通勤時間の生産性高めるなら「聞く読書」
プレジデントオンライン / 2018年10月9日 15時15分
■耳からの情報は、記憶に結びつきやすい
落ち着いて本を読む時間がない。文字を追うのは目が疲れる……。それなら“視覚”ではなく“聴覚”を使った読書はいかがだろう。オーディオブックなら、通勤中や家事の間も、“ながら読書”がかなう。
オーディオブックとは、本の内容が朗読された音声データをスマホやMP3形式の音楽プレーヤーなどを使って聴く音声コンテンツ。多忙な現代人のライフスタイルにマッチし、近年広がりを見せている。低価格での聴き放題サービスも登場。人気声優や有名俳優らが話題の本を朗読するものもあり、著者だけではなく読み手で選ぶ楽しさも。落語や講演会などのコンテンツもそろい、再生速度も自在。「読む」とはひと味違った魅力があるのだ。
「聴く」と「読む」では、脳への影響はどう違うのか。受験生やビジネスパーソンへの学習支援を行う本郷赤門前クリニック院長の吉田たかよし医師によると、耳からの情報は、脳が活性化したり、記憶に結びつきやすいなどの効果があるという。
「脳には、ワーキングメモリー(作業記憶領域)という情報を一時的にメモする黒板のようなものがありますが、その主要な仕組みのひとつが“音韻ループ”。音声情報を積極的に記憶しています」
【audiobook.jp】
●オーディオブックの草分け的存在
オトバンクが提供するサービス。1冊単位の単品購入のほか、月額750円の「聴き放題プラン」もある。ビジネス書のベストセラー『嫌われる勇気』を、人気声優の細谷佳正と井上和彦が朗読するなど、豪華声優陣とのコラボ『極上voiceメソッド』シリーズも配信。
【Audible】
●月額1500円のコイン制。Amazonが提供
ビジネス、自己啓発、小説、洋書など20万冊以上の豊富なラインアップ。著名人の朗読作品や海外コンテンツも。会員になると、月額1500円で毎月1コインが付与され、好きなタイトルの購入に使える。無料で返品交換も可能。会員にならなくても単品購入できる。
■「聞き流し」なら、記憶は最長2週間
ただし、耳からの情報を“学び”に変えたい場合、単にボーっと聴くだけでは、効果が半減してしまう。
「“ボーっと聴いて終わり”では、せいぜい2週間で記憶は消えます。使える知識として定着させるには“長期記憶”に変えることが大事」
そのためには、“聴き方”にひと工夫が必要だ。
「重要なのは、考えながら聴く習慣をつけること。聴いた言葉を頭の中で反復したり、“ここは大事、これはそうでもない”など、何らかの思考を加えることで脳が刺激され、長期記憶に変わりやすくなるんです」
学びに適した時間帯や好きな声を選べば、さらに効率はアップする。
「脳が一番活性化するのは、午前中。さらに移動中は脳に刺激が加わるため、朝の通勤時間に聴くのが最適です。また、ポジティブな感情を持てる読み手を選ぶことで、脳が受け入れやすい状態になって理解力が高まる。その分、記憶にとどまりやすくなりますよ」
(1)学びにつなげたいなら、夜より朝
(2)移動中に聴くとさらに脳が活性化
(3)好きな声なら理解力アップ!
●医師 吉田たかよしさん
オーディオブックのヘビーユーザーに聞く
私が「聴く読書」をやめられない理由
池田千恵さん●朝6時社長
■雑踏のなかでも、ひとりになれる
「両手がふさがった満員電車の中やルーティン作業中など、耳の“空き時間”は意外とあります。オーディオブックを使えば、それらが“生産性のある時間”に変わるんです」
“朝活”の第一人者として知られる朝6時社長の池田千恵さんは、オーディオブックのヘビーユーザー。朝時間を使った“聴く読書”が日課だという。
「朝7時半から9時までの間、カフェで手帳を書いたり、アイデアを考える時間を設けているのですが、その間ずっとオーディオブックをイヤホンで聴いています。耳で聴くのは、脳にダイレクトにインプットされるようで頭に残りやすいと思います。雑踏のなかでも没頭できるので、集中しやすく、気分転換にもなりますね」
オーディオブック歴はすでに10年以上。起業直後の行き詰まっていた頃、気分転換にランニングを始めたのが、“ながら聴き”のきっかけになった。
「何もしない時間が無駄に思え、経営者のセミナーの音声を聴いてみたら、頭にスッと入って気持ちも前向きに。以来、生活に“ながら聴き”を取り入れるようになりました」
■実際の本で“答え合わせ”
自分にとって大切な本を何度も聴き返し、血肉にするのが池田さんのスタイル。インプットだけでなく、アウトプットも重視する。
「聴きっぱなしにせず、得た気づきやアイデアをノートにまとめています。それらを基に、やるべきことを手帳のTo Doリストやスケジュールにどんどん落とし込んでいく。そうすることで、ビジネスに生かすように心がけています」
学んだことを掘り下げるために、オーディオブックと書籍を両方購入し、内容を照らし合わせて復習する。この作業を繰り返すことで、より理解を深めていく。
「耳が空いているときに“ながら読書”をするので、聴き飛ばしたり、忘れている箇所もあります。だから、オーディオブックで聴いた後、実際の本も購入して読み返し、内容が理解できているかを確認する“答え合わせ”をするんです。この“行き来”を繰り返すことによって、より深く内容を吸収でき、学びが自分のものになっていきます」
外資系企業に勤めていた頃は、オーディオブックを英語学習の教材として活用していたことも。
「ビジネス書の定番『7つの習慣』と『人を動かす』の英語版をオーディオブックで聴いていました。日本語で何度も読んでいるから内容は把握ずみ。完全に聴きとれなくてもなんとなくわかるし、“この部分は英語だとこういう表現をするんだな”と発見があり、楽しく学べましたね」
「今でも頻繁に聴いている」という座右の書には、『「原因」と「結果」の法則』を挙げる。
「壁にぶつかって辛いとき、何度もこの本に救われました。現実がうまくいかないのは環境のせいではなく、自分の心の状態がもたらしている。だからこそ常に心を耕しておこうと教えてくれます。自分の置かれたシチュエーションによって毎回気づきが変わり、何度聴いたり読んだりしても、新しい発見があります」
「読む」と「聴く」を併用すれば、時間の有効活用になるだけでなく、読書がもっと身近になる。忙しいビジネスウーマンに最適なオーディオブックでの読書。1度試してみてはいかがだろうか。
・大切な1冊を何度も聴き返し、学びを掘り下げる
・得た気づきやアイデアはノートにメモ
・オーディオブックと書籍を両方購入し、内容を照らし合わせて理解を深める
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医師
朝6時社長
1974年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。ワタミ、外資系戦略コンサルティング会社を経て、独立。『朝活手帳』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など時間管理に関する著書多数。
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(西尾 英子 イラスト=itabamoe 写真=iStock.com)
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