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就職にめっぽう強い「地方大学・学部30」

プレジデントオンライン / 2019年1月30日 9時15分

AFLO/読売新聞=写真

地方の大学、短大であっても就職に強い学校が存在する。全国の大学400校を取材してきた大学ジャーナリストが、コスパ抜群で、親も安心の「おススメ学校」を厳選した。

■公立化が進む地方大学の現実

地方大学で今、トレンドとなっているのが私立大の公立化だ。2009年の高知工科大学を皮切りに、地方私大が次々と公立化した。

私立大が公立大となっても、運営する自治体の財政負担が増えるわけではない。自治体が公立大に支出する運営費交付金には国からの地方交付税交付金が充てられる。そのため、自治体の財政負担は重くなるわけではなく、学費も私大よりは抑えることができる。

受験生やその親、進路指導の高校教員からみても公立化は悪い話ではない。学費負担を抑えることができるし、高校からすれば公立大学への進学実績は高校のアピールにもなるからだ。

実際、それまで私立大だった地方大学が公立化すると、その年の倍率は前年度から極端に跳ね上がる。16年に公立化した福知山公立大学(京都府)は前年の受験者がわずか73人、競争率は1.0倍だったが16年には1540人、17.1倍(一般入試)に跳ね上がった。

19年も千歳科学技術大学(北海道)が公立化を予定しており、さらに今後も公立化の波は続きそうだ。

定員割れしていた地方私立大がよみがえったケースがある。共愛学園前橋国際大学(群馬県)は1999年の開学。翌年には早くも定員割れとなり、群馬県内の高校教員からは冷たい目で見られていた。とてもではないが進学先として勧めてくれるわけがない。ところが現在、共愛学園前橋国際大学は群馬県内でトップ私大と目され、県内の高校教員からは高く評価されている。同じく県内で冷ややかに見られていた04年に開学した創造学園大学があったが、こちらは13年に廃校となっている。

なぜ定員割れだった共愛学園前橋国際大学は復活できたのか。資格特待生制度(推薦・一般入試合格者のうち、実用英語検定2級、情報処理技術者試験、日商簿記2級などの取得者に対して授業料全額を免除。現在は1年間のみ)やコース制度の整備などが大きな成果をあげた。しかし、大森昭生学長は「教育力」と話す。

「資格特待生制度も注目され、優秀な学生も入ってきました。ただ、一番は教育だと自負しています。具体的には入試のレベルを下げませんでした。下げてしまうと、それだけ学生のフォローができなくなります。やみくもな学生集めに走るのではなく、学生をしっかり育てることで社会的責任を果たしたのです」

現在では、地元の高校からも企業からも高く評価される大学に変身した。

■地方であっても企業から注目される

金沢工業大学(石川県)は面倒見の良さから00年代以降、ずっと注目されている大学である。が、研究力の高さはもっと注目されてもいい。例えば、航空工学系で強い大学の証明となるのがボーイング社のエクスターンシップ・プログラムだ。誰もが知る航空機メーカーの人材育成プログラムに参加する日本の大学は東京大学、東北大学、名古屋大学、九州大学の国立旧帝大4校が並ぶ。私立は金沢工業大学1校のみ。同プログラムを金沢工業大学では大学院機械工学専攻の授業の一環として実施している。4年制の学科である航空システム工学科でも研究力の高さに触れることは可能だ。

立命館アジア太平洋大学(通称・APU/大分県)は00年の開学当初から、グローバル人材を育成してきた。世界各地から留学生を受け入れ、その留学生と日本人学生の半数はキャンパス内にある寮で一緒に生活をする。「寮では香辛料をどこまで使うかなど、本当にささいなことで口論をする。お互いの常識が通用しないので口論をしたり話し込んだりしながら、視野が広がった」と、ある卒業生は回想する。

寮は留学生・日本人学生とも1年のみで、2年次以降は大学のある別府市内のアパートやマンションで生活する。別府市内では「APUの学生がいないと働き手などが回らない」と言われるほど、地元に定着している。

この立命館アジア太平洋大学は18年、ライフネット生命保険の創業者である出口治明氏が学長に就任した。7月には起業家学生を支援する「APU起業部」を立ち上げ(出口学長が塾長)、起業のノウハウを伝授する。

起業だけでなく就職も順調で立地の悪さをものともせず、学内説明会の開催を希望する企業は多い。同じことは秋田県にある国際教養大学にも言える。

立命館アジア太平洋大学は00年開設ながら、現在では九州エリア内で「私立大では西南学院大学、福岡大学と同じポジション。グローバル企業への就職を目指すならAPUのほうが上」と見る高校教員が多い。

■就職でも地方はハンデではなく強み

地方という立地は東京・大阪という大都市圏から離れている。そのため、就職活動では不利になる、というのがこれまでの定説だった。

しかし、長く続く学生有利の売り手市場から企業側は東京・大阪だけで採用すれば事足りる、ということはない。企業からすれば地方大学の学生は魅力的でもある。

「東京や大阪の学生と違って純朴で素直。しかも、距離が離れているハンデを学生自身が理解している。それでわざわざ説明会やインターンシップに来るのだからハングリーさが違う」(専門商社)

「数から言えば東京や大阪の学生の採用者数が増えるのは当然。ただ、視点を広く持つ、という点では地方出身者も採用していく必要がある」(機械メーカー)

など、好意的に見る採用担当者は多い。地方の学生が就活で自ら動く、という事例も増えている。

北九州市立大学(福岡県)では、学部3年生と院1年生が、合同業界研究会を例年主催。企業への参加依頼から運営・企画まで担当し、自分たちの就職先を開拓している。

鹿児島大学では内定学生が運営メンバーとなるPFFプロジェクトが18年で4年目を迎える。採用担当者に参加を依頼する一方で、鹿児島大学や他大学の学生に告知。11月下旬に模擬面接・グループディスカッションと就職講演や企業との懇親会などを組み合わせたイベントを開催。毎年、規模が大きくなり、17年は約20社・参加学生は70人だった。学生は鹿児島大生が大半だが、山口大学・長崎大学・熊本県立大学などから参加した学生もいる。

参加企業は鹿児島県内企業3割・九州エリア内企業2割・全国区の大手企業5割というところ。18年の中心メンバーとなる内定学生(大手通信企業に内定)は、その意気込みをこう話す。

「鹿児島だから遠い、鹿児島だから就活に不利、と落ち込む学生は後輩にもいます。ただ、私自身が就活していて思ったのは、そんなのは無関係。大学時代に頑張った勉強や部活はきちんと就活でも評価してくれるし、そこに鹿児島なのか、東京なのか、という違いはありません。それとこういう就活イベントを実施すれば、地元だけでなく東京や大阪の企業の採用担当者もわざわざ来てくれます。後輩にも参加企業の方にも『鹿児島だからよかった』と言ってもらえるようなイベントを目指したいです」

■公立短大という進学の抜け道

短期大学は高学歴化が進む中で学生集めにどこも苦戦している。在籍学生数は93年の53万人をピークに18年は約12万人にまで激減してしまった。

ただ、これは短大の広報不足が原因であり、就職ニーズなどを考えればもう少し人気化してもおかしくはない。

実際に、高校を取材すると、「私たちは教育の質の高さから短大を勧めたい。ところが生徒のほうはオープンキャンパスの機会などで専門学校のほうが面白い、と感じている。それで同じ2年制でも短大ではなく専門学校を選ぶ生徒が多い」(宮城県の高校教員)など、専門学校の宣伝上手、短大の広報下手を指摘する意見は多い。

北海道武蔵女子短期大学の権藤拓就職課長は「全道から多様な学生が集まっていることもあり、企業からの求人ニーズには柔軟に応えられています」と話す。そのため、採用者数を減らしている金融業界へも就職者を例年出している。このような短大が各地にある。地元での就職にこだわる場合は専門学校より短大を進学先候補とするのもいいだろう。

それから4年制大学を目指す場合でも短大は実は進学先候補となる。高校の進路指導教員の間で穴場進学ルートとなりつつあるのが公立短大だ。

公立だけあって、学費は安く年額40万円程度(4年制・国公立大は50万~60万円)。しかも、在学中に編入対策をしっかりしておけば4年制大学、それも国公立大に3年次編入学をすることができる。それでいて、公立短大の倍率はそこまで高くなくせいぜい2倍程度。つまり、入試の負担もそれほど重くなく、学費も高くない。編入学対策をちょっと頑張れば国公立大への編入もできる、といいことずくめだ。

■夏の甲子園準優勝で注目される専門高校

高等専門学校(高専)は製造業で長く人材供給源になっていることはよく知られているが、機械系以外も学べることは意外と知られていない。

AFLO/読売新聞=写真

それでも、かつて電波高専として独立し、現在は他の高専と統合している仙台高専(宮城県)などの電気系、大島商船高専(山口県)など航海士・海洋技術者を養成する商船系もまだ知られている。知名度が低いのは文系学科のある高専だ。福島工業高専(福島県)、富山高専(富山県)、宇部工業高専(山口県)などが該当し、宇部工業高専は九州大学への編入者を一定数出している。

同じく、穴場的な存在が私立の高専だ。東京都にあるサレジオ工業高専と国際高専(石川県)、近畿大学工業高専(三重県)の3校が私立高専だ。国際高専は18年に前身の金沢工業高専から学科を統合して誕生した。全寮制で授業の大半は英語。3年次はニュージーランドに留学し、4、5年次は同じ系列の金沢工業大学キャンパスで学ぶ。理工系のグローバル人材を育成する点で産業界からも注目されている。

夏の甲子園で準優勝した公立の金足農業高校(秋田県)。そこで今、公立の専門高校に注目が集まっている。

専門高校といえば地域内の専門人材を育成するところと思われがちだが、そんなことはない。地域外の遠隔地からでも入学できるよう、北海道ニセコ高校(北海道)、三本木農業高校(青森県)などは寮を用意している。

北海道ニセコ高校は緑地観光科を設置。農業科学コースと観光リゾートコースに分かれる。観光リゾートコースはリゾートの町であることを活かし、ニセコ町内外のリゾートホテルで、8日間の体験学習を実施。実際にホテルスタッフとして観光業を学ぶ。

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石渡嶺司(いしわたり・れいじ)
大学ジャーナリスト
東洋大学卒業後、2003年から現職。大学を約400校訪問。大学・就職関連の著作が28冊あり、最新刊は『大学の学科図鑑』。

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■▼【図表】厳選!就職に強い「地方大学・学部30」

(大学ジャーナリスト 石渡 嶺司 写真=AFLO/読売新聞)

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