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日本人のプレゼン資料は「線」が多すぎる

プレジデントオンライン / 2019年2月1日 9時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/guvendemir)

短時間で見やすいプレゼン資料を作るにはどうすればいいのか。外資系コンサルティング会社出身の清水久三子氏は「作成プロセスに無駄が多く、“過剰品質”なプレゼン資料が多い。代表的なのは『線』の多用。罫線をなくすだけで作成時間を減らすことができる」と指摘する。今すぐ役立つ「資料作りのコツ」を紹介しよう――。

■「考える時間」と「作る時間」を分けて資料を作るべき

私は数多くの企業の方々に資料作成指導を行っていますが、かなりの方が資料作成に多すぎる時間を費やしているのを実感しています。その原因としては大きく2つの無駄があります。1つは作成プロセスの無駄であり、もう1つは資料の品質の無駄です。この2つの無駄をなくすことができると資料作成時間は劇的に少なくなります。

まずは作成プロセスの無駄のなくし方です。プレゼン資料をパワーポイントで作成する際に、いきなりパソコンを立ち上げて、あれこれと試行錯誤しながら資料を作り始めている方は多いと思います。しかし、このやり方では時間を無駄にしている可能性が大きいです。

これは情報を集め、考え、作るプロセスを同じタイミングでやっているからです。本来パワーポイントは考えを表現するためのツールであり、思考することには向いていません。しっかりと構想を決める時間を取り、すべて考え尽くしてから一気に作成した方が、効率がよく、作成時間も短くてすみます。今まで数多くの方の資料作成の指導をしてきましたが、考える時間と作る時間を分けて資料作成をした人は、いきなりパソコンで作成し始めた人の半分以下の時間で完成することがほとんどでした。しかも、資料もわかりやすく、時短だけではなく、品質も高められます。

■15分、30分単位で作業を細分化する

資料作成時間の見積もりやスケジューリングは「大体半日かな」、「3時間はまとまった時間が必要だろう」などざっくり立てている方も多いかもしれません。効率的に資料作成を行うには、もっと細かい見積もりをすることをおすすめします。「気がついたらかなり時間が経っていた」ということを防げます。例えば、情報収集や関連書類を集めるのに30分、ストーリー作成に15分、下書き作成に30分、パワーポイントでの作成に45分……など、できるだけ作業を細分化してみてください。こうすると15分から30分の細切れの隙間時間でも集中して進めることができます。

「そんな短い時間では集中できない」と思われるかもしれませんが、実は1時間以上の長い時間を確保しても、集中力が持たず生産性が落ちるという研究結果もあります。隙間時間でも確実に仕上げていくためには、作業を細分化することが不可欠です。また、見積もりと実際にかかった時間を比較することで、次にはより正確に見積もることができるようになり、さらなる効率化を図ることもできます。

作業の無駄を省くためのもう1つのコツはストーリーボード作りです。これは手書きがおすすめです。単に資料の流れを書くだけではなく、各スライドをどんな図にするのか、グラフにするのかなど、スライドのイメージも手書きで書いてみましょう。いきなりパワーポイントで図を作り始めると形や色使いなど細かい体裁に意識がいってしまい、なかなか進まないことが多いので、手書きでどんな表現にするかを徹底的に考えておいたほうが、作成時間が短時間ですみます。

■「てんこ盛り」の資料はよくわからない

私が行う研修では、受講生の方に自分の資料を持ち込んでいただいて改善したり、研修後に改善したものを提出いただき、私が添削したりしています。そのためかなり多くの業種・職種の方々が作成する資料を目にしていますが、総じて言えることは「Busy(煩雑な、冗長な)である」ことです。私だけでなく、研修を依頼される経営者や人事の方も「うちの会社の資料は、演出がてんこ盛りで何が言いたいかわからないんですよ」とおっしゃいます。Busyな資料は長時間労働の1つの原因になっているのではないかと感じています。今、目指すべきは過剰品質ではなく、最適品質です。

ピーター・ドラッカー氏は「成果を出すために行った労力が少なければ少ないほどよい仕事である」と述べています。これまではどちらかというと、ありったけの資源を投入して、できるだけのことをするのがいい仕事とされてきたのではないでしょうか。資源とは人や時間、またパワーポイントなどツールの機能も含みます。長い時間をかけて、パワーポイントの機能をできるだけ駆使して作る資料は果たしてよい資料といえるでしょうか。国全体で生産性が問われている今、過剰品質、ひいては自己満足になっていないかを問う必要があると思います。

Busyな資料の特徴3つをご紹介します。この3つをやめることだけで、パワポ時短が大幅に実現できると考えてみてください。

■【特徴1】線が多い

表の罫線や見出しの囲み、領域を四角で囲んだ下敷きなど、線が多いとBusyな印象になります。私は外資系企業で働いていたので各国の資料を多く目にしてきましたが、日本の資料は総じて、線の本数や種類が多い印象です。例えば、表の外枠は太線、中の線は細線と点線など、複数の罫線を細かく使い分けていないでしょうか。

同じような表でも海外の資料は罫線が少ないのです。罫線を引かず、数字の桁をそろえて、ある程度の間隔をあけています。これが見えない罫線の代わりになっているわけです。実際に外国人スタッフから、「どうしてそんなにたくさんの種類の線を引くのか理解できない。修正するときも時間がかかったり、間違えたりしそうで、メンテナンスしにくいよね。本質に関係のないことをしている時間が無駄だ」と言われたこともあります。

また、1枚のページに複数の情報を書く場合も、間隔をあければ囲み線などは不要です。むしろ線が少ない方が洗練されて見えます。とても太い赤線などで区切ると、中に書かれている情報よりも、線に目がいってしまうのでノイズになっています。まずは、線を引くのをやめてみましょう。想像以上にすっきりし、色や位置の微調整もいらなくなります。

■【特徴2】色が多い

生産性向上を追求しているある企業では、社内資料での色使いを一切禁じています。資料作成の時間を詳細に計ってみたところ、色を決めたり、他と色を合わせたりするのに、数分の時間が都度かかっていたそうです。わずか数分と思うかもしれませんが、積み重なれば数十分、数時間になってきます。製造業などはわずか数秒、数分を縮めるための改善をし続けています。ホワイトカラーも、それにならうべきではないでしょうか。その色をつけることで資料の本質が変わらないのであればやめるべきです。特に意味もないのに、何色かを使いこなす必要はありません。

また、印刷する際は白黒にすることも多いですし、色の違いを認識しづらい方への対応という意味でも、多色使いはおすすめできません。無彩色(白・黒・グレー)でも十分に伝えることはできますので、色を使って当たり前という意識を変えてみましょう。

■【特徴3】装飾・演出が多い

立体グラフやエンボス(凹凸)加工などもボタンひとつでできるため、つい使いたくなりますが、これも過剰品質であることがほとんどです。Webやアプリケーションのデザインの世界では今はフラットデザインが主流です。リッチなグラフィックを駆使するのではなく、フラット(平坦)でシンプルな形を使用するデザインです。

MicrosoftやGoogle、Appleなどがフラットデザインを採用していることから、グローバルで共通したデザインの在り方といえるでしょう。過剰装飾を廃したシンプルなインターフェースに慣れれば慣れるほど、禅的な本質だけを目立たせるフラットデザインと、ごてごてデザインのギャップが際立ってきます。

また、グラフは数値を視覚的に比較しやすくするための表現なのに、立体表現にすると歪みが生じたり、データが始まる起点がずれたりして正確さが損なわれてしまいます。そのため、リサーチ会社やコンサルティング会社など数値の厳格さを問われる企業では、グラフの立体表現はやってはいけないことに指定されています。

自分では工夫したつもりの演出が、かえって資料を見にくくしてしまったり、野暮ったくしてしまったり、表現の正確さを損ねてしまったり……、散々な結果につながっていないか、確認してみましょう。一度、演出表現なしで資料を作成してみてください。時短効果だけでなく、品質面での向上にもつながることに気がつかれると思います。

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清水久三子(しみず・くみこ)
株式会社アンド・クリエイト 代表取締役社長
お茶の水女子大学卒業。大手アパレル企業を経て、98年にプライスウォーターハウスコンサルタント(現IBM)入社。新規事業戦略立案、人材開発戦略・実行支援などのプロジェクトをリードし、企業変革戦略コンサルティングチームのリーダー、IBM研修部門リーダーを経て、2013年独立。『プロの学び力』『プロの課題設定力』『1時間の仕事を15分で終わらせる』『一流の学び方』『外資系コンサル流・「残業だらけ職場」の劇的改善術』など著書多数。http://andcreate-official.com/

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(株式会社アンド・クリエイト 代表取締役社長 清水 久三子 写真=iStock.com)

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