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文在寅は本心から「対日友好」に舵を切るのか

プレジデントオンライン / 2019年10月28日 18時15分

韓国の李洛淵首相(左)と握手する安倍晋三首相=2019年10月24日、首相官邸 - 写真=時事通信フォト

■日本叩きの反日政策に行き詰まり、支持率が低下

「反日キャンペーン」を推し進めてきた韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権が、対日関係の改善を模索しはじめている。日本叩(たた)きの反日政策に行き詰まり、支持率が低下。「このままでは来年春の総選挙を乗り切れない」と判断したのだろう。

10月24日、天皇陛下が即位を宣言する「即位礼正殿の儀」に参列した韓国の李洛淵(イ・ナギョン)首相は、安倍晋三首相と会談し、文大統領の「親書」を手渡した。

親書には「近く2人で会って、未来志向の両国関係に向けて議論したい」と早期の日韓首脳会談を求める意向が示されていた。韓国側は11月に開かれる東アジア首脳会議(EAS)などの国際会議に合わせて日韓首脳会談を実現したいようである。

日本にとって大きなチャンスである。

文在寅政権はかなり弱っている。政権内部は火の車なのだろう。日本は文大統領の足元をしっかりと見据えて、日韓関係を正常化すべきだ。このチャンスをうまく生かすのが、優れた外交だろう。ここで韓国にしっかりと貸しを作っておくべきである。

■韓国に「貸し」を作ることを優先したほうがいい

安倍首相は24日の李首相との会談で、元徴用工への賠償を日本企業に命じた昨年10月の韓国大法院(最高裁)判決について、「国際法の日韓請求権・経済協力協定に明確に違反し、日韓関係の法的基盤を根本から崩す。国と国との約束を順守することにより、日韓関係を健全な関係に戻していくきっかけを作ってもらいたい」と呼びかけた。

この安倍首相の呼びかけは正論である。しかし外交では正論を主張すればするほどこじれることもある。そこが外交の難しいところだ。ここは正論を強く主張せずに、韓国の求める日韓首脳会談に応じ、貸しを作ることを優先したほうがいいように思う。

いま日韓関係を正常化することができれば、日本は韓国に対してかなり優位になる。ラグビーワールドカップでの初のベスト8進出、天皇陛下の即位、そして来夏の東京オリンピック・パラリンピック開催と、国際社会が日本を注目しているときだからである。

■「反日種族主義」を使う文政権はやはり歪んでいる

心配なのが、韓国の「反日種族主義」だ。

これは「韓国人は反日思想を掲げなければ生きていけない種族だ」というもので、韓国で話題になっている同名の書籍が指摘していることだ。その内容は10月17日の記事「『反日の元凶』文在寅を見捨てはじめた韓国世論」で紹介した。筆者は韓国近代経済史専攻の元大学教授らで、10万部を超えるベストセラーとなっている。日本語版は文藝春秋社から「日韓危機の根源」とのサブタイトルが付いて11月14日に発売予定だ。

文在寅大統領はこの「反日種族主義」を使って政権維持を図ってきた。沙鴎一歩から見れば、かなり歪んだ政権である。そんな文政権が本気で対日友好に舵を切ろうとしているのか、それともうわべだけなのか、慎重に見極める必要がある。

しかも文氏は検察に対し、深い恨みを持ち、それを検察改革の原動力にしている。文氏は「歪んだ正義感」の持ち主だ。このあたりのことは9月17日の記事「文在寅氏の『歪んだ正義感』に振り回される日韓」に書いた。

■「日本側にも問題がある」と言いたい韓国の本音

10月24日の安倍首相との会談で韓国の李首相は「両国が知恵を集めて難関を克服していけると信じている」と語った。「日本側にも問題がある」と言いたいのだろう。この発言も気になる。

文大統領の本音がどこにあるのか。そこを見極め十分に理解したうえで日韓首脳会談の求めに応じることが肝要だろう。

日韓関係悪化のきっけとなったのが、いわゆる徴用工訴訟の問題だ。第2次大戦中に日本企業で強制労働させられたと主張する韓国人元労働者と遺族が日本企業に賠償を求めたもので、日本政府と韓国政府の認識は大きく違う。10月24日の日韓会談でも、その違いが浮き彫りになった。

■元徴用工への賠償命令を放置した文在寅氏

これまでの日韓対立の経緯を振り返っておこう。

昨年10月30日、韓国大法院が元徴用工への賠償を新日鉄住金(現・日本製鉄)に命じた判決を確定させた。

日本側の主張は「賠償問題は『完全かつ最終的に解決された』と確認した日韓請求権・経済協力協定に違反する。韓国が国内の問題として対処すべきだ」である。

これに対し、韓国側は「請求権協定は順守するが、協定の解釈に違いがある。三権分立の基本原則により、行政府は司法府の判断を尊重しなければならない」と主張した。

韓国は文大統領の政治的判断・決断によって大法院の判決を覆すことは可能なはずである。それを行おうとはしない文氏に非がある。沙鴎一歩はこれまでそう主張して書いてきた。

日本が輸出手続き上の優遇国(ホワイト国)から韓国を除外することを閣議決定したのは今年8月2日だった。それ以降、文政権は国内外で激しく日本批判、反日キャンペーンを展開した。

8月22日には対抗措置として日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄まで決めた。同協定は11月23日に失効する。失効した場合、北朝鮮がミサイルを打ち上げても日本は直接韓国から情報を得ることができなくなる。

■文氏の支持率は過去最低の39%にまで落ち込んだ

文氏の支持率は下落を続けている。10月18日には韓国ギャラップの世論調査で、「39%」と初めて30%台まで落ち込んだ。来年4月の総選挙をなんとか乗り越えたい文政権にとっては大きな痛手である。

支持率の低下の原因は3つある。

1つが韓国経済の低迷。

2つ目が北朝鮮への対応。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は文大統領を相手にしなくなった。アメリカのトランプ大統領をおさえておけば、それで十分だと判断したのだろう。南北統一など夢のまた夢である。

3つ目が10月14日に法相を辞任した曺国(チョ・グク)氏の疑惑。韓国の検察は24日、曺氏の妻をファンドの不正な運用や娘の大学・大学院への不正入学などに絡む計11の容疑で逮捕した。検察が曺氏自身に対する事情聴取に踏み切る可能性は高い。

曺氏を法相に任命した文大統領に対する韓国国民の怒りは爆発寸前だ。こうした事情と背景については、10月17日の記事「『反日の元凶』文在寅を見捨てはじめた韓国世論」に書いた。

■「責任は韓国政府にこそある」と一方的に繰り返す読売社説

読売新聞の社説(10月25日付)は冒頭から次のように主張する。

「韓国政府が、元徴用工の問題で対応策を取る。それが日韓関係を正常化する第一歩である」

安倍政権を擁護することが大好きな読売社説である。見出しも「元徴用工問題 文政権は国家間の約束を守れ」と韓国に強く是正を求めている。ここは建前でも構わないから、韓国の立場を考慮する姿勢を見せる必要がある。それがぎくしゃくしている日本と韓国にとって有効な潤滑油になるからだ。

読売社説は続けて書く。

「文在寅大統領は李氏を通じて安倍首相に親書を送った。『懸案が早期に解決するよう努力しよう』という趣旨が書かれていた」
「日本企業が不利益を被らないよう、善後策を講じる責任は韓国政府にこそある。日本にも譲歩を求めるかのような文政権の姿勢は受け入れられない」

「責任は韓国政府にこそある」「文政権の姿勢は受け入れられない」と読売社説の主張は一方的である。この社説を書いた論説委員は、「相手の国があってこそ」という外交の基本をどう考えているのだろうか。

■「放置しない、行動こそ」という意味不明な朝日社説

一方の朝日新聞の社説(10月25日付)はどう書いているのか。見出しに目をやると、「日韓首相会談 放置しない、行動こそ」とある。奇をてらったのだろうか。よく分からない見出しである。

書き出しは「日本と韓国の冷え切った関係をこのまま放置できない――。その危機感を両首相は認めあったという。それが本気ならば、行動で示すべきだ」である。これを読んで初めて見出しの意味が理解できる。社説としてまずい見出しの立て方である。

朝日社説は書く。

「安倍氏と李洛淵氏がきのう、東京で会談した。『即位礼正殿の儀』にあわせて来日した李氏は、文在寅大統領を支える政権ナンバー2である」
「首脳級の会談自体が久しぶりのことだ。貿易、観光、市民交流など広範に悪影響がでている今に至るまで、事態をこじらせた両政権の責任は重い」
「今回の会談でも、両首相の抽象的なことば以外の成果は伝えられていない。互いに相手の譲歩を待つだけなら、放置と同じことだと悟るべきだろう」

「両政権の責任は重い」「放置と同じことだ」という朝日社説の主張は、喧嘩(けんか)両成敗といったところだろう。

■読み手が思わず膝を叩く論を展開してほしい

読売社説は韓国を一方的に攻めるだけだったが、そうでないとすれば朝日新聞として具体的にどう考え、何をすべきだと言いたいのかを書く必要があるだろう。

社説は一人で書くわけではない。毎日、論説委員たちが何人も集まり、時間をかけて議論を重ねる。沙鴎一歩が一人で考えて書くのとはわけが違う。読み手が思わず膝を打つような論を展開してほしい。それでこそ社説だろう。

最後に朝日社説はこう訴える。

「来月初めには、タイで日韓両首脳の出席が予定される国際会議がある。互いを傷つけあう不毛な諍(いさか)いに終止符を打つため、政治の強い意志を示すときだ。日韓首脳が1年以上も会談していないのは異常である」
「安倍氏と文氏は早急に直接向きあい、両国民の利益を探る理性を見せてもらいたい。厳しい時間が長引くほど、関係のもつれをほぐすのは難しくなる」

朝日社説の書く「政治の強い意志」や「両国民の利益を探る理性」とは何なのか。このあたりも具体的に示してほしかった。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩)

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