分

日銀 黒田東彦総裁(AFLO=写真)

これから私たちの生活はどう変わるのか。マイナス金利の拡大や消費税の増税、東京五輪後の経済後退にどう備えればいいのか。経済・金融とお金の運用、家計の防衛策に詳しい3人の専門家に話を聞いた。

※本稿は、「プレジデント」(2017年11月13日号)の記事を再編集したものです。

(1)マイナス金利拡大
低金利で資産運用ができない

マイナス金利政策によって、金利の大幅な低下が銀行の収益悪化や不動産価格の高騰、資産運用難などの副作用を生んでいる。だが、日銀はマイナス金利政策のさらなる効果を目指し、金利をより引き下げる可能性がある。

▼大江コメント

日銀がいくらお金を供給しても世の中にそれが十分出回っていないため、経済は活性化しません。併せて大胆な経済政策、成長戦略が必要なのです。黒田東彦総裁の任期は18年4月8日までですが、官邸の信任が厚いため、続投する可能性大。そうなれば、異次元緩和は継続されることになるでしょう。

ではどうするか。私は株式投資をおすすめします。ただし、日本株だけに集中するのはダメ。世界の1割程度のシェアしかありませんから、日経225やTOPIX(東証株価指数)などのインデックス投資でも、実態は日本という1つの市場で運用するアクティブ運用。中長期の資産運用は、世界経済の規模に合わせて日本以外の先進国株8割、新興国株1割、日本株1割といった国際分散投資が基本。毎月の積み立て投資なら平均購入単価を安くできるため、慌てずに継続しましょう。

結論:積み立てによる国際分散投資で、資産を増やせ

▼中原コメント

マイナス金利は、銀行の収益を悪化させて中小企業に対する融資のリスクを取りづらくし、不動産投資への融資が将来の不良債権予備軍に。さらに、マイナス金利によって年金や退職金の企業負担が重くなり、企業収益も圧迫されています。

資産運用はもはや金利で稼ぐのは困難。かといって米国株も日本株もすでに高値圏であまりおすすめできない。ですが、私は早ければ2018~19年にも米中の経済が大減速し、世界同時株安に波及すると読んでいます。08年のリーマン・ショック後、世界的な金融緩和により低金利が続いた中で、新興国も含めた世界中の国々で債務が増えすぎているからです。借金に依存する経済はいずれ行き詰まり、逆回転を始めるのは歴史が証明しています。ですから、株を買うなら景気後退期の最中の安いときが狙い目。18~19年は日経平均で1万6000円割れくらいの下げはあるかもしれません。

結論:近いうちに訪れる不況が、株の買いどき

(2)消費税増税
10%引き上げで家計はさらに厳しく

安倍政権は「2019年10月の消費税率10%への引き上げ」を予定通り実施する考え。14年4月に消費税率が5%から8%に上がったときのように、景気回復に強いブレーキがかかることを覚悟しておいたほうがいい。

▼荻原コメント
AFLO=写真

もし増税したら消費がさらに落ち込み、企業の売り上げが減り、賃金も上がらないという悪循環が続き、急速に深刻なデフレへと逆戻りします。消費税の増税は、よく「子孫にツケを回さないために必要」なんていわれますが、これはウソ。私たちが消費税を払うようになってから、たかだか28年、それも平均で5%程度。でも、これから生まれてくる子は一生涯10%以上の消費税を払う。子孫にツケを残しまくりです。

家計の防衛策としては「お金を使わず、貯める」ことと「収入を増やす」ことしかない。夫は副業を始め、妻はパートではなく正社員になり、子どもはアルバイトをして、と一家総出で稼がないと、この難局は乗り切れないかも。政府は厚生労働省「モデル就業規則」の副業について「原則禁止」から「原則容認」に変更する方針です。自分にどんな副業ができるか、1度じっくり考えてみてはどうでしょうか。

結論:一家総出で稼げ! 副業も要検討

▼大江コメント

今増税しないと、国の財政が危なくなるなんてことはない。日本の借金は確かに約1070兆円ありますが、バランスシートで見ると資産も結構ある。現預金や有価証券、独立行政法人などへの出資金のほか、日本銀行法によって日銀の財産はすべて国のものになるため、日銀が保有する国債も国の資産になります。これらをすべて足すとトータルの赤字は100兆円程度で、GDP(約520兆円)の約2割。特に心配することはありません。

もし増税が実施されたら、やってはいけないのが増税前の「駆け込み消費」。前回8%に上がったときでおわかりのように、増税後のほうが住宅もクルマも家電も安くなります。また、一般に増税後は一時的な景気後退が来ます。アクティブな株式投資をやっているなら、増税前に株を売って現金に換えておき、増税後の株価が下がったときに買い直す戦術を検討してみてもいいでしょう。

結論:増税前の駆け込み消費は、やってはいけない

(3)年金減額
年金はどのくらい減らされるのか

2016年末、年金改革法案(いわゆる年金カット法案)が成立した。たとえ物価が上がっていても、賃金が下がれば、年金支給額はカットされる。適用は2021年4月からだ。老後不安はますます高まりそうだ。

▼中原コメント
時事通信フォト=写真

年金の支給開始年齢は段階的に引き上げられ、最終的には75歳にならないと帳尻が合わない。そのために、政府は75歳まで働ける環境の整備に力を入れ始めるでしょう。ですから、もう覚悟を決めて「年金が減っても自分で稼げばいい。生涯現役のほうが人生を楽しめる」くらいポジティブに考えましょう。労働人口は減っていきますから、75歳まで働ける仕事は結構あると思います。ただし、よりよい条件で働くためには、やはりスキルを磨いておくことが大切です。

では、どんなスキルがいいのか。注意したいのは、AI(人工知能)に奪われないスキルを選ぶこと。税理士や公認会計士、弁護士、弁理士などの士業は半分以上、AIにとって代わるでしょう。狙い目は、経営戦略策定、データ・サイエンティスト、マーケッター、商品企画、M&A支援など。きめ細かな心遣いが求められる接客・介護などの分野も有望です。

結論:AIに奪われない仕事は何かを、見極める

▼大江コメント

公的年金は盤石で、よく言われるように破綻寸前でもない。日本の年金制度は単年度決算で、毎年入ってくる年金保険料で年金を支払う仕組みになっています。たしかに今は少子高齢化で収支は赤字になり、これまでの貯金(約145兆円、2016年度末)から毎年5兆~6兆円程度が補填されています。ですが、一方でこの貯金が減らないように運用して増やしています。16年度の運用状況は約8兆円のプラス。

ただし、公的年金だけではゆとりある生活は難しいですから、自助努力は必要です。定年前後に訪れるのは、健康、お金、生きがい(孤独)という3つの不安。これらをなくす最善の方法は「可能な限り働き続けること」。頭を使って体を動かし、人と関わる機会が増えれば、認知症の予防にもなります。男性も女性も、最後に頼れるのはお金ですから、できる限り働き続けることが大切だと思います。

結論:定年後も働くことで、お金と認知症の予防になり一挙両得

(4)残業代カット
今後、対象者大幅拡大の恐れは?

労働基準法改正案では、残業代ゼロは「年収1075万円以上」「高度専門職」に限定されるが、法案が通れば、省令で簡単に内容は見直せる。経団連は以前から「年収400万円以上に適用せよ」と要求している。

▼荻原コメント
時事通信フォト=写真

残業代カットの対象となる年収や職種は、いずれ必ず広がります。労働者派遣法がそうでした。派遣可能業種が当初の13業務から16業務に、そして26業務に広がり、さらに今では業務の分類さえもなくなっています。経団連の求める年収400万円まで、おそらく同じような道を辿るでしょう。

でも、会社勤めだと自分の好きなことが自由にできるわけではなく、いつまで経っても束縛されます。ならば、いっそのこと60歳の定年を機に、あるいはその前に起業してしまうのも1つの選択肢です。そのためには、50歳以上になったら会社以外の人脈を広げていくことも大切。今は、アイデア次第でインターネットを活用したビジネスがいろいろできます。海外勤務の経験があるなら、「シニア海外ボランティア」はどうでしょう。仕事にもよりますが、2年間の勤務で130万円くらい貯まるそうです。

結論:会社の給料だけに頼らず、副業やプチ起業も視野に

▼中原コメント

安倍政権の「働き方改革」では、残業時間の大幅な削減が義務付けられる見通し。しかし、今の企業の賃金体系は残業代の占める割合が少なくなく、残業が減ればサラリーマンの給料が下がってしまう。時代の趨勢として残業を少なくするのは仕方ないですが、その分、企業は基本給を上げる必要が出てきます。しかし、その実現は極めて不透明な情勢です。

こうした状況下、国民に自助努力で資産運用すべきということ自体が間違っています。投資するなら、一生涯働けるように自己投資にお金を回すといい。例えば、経営やファイナンス、マーケティングなどの知識を身につけられる社会人向けのビジネススクールに通うのはどうでしょうか。学費の捻出が難しい場合は、安上がりなインターネット大学で学んだり、書物で学んだりする方法も。学ぶのに年齢は関係ない。いくつになっても好奇心を失わず、新しいことにチャレンジする気持ちと行動力が大切です。

結論:ビジネススクールや書物などを利用して、自己投資

(5)オリンピック
2020年以降、日本は不況に陥るか

五輪前は国のインフラ投資や五輪需要を見込んだ民間投資が前倒しで行われるが、その反動で開催後に投資が鈍化し、景気が低迷する。実際、都心部の不動産や建材の価格が高騰しているが、バブル崩壊が危惧される。

▼中原コメント
AFLO=写真

18~19年に米中経済が大減速すれば、20年の東京五輪の頃はすでに不況期に入っていて、今高騰している不動産価格も下落しているでしょう。超低金利環境は、相続税対策のアパート経営やサラリーマンの賃貸不動産経営に火をつけましたが、そのブームも間もなく幕を閉じます。問題は、これから本格的な人口減少が始まるのに、供給過多にある貸家の供給がさらに増え続けていること。すでに全国で820万戸の空き家があり、その半数超は貸家。遅くとも10年後には全国的に家賃が大きく値下がりします。

こうした状況を考えると、今後は住宅を買った価格よりも高く売れる可能性は極めて小さい。これからマイホームを持つなら、将来、高く売って利益を出そうなんて考えず、「家族と楽しく暮らす」ことを優先して選んだほうがいい。定年後もずっと幸せに暮らせるのか、などもポイントになるでしょう。

結論:賃貸経営や売却益狙いの不動産投資は、避けるべき

▼荻原コメント

「オリンピックの崖」なんて言われるように、五輪後に前倒し投資のリバウンドが一気に来るでしょう。では、オリンピック後の不況にどう備えればいいのか。その処方箋が企業も行っている「ダウンサイジング」。デフレ不況の中で企業がやってきたことは、内部留保の増加とコスト削減、借り入れ返済です。家計もそれと同じ。貯金と節約、住宅ローンの繰り上げ返済に励むべきです。

デフレの中では無理して投資しなくても、今あるお金を減らさなければいい。日本の金融機関は今、マイナス金利政策によって運用難に陥り、収益の悪化に苦しんでいます。そんな中で狙っているのが個人の資産。こういうと何ですが、まるであの手この手で手数料稼ぎを目論んでいるかのよう。商品の仕組みやリスクをよく理解できていないのに、「すすめられたまま手を出して大損した」なんてことにならないよう、注意してくださいね。

結論:五輪後不況に備え、今から家計をダウンサイジング

(6)教育無償化
政治家の甘言を信用できるのか

自民党は消費増税の増収分の一部を充て、幼稚園・保育園(3~5歳)の費用を無償化する公約を掲げた。一部の高等教育の無償化もある。ただ、財源は明確化されていない。

▼荻原コメント

教育無償化に対して政治家がどこまで本気なのかは怪しいもの。でも国が負担する教育費は、他の先進国に比べて非常に少ないのが現状です。日本では国立大学(自宅生)でさえ授業料のほか、入学金、通学費、図書費などを含めると4年間に500万円以上かかる。だから50%を超える学生が奨学金を利用しています。頭がよくてもお金がなければ大学で学べないわけです。

でも、日本の教育環境もこれからガラリと変わるでしょう。今や授業料がすごく安いインターネット塾も登場しています。まだ知名度は高くありませんが、インターネット大学もあります。

結論:政治に頼らず、授業料の安い塾を効果的に取り入れる


(7)北朝鮮暴発リスク
有事の資産防衛はしておくべきか

安倍政権はトランプ米大統領と共に、北朝鮮の金正恩政権に圧力をかけ続けている。国際社会の包囲網が強まった結果、窮鼠猫を噛むかのごとく、北朝鮮が暴発する日が来るかも。

▼大江コメント
AFLO=写真

これはあくまで私個人の考えですが、日本にミサイルが飛んでくるような戦争は起きないと思います。仮に北朝鮮暴発リスクがあるにしても、「有事の資産防衛」は必要ない。よく金地金やビットコインがいいと言われますが、もし日本がミサイル攻撃されたら金を保管している貸金庫はもちろん、銀行も閉鎖されてしまう事態だって起こりかねません。ビットコインもどんな値動きになるか、まったく想定できません。「有事の金」とよく言いますが、これは昔、欧州で戦争が起きて難民が逃げ惑ったとき、持ち運びできる金が役立ったことに由来した話。島国の日本は、そもそも金を持って逃げるところがありません。

結論:有事に備えて、金やビットコインを買う必要はない

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大江英樹
経済コラムニスト
大手証券会社を定年退職後、オフィス・リベルタス設立。資産運用、企業年金、シニア層向けライフプランなどをテーマに執筆や講演などで活躍中。
 

中原圭介
経営アドバイザー・経済アナリスト
その経済予測の正確さには定評がある。著書多数。2017年11月に『中原さん、未来の日本経済はどうなるんですか?』を上梓予定。
 

荻原博子
経済ジャーナリスト
大学卒業後、経済事務所勤務を経て独立。家計経済のパイオニアとして、経済の仕組みを生活に根ざして平易に解説して活躍中。著書多数。
 

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(経済コラムニスト 大江 英樹、経営アドバイザー・経済アナリスト 中原 圭介、経済ジャーナリスト 荻原 博子 構成=河合起季 撮影=大沢尚芳、加々美義人 写真=AFLO、時事通信フォト、iStock.com)

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