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「エース社員が辞める」残念な会社の特徴

プレジデントオンライン / 2019年1月30日 11時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/laflor)

できる管理職が辞めていく。「なぜだ」。社長の側近と思われていた人物の退職に、社内に激震が走る。経営者にとっては、寝耳に水だが、本人は何カ月も、何年も前から考えていたことだろう。労働問題を扱う島田直行弁護士は「管理職を軽視する経営者が後を絶たない」と言う。あなたは、あなたの会社は大丈夫だろうか――。

■え、あの人が……

会社には、「組織」というものがある。いかなる組織が理想的であるかの議論は尽きないが、普遍的に正しい組織の在り方というものはない。変化する環境に合わせて組織を変えていくことこそ、社長の役割と言えるだろう。とは言うものの多くの会社では、従来通りのピラミッド型組織を採用しているはずだ。トップに社長がいて、社長の指示を受ける中間管理職がいて、そして現場で動く社員がいる。

このところ、中間管理職の退職を目にすることが続いた。「えっ、あの人が」という人が辞めてしまう。能力も人柄もいいのに退職してしまう管理職について、原因を考えてみたい。

■何でもやらされ、責任も取らされる

(1)業務範囲が広すぎる

管理職というのだから管理する対象があるはずだ。だが「あなたの役割は何を管理することですか」と質問しても、「部下の育成」「営業」といったなんとも曖昧な言葉しか返ってこない。何を管理するのか明確ではないのだ。つまるところ、ある部署における部下の売上管理からクレーマー対応まで、業務の空白部分を何でも引き受けることになる。

日本の管理職は、純粋な管理職ではなくプレイングマネージャーと言われることがある。横文字で表現されるとなんとなく響きがいいが、簡単に言えば、管理とともに現場の仕事もするというものだ。現場で自分自身の数字もあげたうえで管理職として雑多な業務を引き受けるとなると、対応するべき業務は際限なく広がっていく。

それなのに社長からわかったように「生産性の向上を」と問われると、腹も立つ。社長の号令ひとつで生産性があがるほど簡単な話ではない。業務量の拡大と生産性の向上という板挟みのなかで、辞表を書き始めることになる。

(2)責任だけ追及される

「パパは部長になったのよ」と家族が祝ってくれるイメージは、もはや幻想かもしれない。そもそも夕食の時間までに帰宅できない管理職が少なくないのが現状だろう。とある居酒屋で、知り合いから「先生、管理職なんて悲しいものですよ。上から叩かれ、下から突きあげられ」と愚痴に付き合わされた。「どんまい」としか回答のしようがなかった。

社長は、難しい案件や新しい案件ほど優秀な管理職に依頼する。それは至極当然なことだ。だが、いくら部下が優秀であっても、新しいことに挑戦すれば失敗する可能性も高くなる。それなのに失敗の責任を特定の管理職の責任にするのは失礼な話だ。そんなことをしていたら、誰もリスクをとるようなことをせず挑戦もしなくなる。

裁量を与えることと丸投げすることは意味が違う。裁量を与えるということは、「管理職に任せるが、責任は社長がとる」ということだ。業務は増えて責任も増えるとなれば、管理職になろうという気持ちにもなりにくい。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/santypan)

■好き嫌いで決まる評価、納得できない給料

(3)人事評価がずさん

色々な中小企業を観察していると、個人のスキルと職位は必ずしもリンクしないことに気がつく。とくに管理職では、そういった傾向が強い。中小企業では、どれほど立派な人事評価を入れたとしても、最終的には社長の好き嫌いで評価されてしまう。つまり職位の判断では、能力や結果という客観的要素ではなく、社長の評価という極めて主観的要素が占める割合が高くなってしまう傾向がある。それがいいとか悪いというものではなく、そういうものだということだ。

たとえば、人手不足の昨今において、部下を育てることができる人は、まさに逸材だ。本人の営業成績は奮わなくても、部下が成長して数字をあげていけば会社への貢献度は高い。だが育成能力といったものは、数字で表現することはなかなか容易ではない。数字で表現できないと、社長としても意識が向かない。どうしても社長の発想は、損益計算書の売上欄に向かってしまうからだ。

だからこそ部下の育成はできなくても、営業数字をもってくる者を「優秀な人材」と評価して管理職にしてしまう傾向がある。自分の失敗をうまく部下などの責任に転嫁できる人ほど評価されてしまうことすらある。そんな状況だと誰も部下として付き合うことができない。

そもそも営業が上手だからといって、管理職として優秀とは限らない。個人の営業能力と教える能力はまったく別物である。営業の得意な人は、もともと営業が性格的に合っているところがあるから、「こうしたらうまくいく」という体系的な発想をもっていない。だから自分のノウハウを教えることができない。仮に体系的な発想をもっていたとしても、自分の価値が下がることを危惧してあえて他人に教えないこともある。社長は、数字だけで管理職を評価するべきではない。

(4)給料が仕事に見合わない

管理職の賃金についても考えないといけない。一般的に、入社してすぐに管理職につくことはない。段階を踏んで年齢を重ねてから管理職になっていく。管理職につくころには、プライベートでもカネのかかる時期になる。住宅ローンの支払いもあれば子供の教育費もかかる。夫婦共働きが一般化しつつあるといえども、やはり日々の暮らしをまかなっていくことは容易ではない。社員には、「管理職になって家族を幸せにしたい」と動機づけたいものだ。

だが現実は必ずしもそうではない。むしろ管理職になったばかりに、残業代が出なくなって手取りが減ったという話すら聞いたことがある。これは労働基準法が管理監督者を割増賃金の対象にしていないためだ。だが、名ばかりでも管理職が割増賃金の対象にならないというのは、あまりにもおかしい。これが争われたのが、いわゆるマクドナルド事件といわれるものだ。店長が割増賃金の対象にならない管理監督者に該当するかが争われた事案だ。裁判所は、具体的な要素を挙げて管理監督者に該当しないと判断した。つまり会社に対し、未払い賃金の支払いを命じた。

このように、「とりあえず管理職だから残業代なし」とはならない。労働時間の規制が厳しく言われる昨今だからこそ、自社の状況を専門家に聞いて確認していただきたい。

さらに残業代に限らず、管理職に対して業務に見合った賃金を支払っているかについても再考していただきたい。業務量が一気に増えるのに管理職手当がいくばくか増えるだけというのでは、なかなか納得することは難しい。「仕事のやりがいはカネではない」と社長は考えるかもしれないが、社員としてはカネがなければ暮らしていけない。カネがなければやりがいを感じても、転職せざるを得ない。さりとて限られた資金で経営している中小企業にとっては、管理職だからといって賃金をいきなりぐっと増やすことはできないだろう。そこで社長としては、せめて何を達成すれば評価していくかについて説明をしていくべきだろう。評価の指針がなければ、努力しようもないからだ。

■管理職がしっかりしていれば、会社は回る

社長は、とかく管理職を自分の側近であり、阿吽の呼吸でわかりあえると誤解している。管理職といえども、社員の一人だ。きちんと向き合い理解する姿勢を示さなければ、「なぜ辞めていく」ということになる。中間が無くなると組織は一気に崩れてしまう。

管理職がしっかりしているところは、社長が不在でも会社が回る。ぜひ自分がいなくても会社が回るような組織を管理職も含めて作り上げていただきたい。

(島田法律事務所代表弁護士 島田 直行 写真=iStock.com)

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