アメリカ人がトランプを選んだ納得の理由
プレジデントオンライン / 2019年7月1日 9時15分
■もともと米国は排外主義的な宗教国家
今世紀最大の課題はグローバリズムとナショナリズムのせめぎ合いであり、それを象徴するのが米国のトランプ大統領でしょう。現代の日本人は「米国はグローバリズムと自由主義を国是とする国」と思い込み、反移民と産業保護政策を掲げるトランプ政権の誕生に驚いています。
しかし米国は建国以来ずっと排外主義的でした。国を創ったのは欧州で迫害され、新天地に理想の国家を求めた清教徒。彼らは異教徒の先住民はもちろん、同じキリスト教徒でもカトリックのメキシコ人は認めず排斥するという原理主義者です。もともと米国はそういう排外主義的な宗教国家として生まれたのです。
同じように新大陸を侵略したスペインは、カトリックの布教を名目に入植しましたから、異教徒である先住民を排除するのではなくむしろ融合し、それゆえに中南米ではスペイン系との混血の人が多数派なのです。
ところが米国での異教徒排斥は徹底していました。20ドル紙幣の肖像画になっているアンドリュー・ジャクソン大統領は「先住民強制移住法」によってミシシッピ川以東の先住民を強制的に排除し、白人の開拓農民から熱狂的な支持を受けて民主党を結成しました。
その後に起きた南北戦争で、綿花の輸出のため自由貿易を唱える南部の地主を基盤とする民主党が、保護貿易を求める北部の製造業者を基盤とする共和党に敗北した結果、共和党政権が高関税で自国産業を保護育成し、米国は急速な工業化を果たします。
万年野党に転落した民主党は、工場労働者として流入した欧州からの新しい移民たちの党として復活。ウイルソン大統領時代に民主党は金融資本家に接近し、米国のグローバル化を進める主体になりました。これに対して共和党は移民受け入れに反対する中西部の農民票を集め、「中国人排斥法」などを成立させます。
■どの国も「元の姿に戻る」傾向はある
私たちに身近な米国とは、「世界の警察官」として海外に同盟国や軍事拠点を配置しグローバリズムや自由貿易を訴える米国です。しかし、それだけが米国の「顔」ではありません。米国史を振り返れば、現在のトランプ政権は建国以来の本来の米国の姿に先祖返りしただけなのです。
米国に限らず、どの国も「元の姿に戻る」傾向はあります。ロシアの原点は帝政時代にあり、だからプーチン大統領のような強権的指導者が求められるのだし、英国は伝統的に島国であることを利して欧州大陸の紛争から距離を置いてきました。
国民投票でEU離脱派が勝ったことは世界を驚かせましたが、歴史を振り返ればブレグジットでヨーロッパと袂を分かつことは、英国にとっては「光栄ある孤立」への回帰を意味するのかもしれません。
品格を上げるポイント:グローバリズムは「顔」の1つにすぎない
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駿台予備学校世界史科講師
東京都出身。東大・一橋大など難関国公立大クラスを担当する。YouTube「もぎせかチャンネル」でのニュース解説も人気。『世界史で学べ! 地政学』ほか著書多数。
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(駿台予備学校世界史科講師 茂木 誠 構成=久保田正志 撮影=永井 浩 写真=AP/AFLO)
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