橋下徹「政権奪取のための唯一の方法」
プレジデントオンライン / 2018年10月17日 11時15分
■野党各党が今後1カ月でやらなければならないこと
安倍晋三首相が自民党総裁選を制し、3選を果たした。新しい内閣も組まれ、いよいよ10月下旬には臨時国会も開かれる。
(略)
弱すぎる野党はどのように対応すべきか。
法案審議に力を入れて、法案の問題点を追及するのは、当然のことだろう。また、いわゆる森・加計問題では、政府資料の不備が新たに判明し、その政府対応について問い質す必要があるだろうし、さらに、アメリカとの通商問題やロシアとの北方領土問題、そして北朝鮮問題に関しての政府対応についても問い質すべきところは山ほどある。
(略)
しかし、野党がこれから1カ月以内にどうしてもやらなければならないことは、これら野党が普通に頑張らなければならないことではない。
それは、日本政治史上初の「野党予備選の実施についての合意」だ。
来年7月には参議院議員選挙が行われる。政治は最後は数だ。自称インテリたちは、数が全てではない、とキレイごとを言う。他方、安倍自民党が強すぎることを嘆き、このままでは日本の政治が破壊されると叫ぶ。
自称インテリたちが望んでいるように、強すぎる安倍自民党を牽制するためには、野党が強くならなければならないが、野党が強くなるためには議席数を増やすしかない。キレイごとでは安倍自民党を牽制することはできない。野党には徹底的に議席数増にこだわる執念が必要だ。
そして野党が、自分の党の議席数増だけを考えているうちは、いつまで経っても日本に強い野党は誕生しない。野党各党が、野党「全体の」議席数増にどこまでこだわることができるかが勝負だ。そしてそのためには、まずは「自民党以外」の議席数を増やすところから出発しなければならない。
■野党予備選で、候補者一本化のプロセスを「見える化」せよ
先月9月に、僕は『政権奪取論―強い野党の作り方』(朝日新書)を出版した。自称インテリたちは強い野党が必要だと、皆口にする。しかし、じゃあその強い野党をどう作るかについては誰も具体的に提案しない。重要なことはアイデアを口で言うだけではなく、それを実行するプロセスを考えることだ。
まあ実際の政治をやったことがない自称インテリたちに、具体策を求めることは無理な話かもしれない。問題なのは、野党自身にも具体策がなさそうなことだ。
ゆえに僕は、強い野党を作るプロセスにこだわって『政権奪取論』を上梓したつもりだ。本の中身の詳細については、そちらを読んでもらうことにして、今回、僕が特に強調したいことは、『政権奪取論』でも提案した野党予備選に向けて、野党は即座に動くべきだ、ということ。
強い野党になるためには、議席数を増やさなければならない。しかし、現在複数乱立している野党のうち、ある野党の一つがいきなり議席を大幅に増やすことには現実味がない。国民民主党、立憲民主党、日本維新の会のうちいずれかの野党が、単独でいきなり自民党に対抗できる勢力になることは到底無理だし、ましてや政権奪取を遂げることなどは夢物語のレベルだ。そんなことを考えている各野党の政治家がいるのなら、彼ら彼女らは政治家を即刻辞めた方がいい。政治家としてのセンスは0だ。
(略)
そして、野党の政治家は自党の利益だけを考えるのではなく、日本の政治のことを常に考えるべきだ。そうであれば、まずはとにかく野党全体の議席数、すなわち「自民党以外」の議席数を増やすことから始めなければならない。
内閣総理大臣の指名権を有し、政権の要となる衆議院議員の選挙制度は現在、小選挙区制がベースだ。一選挙区につき一人の当選者しか出さない小選挙区制は、基本的に二大政党が政権を争う仕組みである。つまり日本はアメリカやイギリスのような二大政党制を志向している。
ゆえに、歴史と伝統を有し、日本人的価値観を代表している感のある自民党という巨大な政党が一方に存在するのであれば、それに対抗する野党勢力も大きく一つにまとまらざるを得ない。日本の政治が二大政党制を前提にしている以上、自民党と「それ以外」という構図にならざるを得ず、有無を言わさず、野党を一つにしていくしかない。
野党議員はここを押さえる必要がある。日本の政治のことを考えるのであれば、「野党は一つ」なのである。
では、どう一つになるか。この実現プロセスが重要だ。
さっきも述べたが、今の各野党の支持率の状況で、どこかの野党の一つが一大勢力になる可能性はまずない。だからといって、いきなり今の各野党が合併して一つの政党になっても、有権者は支持しないだろう。そんな数合わせの政党には何の魅力も感じないからだ。
自由党の小沢一郎代表は、野党が一つになる必要性をずっと主張していた。その野党の最終形態は正しいにしても、小沢さんの考える実現プロセスが間違っていたがゆえに、野党の支持率は上がらなかったのだと思う。
小沢さんは、野党がすぐに一つの政党にまとまることを考えていたが、それでは有権者の心を捉えることはできない。単なる議員都合の数合わせにしか見えないからだ。民進党があれだけの騒動を経て、小池百合子東京都知事率いる希望の党や、その後の国民民主党、立憲民主党への分裂に至り、野党内の政治的主張の違いが見える化した。ここで国会議員の協議だけで再度一つにまとまっても、それは単なる民進党への逆戻りに過ぎず、国民にとっては何のことやらさっぱり分からない。
したがって、野党が一つにまとまっていくプロセスを「見える化」することこそが有権者からの支持を集めるポイントになると思う。
(略)
■まずは野党間の予備選でしのぎを削るべき
予備選は、たとえて言うなら、まずは野党間での予選リーグのようなもので、予選リーグで勝ち残った野党候補者が、決勝トーナメントで自民党と戦うようなものである。
このように野党間の予選リーグをしっかりやることで、強い野党候補者が誕生する。その野党候補者を、決勝トーナメントにおいて自民党候補者と戦わせるべきだ。つまり、弱小野党の候補者は、いきなり巨大な自民党の候補者と対決するのではなく、まずは野党内で競い合い、そこで勝ち上がってくるべきだ。弱小野党間でも勝てないような野党候補者が、自民党候補者に勝てるはずがない。
したがって、国民民主、立憲民主、日本維新の会などの野党は、来るべき来年7月の参議院議員選挙に向けて、自党候補者を擁立すべく、まずは野党間の予備選でしのぎを削るべきである。自党の候補者を擁立するために、他党の候補者を叩き潰すのである。
そして予備選で野党候補者が確定すれば、各野党はそれに従って、本選挙である参議院議員選挙においては自党から候補者を出さないようにする。ここは自党の勢力拡大ではなく、野党勢力の拡大に協力すべきだ。
来年7月の参議院議員選挙での野党勢力の拡大に照準を合わせるなら、少なくても年明け2月頃には野党候補者を確定したいところだ。
そして予備選には2カ月ほどは必要だろう。
そうであれば、10月中、遅くても11月初旬までには各野党は予備選実施の合意を行い、11月中には予備選のルールを確定しなければならない。各野党は12月中には自党の候補者を選びながら、年明け早々から予備選を始めなければ間に合わない。
(略)
予備選を突破することによって、その候補者は、単純に各野党に選ばれた候補者のときよりも一皮むけて、選挙に強い候補者にレベルアップしていると思う。ゆえに予備選を経ない野党候補者よりも、自民党候補者とわたり合うことができると思う。
(略)
立憲民主党の枝野さんや、国民民主党の玉木さんは予備選実施に前向きの発言をしている。あとは党内をまとめて、行動に移すだけだ。これくらいのことを実行できない野党に、日本の大改革などできるはずがない。
(略)
(ここまでリード文を除き約3100字、メールマガジン全文は約8900字です)
※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.123(10月16日配信)を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【リアル政権奪取論】迫る参院選、野党は予備選の準備を!》特集です。
(前大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹 写真=時事通信フォト)
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