なぜ佐川はヤマトよりずっと高収益なのか

プレジデントオンライン / 2018年10月22日 9時15分

時事通信フォト=写真

経済ニュースの本質を見極めるにはどうすればいいか。役立つのが「会計」だ。会計ではモノの動きと時間の流れを「金額」で整理していく。それが理解できると「ウラの裏」がするすると見えてくる。雑誌「プレジデント」(2018年3月19日号)の特集「会社の数字、お金のカラクリ」から、記事の一部を紹介しよう。今回は「ヤマト運輸vs佐川急便と人件費率」について――。

■佐川のほうがヤマトより収益性の高いビジネスをしている

「物流業は構造的に利益が出づらい業界です」

フロンティア・マネジメント代表取締役の松岡真宏さんは説明する。実態はどうなっているのか。物流業界の2大巨頭、ヤマト運輸と佐川急便の数字から読み解いていきたい。

まずヤマト運輸を含むヤマトHDの2017年3月期の損益計算書(PL)。販売費および一般管理費の項目に人件費245億円とある。この数字を同年の同社従業員数約20万人で割ると1人当たりの年収は12万円程度と少なすぎる。実はこれは本社スタッフの人件費で、ドライバーを含めた人件費はPLの営業原価(売上原価)1兆3854億円に含まれている。

営業原価を営業収益(売上高)1兆4668億円から引いた営業総利益(売上総利益)は813億円。これを営業収益1兆4668億円で割ると5.5%と極めて低い粗利率が出てくる。

一方、ライバルの佐川急便はどうか。親会社のSGホールディングス17年3月期のPLを見ると、ドライバーを含めた人件費はヤマトと同じく営業原価8437億円に含まれる。これを営業収益9303億円から引いた営業総利益の865億円を営業収益で割ると粗利率は9.3%とヤマトより高水準。

「粗利を比較すると佐川のほうがヤマトより収益性の高いビジネスをしていることが見えてくる」(公認会計士の川口宏之さん)

同時に人件費がコストを圧迫していると見て取れる。

ヤマトの詳しい人件費については、「有価証券報告書ではなく決算説明会資料に記載されています」と中京大学経営学部教授の矢部謙介さんは語る。

ヤマトの17年3月期決算説明会資料には「連結営業費用」の項目があり、「人件費」として7692億円を計上。社員だけでは全配送を賄えないため外部委託を利用し、「下払費用」は5883億円に。人件費と外部委託費は計1兆3576億円で営業収益の約92.5%を占める。

■13年4月の「佐川のアマゾン撤退」が明暗を分けた

「13年4月、佐川はアマゾンの配達から撤退し、ヤマトが一手に引き受けた。配達個数が増えて単価が下落するなかで、いかにコストを下げて効率よくするかが課題でした。それがいよいよ立ちゆかず、従業員のサービス残業が増えて未払いの問題が噴出したのでしょう」(岡三証券アナリストの山崎佑介さん)

ヤマトは17年10月には個人向け料金を引き上げ、18年1月からアマゾンも値上げした。人件費率の改善なるか――。

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松岡真宏
フロンティア・マネジメント代表取締役
 

川口宏之(かわぐち・ひろゆき)
公認会計士
会計コンサルティング業務や、会計理論をわかりやすく伝える研究・講演を行う。著書に『決算書を読む技術』など。
 

矢部謙介
中京大学経営学部教授
 

山崎佑介
岡三証券アナリスト
 

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(向山 勇 写真=時事通信フォト)

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