欧米で"印象派が好き"はちょっとダメな訳

プレジデントオンライン / 2019年7月10日 9時15分

フランス人にはニコラ・プッサンが好きと言おう●フランスで大きな評価を得ている国民的画家ニコラ・プッサン(1594~1665)の『自画像』。(AFLO=写真)

▼好きな絵画を聞かれた

■「脱げた靴」は何を表すのか

欧米のビジネスパーソンと対等に渡り合うために一番お勧めなのは、相手の国を代表する画家を知っておくこと。なかでも重要なのは、18世紀以前に活躍した「オールド・マスターズ」。例えばオランダ人ならレンブラント・ファン・レイン、フランス人だったらニコラ・プッサン、イタリア人ならラファエロ・サンティ、ドイツ人だったらアルブレヒト・デューラーなど。このあたりの名前を口にすれば間違いありません。

海外出張に行くなら、その街の美術館情報を事前に調べておくのがマスト。例えば、ロンドンのテート・ブリテンという国立美術館は、J・M・W・ターナーの作品が充実していることで有名です。出張先で「ロンドンに来たから、テートでターナーを堪能したい」と言えば、「おっ、この日本人は違うな」と思われます。

なお、19世紀前半までの西洋絵画には数多くの「お約束」があることを知っておくといいでしょう。例えば、水差しが描かれていれば、それは純潔の象徴です。脱げた靴は性的に奔放なことを表しています。西洋絵画とは「観る」ものではなく「読む」ものなんですね。

欧米で高い教育を受けた人にとって、西洋美術史の知識は「ユニバーサルランゲージ(世界共通語)」。だから、いくら仕事ができても美術史など人文学的教養がないと、単なる「取引先」にはなれても「ビジネスパートナー」とは見なされません。初めは難解に感じるかもしれませんが、絵画の「お約束」は数に限りがありますから、1度マスターすれば一生モノの財産になります。

オールド・マスターズを押さえておけば、自分の「格」を上げることができます。知人の日本人女性の話ですが、パリの某高級ホテルで、初めはコンシェルジュから軽くあしらわれたそうです。ところが、ルーブル美術館で買ったプッサンの画集を手にロビーを通った瞬間、コンシェルジュの態度が豹変したそうです。

一方で気をつけたいのが19世紀後半の印象派です。日本人にはファンが多いものの、エリート教育を受けた欧米人からすると、印象派はちょっと俗っぽいイメージ。だから「印象派が好き」なんて言ったら、「その程度の人か」と思われてしまいます。しかも印象派を語るのは実は難しい。モネやルノワール、ドガにしても、それぞれ表現しようとしているものが違いますから。

品格を上げるポイント:西洋絵画には「お約束」が描かれている

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木村泰司
西洋美術史家
1966年生まれ。米国カリフォルニア大学バークレー校で美術史学士号を修めた後、ロンドン・サザビーズの美術教養講座にて「WORK OF ART」修了。近著に『名画の読み方』。

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(西洋美術史家 木村 泰司 構成=小島和子 撮影=榊 智朗 写真=AFLO)

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