医師が教える"絶対に風邪をひかない方法"

プレジデントオンライン / 2018年12月9日 11時15分

『プレジデントFamily2019冬号』の「インフル予防で親ができる6つのこと 医師が教える 絶対に風邪をひかない方法」より(井田やす代=イラストレーション)

気温が下がり、風邪やインフルエンザで体調を崩す人が増えている。予防にはなにが有効なのか。医師の裴英洙氏は「マスクの着用、こまめな手洗いのほか、新幹線や教室などの密閉空間では後ろの席に座るといい」という。この冬、「絶対に風邪をひかない方法」をお教えしよう――。

※本稿は、『プレジデントFamily2019冬号』の掲載記事を再編集したものです。

■Q1 風邪をひきやすい人の特徴って?

風邪をひきやすい人は、どういう人なのだろうか。『一流の人はなぜ風邪をひかないのか?』(ダイヤモンド社)の著者の裴英洙(はい・えいしゅ)氏はこう語る。

「風邪は体力の低下と風邪ウイルスとの接触の二つによって引き起こされます。不規則な生活リズムや栄養バランスの悪い食生活、継続的なストレスや睡眠不足は、風邪への抵抗力を低下させます。そんなときに風邪ウイルスの感染経路に接触すると、風邪をひくリスクは増大します」

年末年始で忙しく生活が乱れがちな受験生は、要注意である。

「薬で症状を抑えることはできますが、だるさや熱っぽさなどがなくなって、元の状態に回復するには、最低でも1週間はかかります」

風邪やインフルエンザのウイルスに感染する経路は「接触感染」と「飛沫感染」に大別される。

「『接触感染』は、ウイルスが付着しているものを触ることで感染する経路です。風邪をひいている人との消しゴムの貸し借りや、電車のつり革などの間接的な接触でもウイルスはうつります。一方の『飛沫感染』は感染者のせきやくしゃみを吸い込み感染するものです。学校で集団生活を送り、塾で集団授業を受けている受験生たちは、リスクの高い環境にいるといえるかもしれません」

■Q2 うつらないために気をつけるべきことは?

「接触感染」を防ぐには、ドアノブやエレベーターのボタン、水道の蛇口、電車のつり革など、「不特定多数の人が触れる出っ張ったモノ」に触れないことが重要だと裴氏は言う。

「人が触るところにはウイルスがうつる可能性が高いです。手で触るだけでは体内に入りませんが、その手で目をこすったり、口元を触ったりすると、ウイルスは体内に侵入します」

多くの人は無意識のうちに自分の目元、口元、鼻など顔のあちこちを触っているため、「自分の顔を触らないように意識する」ことも、風邪予防に効果があるそうだ。マスクをすると顔を触る癖を防ぐことができる。

「地味な方法ですが、こまめに手洗いをするとよいでしょう。1日に10回程度洗うことをおすすめしています。トイレや外出の後だけでなく、“学校や塾の授業が1コマ終わるたびに洗う”という頻度が目安です。ジェル状のアルコール消毒液を持ち歩くのもよいと思います」(裴氏)

トイレなどにある、手を乾燥させるためのエアータオルは避けたほうがよいと裴氏は言う。

「ウイルスが手についた人が使った場合、空気でトイレ中にウイルスを拡散させてしまいます。見かけたら近寄らないほうが無難です」

■感染リスクを下げるには「後ろの席」を選べ

次に「飛沫感染」を防ぐには、感染者と物理的に距離を取ることが第一。他人との距離が近い場所や、密閉空間は感染リスクが高まるため、満員電車の中や閉め切った教室、駅間が長く、空気の入れ替わりの少ない新幹線の車内はリスクが高い。

「せきやくしゃみは人の前に向かって飛びますから、教室の席が前になるほど、後ろから浴びるせきやくしゃみの量が増えることになります。感染リスクを下げるには、後ろのほうの席を選んでください」(裴氏)

地方受験で注意してほしいのが、新幹線やバス、ホテル内の湿度だ。

「ウイルスは湿度が高いと動きが鈍くなります。ホテルでは加湿器を使うのが効果的ですが、湯船にお湯を張って風呂場のドアを開けっ放しにしたり、ぬれタオルを部屋に干すだけでもよいでしょう。新幹線やバスではガムやのどあめで口の中を潤しておくと、口の中の湿度が上がり、効果的です」(裴氏)

東北大学医学部で漢方医学を研究してきた医師の関隆志氏は、勉強部屋の湿度の重要性を指摘する。

「室内に湿度計を置き、湿度を50~60%に保ってください。室内の湿度を高めながらバランス良く栄養を取れるので、冬場は鍋物を食べるのもよいでしょう。牛乳や豆乳、はちみつには喉を潤す効果があり、乾燥による風邪を防ぐ食材のひとつとしておすすめです」

■Q3 インフルエンザの効果的な予防法は?

インフルエンザの予防として、まず思い浮かぶのが予防接種だが、これについて裴氏は、「できる限りワクチンを打つことです。ワクチンの効果が出るまでに2~4週間かかるので、早めの接種をおすすめします。家庭内での感染を防ぐため、家族全員が接種するのが望ましいですね」と断言する。

近年、抗インフルエンザウイルス薬「リレンザ」を予防のために服用する家庭も出始めている。親としては魅力的な選択肢のように感じるかもしれないが、副作用を考えると避けたほうがよいと裴氏。

「自費負担で予防投与をしている病院がありますが、服用すると肝臓など臓器に負担がかかります。予防投与はあくまで老人や病弱な方向けの措置で、子供への処方は慎重に考えたほうがよいでしょう」

冬場の病院は風邪やインフルエンザの患者が多数集まるため、“もらいインフル”にも注意したい。

「単なる風邪だったのに、病院に行ったせいでインフルエンザのウイルスに感染してしまったという例は非常に多い。体調が悪くても1日は様子を見るほうがよいでしょう。急いで病院に行ったからといって、すぐに治るわけではありません」

■Q4 体調不良に気付いたら、どう手を打ったらいい?

「風邪のひき始めの段階で、適切な食事を取ることで、重い発熱や長引く体調不良を避けることができます」と前出の関氏。関氏は東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンターで放射線を活用した研究のかたわら、漢方やツボ押しなど東洋医学の普及活動も行っている。

『プレジデントFamily2019冬号』より

「東洋医学は“効果が出るまでに時間がかかる”というイメージを持たれがちですが、実際は30分で効果が出ます」

東洋医学の観点では一口に風邪といっても、その人の体質によっていくつかのパターンに分かれる。

「風邪にかかりやすい体質・体の状態は、大きく分けて2パターンです。一つ目が手足が火照って寝汗をかきやすい“陰虚”タイプ、逆に冷えが強く、風邪をひくと悪寒がして寒くなる“陽虚”タイプ。それぞれに合った対処法があります」(関氏)

まず、“陰虚”と呼ばれる、体が熱を帯びるタイプは、水分が足りておらず、体が冷却不足状態。鼻や喉が乾燥して空せきが出るといった風邪をひく。牛乳、チーズ、卵、小松菜など、体を潤す食べ物を使った食事を取るとよいそうだ。

“陽虚”タイプは、風邪のときに寒けが強くなり、体の冷えや下痢などの症状が出やすい。体の熱量が足りないため、羊肉やニラ、クルミなどの体を温める食事を取るとよい。

「東洋医学では、これらの乾燥感や悪寒を伴う風邪に加えて、“気滞”という体調不良があります。“気滞”の症状は偏頭痛や腹痛などがあります」(関氏)

“気滞”は主にストレスによって引き起こされる。対処法として有効なのは、ミカンの皮やハッカの香りだと関氏。

「香りは直接脳を刺激するので、即効性があります。アロマオイルなどをハンカチにしみこませて持ち歩いたり、ミカンをお弁当に入れたりするのがおすすめです。ストレスは免疫力全般を低下させるため、特に注意してください」

■Q5 家族に感染者が出てしまったら?

風邪をひいてしまった人には申し訳ないが、「完全隔離」が二次感染を防ぐうえで重要だと裴氏。

「部屋の出入り、会話、物の受け渡し程度でも、ウイルスは十分感染します。感染者を触れたタオルやコップ、食事に使ったお皿や箸などはすぐに洗うか使い捨てにしましょう。お風呂は、感染者を一番最後にしてください」

鼻をかんだティッシュや使用済みのマスクなどは、風邪ウイルスのかたまりといってもいい。

「ビニール袋に入れて袋の口を縛り、フタ付きのゴミ箱に入れて処分しましょう」(裴氏)

早く風邪から回復することも、受験生とウイルスの接触時間を減らすという意味で、感染予防につながる。

「風邪だけど休めないと動き回ったり、あとこの一仕事だけやってから休もうなどと考えているだけで、体は回復作業に全力を使えません。風邪かなと思ったら、“まだつらくないから休まない”ではなく、“今は全力をかけて、寝て休むことに集中する”と気持ちを切り替えてください。子供が風邪をひいてしまったときは“今は勉強のことは忘れようね”と気持ちを切り替える一言をかけて、心もゆっくり休ませましょう」(裴氏)

■Q6 今からできる、風邪をひきにくい体質のつくり方は?

「古くから薬食同源や食薬という言葉がある通り、適切な食事を摂ることが体質改善につながります。先に挙げた“陰虚”“陽虚”“気滞”は、ひきやすい風邪のタイプや体の性質も表しています。普段から、自分のタイプに合った食材を取ることが、体質の改善につながります」(関氏)

『プレジデントFamily2019冬号』より(井田やす代=イラストレーション)

また、東洋医学のアプローチでは、体のさまざまなツボを刺激することも風邪予防に役立つ。

「一人でも押しやすいツボとしては、“陽虚”タイプの場合、内くるぶしとアキレス腱の間にある“太渓”を押すと、体が温まります。“陰虚”タイプの場合、手首の親指の付け根で、脈を測れるところにある“太淵”を押すと、水分不足からくる喉の痛みやせきが治まります。休憩時などに自分で刺激するとよいでしょう。力を入れすぎず、軽く押す程度で十分です」(関氏)

ストレスで引き起こされる“気滞”については、親のメンタルコントロールが重要だと関氏。

「母親の精神状態は子供にも伝染しやすい。受験生家庭でストレスを抱え込むなというほうが難しいかもしれませんが、ストレスを直接子供にぶつけることだけは避けましょう」(関氏)

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裴 英洙(はい・えいしゅ)
医師・医学博士・MBA
ハイズ株式会社代表取締役社長。ビジネススクール在学中に医療機関再生コンサルティング会社を設立。多数の医療機関への経営支援、ヘルスケア企業への医学アドバイザー業務を行っている。
関 隆志(せき・たかし)
医師
東洋食薬ライセンス委員会委員長。日本東洋医学会 代議員。東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンターサイクロトロン核医学研究部研究教授。WHOの会議に出席し伝統医学のアドバイザーを務める。

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(プレジデントFamily編集部 西谷 格=文 井田やす代=イラストレーション)

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