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「わかった」と「よくわかった」は別物だ

プレジデントオンライン / 2018年11月23日 11時15分

写真=iStock.com/imtmphoto

人に何かを頼んだとき、どうして言った通りにしてくれないのか。その原因は、あなた自身の言い方や口グセにあるのかもしれない。24の症例とともに、改善するための「処方箋」を明らかにしよう。今回は、慶應義塾大学環境情報学部教授の今井むつみ氏に「何を言いたいかわからない」について聞いた――。(全24回)

※本稿は、「プレジデント」(2016年10月31日号)の特集「『超』ウケる言い方入門」の記事を再編集したものです。

■伝えるあなた自身が、よく理解していない

ビジネスの世界では相手に自分の考えを正確に伝えることが重要になります。しかし、なかなか自分が伝えたいことが相手に伝わっていなくてもどかしい思いをしている方たちは多いのではないでしょうか。

1つのケースを考えてみましょう。あなたは上司に渡された資料を持っています。その資料に基づき部下に仕事を与えるように言われました。一通り資料に目を通したあなたは、部下に仕事を割り振ります。しかし、いくら話しても部下がどこかピンときていません――。よくある光景ではないでしょうか。

このようなとき、まず考えてほしいのは、自分が伝えるべき内容について深く理解しているかということです。理解の程度には段階があります。「人にわかるように伝える」ためには、自分がまず、そのことを非常に深く理解していることが必要となるのです。資料を読み、字面が理解できると人はそれを「理解した」と思いがちです。しかし、自分ではそう思っていても、実は人に伝えることができるレベルの理解に達していない場合が多いのです。

ではどうすれば、人に伝えられるレベルまで理解を深めることができるのでしょうか。新しい知識を得ることは、情報について熟慮を重ねながら吟味し、自分のなかにある知識や経験の蓄積とリンクさせていくことです。

例えば資料を読むなら、読みながらマーカーで色を付けるだけではなく、自分で問いを発し、それに答えられるかどうか確認するような読み方が有効でしょう。

当たり前だと思っていることでも「なぜなのか」「どうすればできるのか」を深く考えながら読むのと、通り一遍に読むのでは、書類から読み取れる情報が大きく違ってきますし、その情報が、自分の知識体系にきちんと統合できるかどうかにも影響します。

あることを熟知し、エキスパートになるには、自分の知識の状態を大きな視点で客観的に判断できることがもっとも大事です。ビジネスマンに限らず、各分野の熟達者はみな常に自分の知識の状態を見極めることに長けています。そこからさらに、足りないところを克服する方策を考え、努力を重ねているのです。

もう1つ、伝えたいことを相手にきちんと理解してもらうために大事なことは、相手の知識のレベルを的確に推察し、それに合った話し方の工夫をすることです。

人は、自分の知っていることは相手も知っているという自分勝手な思い込みをしがちです。相手のキャリアや経験からこういうことは知らないだろうな、これは知っているはず、というように相手の知識の状態を意識的に考えることで、独りよがりな説明から、相手が理解しやすい説明をすることができるようになるはずです。

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今井むつみ(いまい・むつみ)
慶應義塾大学環境情報学部教授
認知科学を中心に研究者や教育実践者などが理論・知識・経験をシェアする「学びを考えるコミュニティ」ABLE(http://cogpsy.sfc.keio.ac.jp/imailab/)主宰。
 

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(慶應義塾大学環境情報学部教授 今井 むつみ 構成=山崎テツロウ 撮影=水谷 充 写真=iStock.com)

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