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なぜ学校は"スマホの怖さ"を教えないのか

プレジデントオンライン / 2019年3月6日 15時15分

閣議後に記者会見する柴山昌彦文部科学相=2月8日、国会内(写真=時事通信フォト)

■文科省と大阪府は「スマホ解禁」に方針転換

いま、スマートフォンの学校への持ち込みが大きな議論になっている。

昨年6月の大阪府北部地震をきっかけに大阪府が持ち込み解禁の方針を打ち出し、4月から解禁に踏み切る。大阪府教育庁が2月18日に公表した指針では、有害情報の閲覧を防ぐためフィルタリングの設定を保護者に求めている。

大阪府以外の一部自治体でも、解禁するためのルール作りの検討を始めるなど解禁に向けた動きが活発化してきた。

文部科学省は10年前、小中学校へ携帯電話やスマホを持ち込むことを原則禁止とする通知を出しているが、柴山昌彦文科相は2月19日の閣議後記者会見で、通知の見直す考えを明らかにした。

一方、新聞はどこも「スマホ解禁」に否定的である。その理由はいくつかある。学力や視力の低下、歩きスマホでの事故、盗難や破損、持てる子と持てない子の格差、友達同士のトラブル……。要するに「子供の成長を害する」という否定的な意見が多い。

■禁止を続けても、隠れて使うだけだ

しかしながら沙鴎一歩は、「スマホ解禁」には大賛成である。持ち込みを禁じるほうが、間違っている。

いまや小学生や中学生の半数以上が、スマホを持つ時代だ。膨大な情報から必要な正しい情報を抜き出して活用する能力が求められる。持ち込み禁止は時代に逆行する。このまま禁止を続ければ、子供たちはスマホの正しい使い方を知らないまま、育つ危険性がある。スマホを隠して学校に持っていき、隠れて使うことにもなる。いやもうすでにそうした事態は起きている。

それゆえスマホを解禁し、小学生のうちから正しい使い方を学校で指導すべきだ。鉄は熱いうちに打てという。歩きスマホやスマホ依存といった危険性や、ルールに従って使うことの重要性について、子供のときに教え込むことが大切だ。

大人になってからでは遅い。駅のホームや路上で「歩きスマホ」をしている人はたくさんいる。なぜだろうか。大人に注意を呼びかけても、「自分は大丈夫だ」という意識が先に働くからだろう。ここは子供を信頼し、学校で使用させてみてはどうだろうか。

■乳幼児をあやすツールとしては使うべきではない

ところで電車の中やレストランで乳幼児にスマホの画面を見せたり、触れさせたりする親を見かけることがある。乳幼児をあやすツールとして使っているのだろうが、これには大反対である。

乳幼児はスマホの映像や音楽に強い関心を示す。1歳を過ぎると、多少いじることもできるようになる。しかし乳幼児がスマホを長時間にわたって見ていると、視力や眼球の動きを阻害するだけでなく、言葉の発達を遅らせてしまう。乳幼児は親や兄弟に話しかけられることで言葉を覚えていく。それがスマホに夢中になると、話しかけても反応しなくなり、その結果、言語をつかさどる脳の機能に影響が出る。

子供への解禁といっても、乳幼児にスマホは大敵であることを自覚してほしい。

■読売は「スマホ依存が一層、深刻にならないか」と反対

新聞の社説はどう書いているか。2月24日付の読売新聞の社説は「学校にスマホ 迅速な解禁の弊害を直視せよ」との見出しを付け、「子供たちのスマートフォン依存が一層、深刻にならないだろうか」と懐疑的に書き出す。読売は学校でのスマホ解禁に否定的なようだ。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/ferrantraite)

続いて「文部科学省が、スマホなど携帯端末の学校への持ち込み解禁を視野に、新指針を策定する」と指摘し、「現在は『小中学校は持ち込み禁止』『高校は校内で使用禁止』が原則だ。解禁されれば、大きな転換となる。柴山文科相は『学校を取り巻く社会環境や児童生徒の状況の変化』を理由に挙げる」と解説する。

さらに読売社説は、発生が登校時間帯に重なり、女子児童が倒れたブロック塀の下敷きになって死亡した大阪北部地震を契機に保護者から持ち込み解禁を求める声が多く出ている状況や、小中学生の多くがスマホや携帯電話を所持している現状を挙げる。

■だからこそ小中学生に付き合い方を教える必要がある

そのうえで読売社説は主張する。

「だが、万一の災害のために、子供たちに毎日、スマホなどを持たせる必要があるのだろうか」

学校にスマホを持ち込むのは、防災のためだけではない。沙鴎一歩が指摘したように学校でスマホの正しい使い方を学ばせるうえでも、持ち込みが必要なのである。そのところを読売社説はどう考えているのか。

読売社説は「授業中の使用や盗難などのトラブルをどう防ぐか。SNSを介したいじめを助長しないのか。懸念は尽きない。携帯端末を持っていない子供への対処も考える必要があるだろう。拙速な解禁は避けて、慎重に検討すべき」とスマホの欠点を並べるが、読売社説自身が「スマホが緊急時に役立つ機能を備えているのは事実だ」と書いているようにスマホの利点は大きい。

要は、スマホは両刃の剣なのである。だからこそ、小中学生にスマホとの付き合い方を教える必要があるのだ。

■「厳格な統一的ルール」で子供を縛る必要はない

さらに読売社説は大阪府の独自指針案の中身を「緊急時の連絡手段としてのみ使用を許可する。登校中や校内ではかばんに入れる。管理は子供が行う」と具体的に示し、次のように指摘する。

「文科省は『様々な懸念、問題にも一定の配慮がされている』と評価するが、にわかに首肯できない。特に問題なのが、具体的運用を現場の判断に委ねたことだ」
「学校ごとに対応に差が生じ、混乱を招く可能性がある。仮に解禁するとしても、厳格な統一的ルールが不可欠である」

なぜ、具体的運用を現場の判断に委ねてはならないのか。学校によって環境も違うし、登下校の仕方や時間など地域によって学童や生徒の生活様式も異なる。

また管理を子供に任せれば、子供は自らを律することを覚える。自分を自分で律することができるようになって初めて大人になれる。

なにも「厳格な統一的ルール」で子供をがんじがらめにしなくともいいと思う。

最後に読売社説は「スマホとの付き合い方について、まずは親と子が向き合って、それぞれの家庭でのルールを決めることが大切だ」と家庭でのルール作りを優先的に求めているが、家庭でそれができにくくなっているからこそ、学校でのスマホ教育が求められるのだ。

■毎日も「副作用の論議が足りない」と否定的

1月11日付の毎日新聞の社説も「副作用の論議が足りない」(見出し)と否定的である。

毎日社説は「大阪府教育委員会は緊急時の連絡用にスマートフォンを学校に持っていくのを認める方針を決めた」と書き、「ただし、小中学校へのスマホ持参は文部科学省が原則禁止とする通知を出している。府教委の決定は独自に『解禁』するものだ」と指摘して主張する。

「このため、スマホの携帯の是非について十分な議論が必要となる」

2月19日には、柴山文部科学相が「スマホ持ち込み禁止」という通知を見直す考えを示すわけだから、毎日社説は実に見通しが甘い。「このため議論が必要になる」との論拠を失ってしまう。

毎日社説も読売社説と同様、スマホのデメリットを強調する。

■よくここまでスマホ批判の言葉が出てくるものだ

「たとえば、学校でのスマホの管理をどうするか。校内での使用は禁止するため学校側で預かることが考えられるが、保管場所の確保や破損、盗難の防止対策が必要だ。日々の回収など先生の負担増にもつながる」
「気がかりなのは、登下校時の利用だ。緊急時の対応が目的なのに、歩きスマホをしたり、友だちとゲームで競い合ったりすれば、本来の目的とはかけ離れていってしまう」
「スマホを持たない子どもが疎外感を味わったり、親がスマホを持たせるのを強要されたと感じたりすることもあるのではないか」

よくここまでスマホ批判の言葉が出てくるものだと感心させられる。

逆に、これだけデメリットがあるのだから小学生のうちにスマホの正しい使い方を授業で教える必要がある。誰からもスマホの使い方を教わっていないから、さまざまな問題を引き起こすのだ。

■新しいものを一方的に否定するべきではない

朝日新聞も大阪府の学校持ち込みの解禁を受け、昨年12月9日付の社説で「スマホと学校 子どもを交えて議論を」との見出しを掲げ、こう訴えている。

「だが、懸念や課題は多い」
「まず、『校内では使わない』をどう実行するかだ。先生が生徒からスマホを預かることが考えられるが、先生の負担増、紛失や盗難、破損に伴う責任のあり方など、難しい問題がある」
「府の方針を受けて、子どもがスマホを持たない親からは、さっそく『持たせた方がよいか』との相談が寄せられているという。所有を強いることにならないよう、配慮が必要だ」

スマホには懐疑的ではあるが、最後の主張はうなずける。

「次々と登場するモノやサービスのメリットを生かしながら、デメリットは抑える。スマホ問題を、そんな意識や姿勢を養う機会としたい」

やはり重要なのは、スマホが両刃の剣であることを子供たちにどう教えるかである。新しいものを一方的に否定したり、懐疑的に見たりするのではなく、正面から受け入れて利点と欠点を判断して子供の教育に生かす。スマホにはこの姿勢で臨みたい。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩 写真=時事通信フォト、iStock.com)

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