1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

外資金融の妻"育児も家事も代行"で大赤字

プレジデントオンライン / 2019年1月6日 11時15分

共働きで世帯年収は1000万円を超える守田家。子供の小学校入学にあわせて妻が時短からフルタイムに戻った。するとそれまで毎月10万円の黒字だった家計が、毎月4万円の赤字に転落してしまった。妻の復職で収入は増えているのに、なぜ支出が増えたのか。月収70万円夫婦が「赤字家計」を脱出した方法とは――。

■妻のフルタイム職場復帰で月収70万円夫婦が「赤字生活」の泥沼

「フルタイムの仕事に復帰して、月収が約10万円増えました。それなのに、毎月4万円も赤字です」と話すのは守田美紀さん(仮名・38歳)。

美紀さんは外資系金融機関で働いています。会社では、子供が小学校入学するまで時短勤務が認められており、美紀さんもそれを利用していました。この春、下のお子さんが小学校に入学したためフルタイムに戻り、残業、出張もこなすようになりました。

仕事の量が増え、家事育児と両立することは大変ですが、収入は増え、現在の手取り収入は32万円。夫の和也さん(仮名・43歳)の収入約41万円と合わせると、月約73万円になります。世帯年収は軽く1000万円を超えるにもかかわらず、月4万円の赤字で1円も貯金できないとは、どういうことなのでしょうか。

■時短勤務の時は月10万円貯金できたのに、今は月4万円も足が出る

聞けばここ数年、美紀さんが時短で働いていた時期でも、世帯月収(手取り)は63万円あったので、毎月10万円ほど貯金できていたそうです。家計管理は、家計簿の記入などは美紀さんが中心に行っていましたが、収入は2人で合算し「財布をひとつ」にしていました。

毎月給料日のあとには、守田家のお金の使い方について、意見を出し合う「家族マネー会議」も開いていたそうです。互いのベクトルを調整する理想的な夫婦なのですが、美紀さんの前向きな「フルタイム復帰」が皮肉にも月4万円の赤字の原因となったのです。

■「代行」頼みで出費激増、キャリアアップへのあせりが家計を圧迫

美紀さんがフルタイムとなった後、3つの費目について支出が大きく増えていました。教育費、食費、家事代行です。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/scyther5)

教育費(月14.5万円)は民間の学童保育に小3と小1の子を週5日通わせている費用で、勉強を見てくれて、希望すれば夕食も出ます。「お送り」サービスも利用できるため、高額でも子どもによい環境を与えられると思い、利用しています。

食費(月9.6万円)は、学童の夕食制度を利用することもありましたが、できるだけ家族での食事を大切にしたいという思いから、「夕食食材の宅配サービス」を利用したり、ネットスーパーでの買い物が多くなったりし、比較的高めとなっていました。

家事代行(3.8万円)では掃除や洗濯、買い物などを、週に1~2回のペースで依頼しています。

「子育てをしながらフルタイムで働く女性の必要経費だと思うんです」という美紀さんは、これらの出費について「仕方ない」と考えている様子です。確かに、仕事、家事、育児のひとり3役を毎日続けていくためには、誰かに代行してもらうために「お金で解決する」場面も出てくるでしょう。

■働く時間が増えたことで「必要経費」が無限膨張

しかし、残業や出張で忙しく働き収入は増えても、これまで順調に黒字だったものが「赤字」になるとは、残念なことです。

私はほかにも家計を圧迫している費目がないか、さらに話をうかがっていきました。すると、やはり浪費がありました。

「働いていると、交際費もかかるし、こまごまと出費するから」という理由で、美紀さんのこづかいが当初2万円だったものが6万円に大きく増加していることがわかったのです。

主な使い道は、会社の同僚や仕事関係の人との飲み会代や、残業時のおやつ代、出張時の交際費など。美紀さんは出産・子育ての期間中に「キャリアの面で後れをとった」と感じていて、その穴を埋めるべく、同僚たちとの交流に出かけ、仕事のことの情報を得たり、信頼関係を深めたりということにお金を使っていたのです。

そして、それを実現し続けるために、家事や子育てを、お金を払って「代行してもらう」ことにつながったようです。

■家計を赤字にしてまで得なければならないキャリアに意味はない

民間の学童保育代から家事代行、飲み会代まで、美紀さんの言い分では「すべて必要経費」ということのようですが、家計を赤字にしてまで得なければならないキャリアは、あまり意味がないように思えました。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/kokouu)

確かにキャリアは大切かもしれませんが、自分が何のために働いているのか、そこを見失ってはいけません。美紀さんは自分のキャリアと同じくらい、家庭、子どものために収入を得たいと思っていたのではないでしょうか。

何かを切り捨てるという発想ではなく、「上手に両立してお金を貯めていくための、支出のバランス調整」を提案し、どこを工夫していけるのかを一緒に検討することにしました。

■行き過ぎた飲み会参加は仕事にも家計にも悪影響が出た

まず見直した支出は、美紀さんの交際費です。

家計費上の交際費は以前から月1.8万円です。でも実際はもっとあります。前述のこづかい費に含まれる飲み会代は事実上の交際費。現状、週に1~2回のペースで飲み会に参加し、帰宅が遅くなった際はタクシーを使っており(月1回程度)、こうした飲み会関連費だけで3万円以上になります。よって、通常の交際費+飲み会関連費で計5万円です。

これがすべて仕事の向上などにつながっているとよいのですが、必ずしもそうではないようです。仕事の愚痴を言うだけの飲み会、同僚と楽しむだけの飲み会も多いようです。すべてをやめろというわけではないのですが、仕事の発展に伴わない飲み会は、頻度を少なくするように検討してもらうことにしました。

始めは断りにくいようでしたが、同僚に「現在も子育て中であり、子どもが帰りを待っている」という事情を伝え、週1回程度の参加で収まるようにコントロールできるようになりました。同僚も、付き合いのよい美紀さんが“お母さんである”ということを忘れがちだったといい、飲み会の頻度を下げることも快く理解してくれたそうです。

こうして早く帰れる日が増えると、子どもの世話や食事作りを自分でできるようになり、スーパーに寄って帰るというゆとりもできました。これにより、民間の学童保育代が2万円減、食事の宅配代が1万円減となりました。

■月約4万円の「家事代行」費をどうやって減らしたか

ただ、家事代行にかける費用はなかなか減らせるめどが立ちません。ここまで支出の削減について考えてきたのですが、夫のかかわりはほぼ皆無。サイフを一つにしているとはいえ、家事育児に関しては全くのノータッチなのです。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/yipengge)

「妻に任せている」と口にこそ出しませんが、心の中ではそのつもりのようです。そこで、お子さんが夫を誘って、週末に「お父さんとお風呂掃除する」「食材など家庭用品の買い物に一緒に行く」ことを実行してもらいました。少しずつ、家事に巻き込んでいく作戦です。

家事も、週末にみんなでゲームのようにやると楽しくなりますし、効率よく片付きます。こうして、家事代行は時々の掃除と、どうしても妻の帰りが遅くなる時の食事作りなどに収められるようになりました。

「意外と、周囲の理解や工夫次第で下げられる支出がある」と思えた美紀さんは、夫や子どもたちと協力しながら、通信費のためにスマホの契約を変えたり、日用品代を下げるために買いだめのしすぎを見直したりしました。

家族と一緒に家事にかかわるようになった夫は、家事育児と仕事を両立しながら支出を削減しようとしている美紀さんの様子を見ていたこともあり、自分だけ何もしないのは悪いと考え、自ら小遣いを1万5000円減らす(7万円→5.5万円)ことを申し出てきました。

■年約50万円の赤字家計が、年120万円超の貯蓄ができるように

このように、支出を抑えることができるようになり、毎月4万円の赤字から、6万円近くの貯金ができるようになりました。夫婦で年間100万円ほど手にするボーナスから毎月の生活費を穴埋めすることもなくなり、旅行代や帰省費などを除く年50万円を貯めることができます。よって今後、貯蓄は年間120万円を超える見込みとなりました。

一般的に、収入が増えたからといって、その分を全部貯金に回すのはなかなか難しいものです。収入を増やすためには、さまざまな「必要経費」がかかってくるからです。その必要経費は、すべて必要なものだと思いがちですが、実際はその中に「忙しくなった自分への言い訳」としての支出も含まれていることも多いものです。

今回の守田さんの場合は家事代行や学童、飲み会にかかるお金がそうでしたが、人によってはデパ地下でのお総菜代や、子どもの送迎のためのタクシー代がかかるケースもあります。これは時に必要経費であり、時には必要とはいいがたい支出となるので、判断は難しいものです。

ただ、家計をうまくやりくりするには、収入以上の支出があってはいけません。二人で働く意味も薄れてしまいます。せっかくがんばって働いているのですから、その分を貯金できる家計を目指してほしいと思います。

■【家計費コストカット額ランキング】

※写真はイメージです(写真=iStock.com/grobacter)
1位 -2.5万円 妻こづかい(飲み代含む)
飲み会予算はこれまでの半分の2万5000円に減額
2位 -2.0万円 教育費
学童保育の「時間延長」「夕食提供」などのサービス利用を減らした
3位 -2.0万円 食費
学童保育の「時間延長」「夕食提供」などのサービス利用を減らした
3位 -1.5万円 夫こづかい
妻が節約したのに合わせて、自発的に減らした
5位 -1.0万円 家事代行
家族で週末掃除をするなど、家事に取り組むようになった
6位 -0.8万円 通信費
夫婦のスマホ2台とも契約プランを割安なものに見直した
7位 -0.4万円 生活日用品
ネットでのまとめ買いを減らし、いま必要な分だけに限定

(家計再生コンサルタント 横山 光昭 写真=iStock.com)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください