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政治家ではなく詩人「進次郎リスク」が始まった

プレジデントオンライン / 2019年9月24日 17時15分

災害廃棄物の仮置き場を視察後に取材に応じる小泉進次郎環境相(右から2人目)と、千葉県南房総市の石井裕市長(左)=2019年9月16日、同市役所 - 写真=時事通信フォト

■セールスポイントである「語り」に批判が…

9月11日に、メンバーが一新された安倍内閣は、「滞貨一掃内閣」との批判も漏れるほどの派閥順送り人事だった。にもかかわらず、内閣の支持は安定している。その下支えとなっているのは小泉進次郎環境相の初入閣だろう。

ただ、その小泉氏自身の「リスク」が指摘され始めた。それも、彼のセールスポイントである「語り」に批判が集まり始めたのだという。いったいどういうことなのか。

■「汚染土をどうするのか」「私は30年後も生きている」

9月17日のことだ。福島県を訪問した小泉氏は記者団から、福島第一原発事故の影響で出た汚染土の最終処分場について質問を受けた。これに対する小泉氏の回答が、これだ。

「30年後の自分は何歳か。(東日本大震災の)発災直後から考えていた。その30年後の約束を守れるかどうかの節目を見届けることができる政治家だと思う」

いつものように、文節ごとに「ため」をつくった語り口から繰り出されるセリフは、もっともらしく耳に届くが、実は何を言っているのか分からない。質問者は最終処分場を作るという政府の約束を果たせるか、閣僚としての決意を聞いているのだが、小泉氏は、自分が約束を守るかどうかは答えず、結論が出ることまで生きていると答えているにすぎないのだ。

言うまでもなく質問した記者は小泉氏に対し、閣僚として約束を守る決意をただそうとした。それに対し、小泉氏は「30年後も生きている」という趣旨の発言にとどめた。現在38歳の小泉氏は、恐らく30年後も生きているだろうが、記者は「そんなことは知っている」と突っ込みを入れたくなったことだろう。

■質問の趣旨をすり替える「ご飯論法」の使い手に

安倍晋三首相以下、安倍内閣の閣僚たちは「ご飯論法」を駆使すると言われる。

ご飯論法とは「今日、朝ご飯食べた?」と聞かれた時に、朝食にパンを食べた人物が「今朝はご飯を食べていない」と答える論法。質問者はコメでもパンでもいいから朝に食事を取ったのかを聞いているのに、あえて質問の趣旨をすり替えて答えるのだ。

ご飯論法については「安倍首相のご飯論法をパクる片山氏の口上」で詳しく解説しているので参考にしていただきたい。小泉氏の「30年後」問答も、立派なご飯論法ではないか。

入閣後の小泉氏は、とにかく発言が慎重になっている。質問をはぐらかしたり、当たり前のことや、根拠のない決意表明を繰り返すことが、あまりにも多い。もちろん、失言や問題行動をする他の閣僚に比べれば危機管理ができていると評価することもできよう。しかし、歯切れのいい発言で人気を集めていた小泉氏だけに、物足りない。

■NYでの「セクシー発言」はロイター通信が全世界に配信

ツイッターなどでは、小泉氏の発言を「ポエム」「まるで大喜利だ」などと冷やかす指摘が続き、いかにも小泉氏が発言しそうな、意味不明のコメントを書き込む人もいる。

9月21日のTBS系「サンデーモーニング」では、司会の関口宏氏が「30年後」発言について「そういうことを聞いているんじゃないですよ」とあきれ顔で語ったことも話題を呼んだ。

22日には米ニューヨークでの会見で、気候変動への取り組みについて「楽しく、クールで、セクシーに違いない」と英語で語った。この発言はロイター通信が配信。「セクシー発言」は世界を駆け巡った。日本でも批判的トーンで報道されている。

■「環境省の所管外」で逃げるのは官僚の論理

小泉氏の発言では、もうひとつ気になる点がある。原発事故の汚染水の処理対策について見解を求められると、「環境省の所管外」として逃げていることだ。確かに汚染水処理の問題は所管としては経産省ではある。

しかし、それを理由に、自身の考えを語るのを控えるのであれば、それは役所縦割り行政から抜け出せない官僚答弁と同じだ。

小泉氏は安倍内閣の閣議を構成する国務大臣の1人である。国政全般について発言を求められれば政治家として責任を持った発言をすべきではないか。

■発言が安全運転になれば、好感度はしぼんでしまう

安倍内閣にあって小泉氏の注目度は圧倒的に高い。内閣改造後に行われた報道各社が行った世論調査でも小泉氏が入閣したことを高く評価する意見が多数を占めた。

しかし、小泉氏の人気の源泉は、若さ、スマートさに加え、分かりやすく正論を吐くところだった。時には、安倍氏に対する異論も語る、そのスタンスが安倍政権に批判的な層からも好感をもたれていた。

その小泉氏の発言が、安全運転になってしまったら、好感度はしぼんでしまう。SNSでの、からかわれ方を見ると、すでに小泉氏の人気は下降線をたどり始めたとみてもいい。

そもそも自民党総裁選では、石破茂元幹事長を支援するなど安倍氏に距離を置いてきた小泉氏が入閣した時から、「安倍氏にポストをちらつかされて取り込まれた」という批判がついて回る。

■小泉氏の発信力があだとなって、安倍政権が失速か

「小泉リスク」は安倍氏にも、つながりかねない。何しろ、小泉氏は政権の広告塔なのだ。

その小泉氏が、国会などで発言する度に、詩人が紡ぎ出す叙情詩の様な答弁を繰り返し、テレビなどでおもしろおかしく取り上げられるようになると、政権浮揚どころか支持低下につながりかねない。

人間は、絶頂期に、得意分野で失敗して失速することがよくある。誰もが高く評価していた小泉氏の発信力があだとなって、安倍政権が失速していくことも考えなければならない。「上手の手から水が漏れる」では済まされないのだ。

(プレジデントオンライン編集部)

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