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「お客さま最優先」の人が、自分の人生で失敗してしまう納得の理由

プレジデントオンライン / 2020年1月22日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kuppa_rock

ビジネスで成功するには何が必要なのか。日本IBMをリストラされた後、複数の会社を立ち上げた勝屋久氏は、「他人に合わせてばかりいると、AIに取って代わられる存在になる。自分がワクワクすることを純粋に追い求めたほうがいい」という——。

※本稿は、勝屋久『人生の目的の見つけ方 自分と真剣に向き合って学んだ「倖せの法則」』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■ビジネスパーソンに当たり前の「他人軸」

他人軸とは、「社会といかにつながりをつくるか」「社会に対して何ができるか」といった、心や思いを除いた具体的な行動や表現(Doing)のことである。個人の程度の差はあるが、努力すればある程度できる部分だ。

僕の体験で言えば、日本IBMのときに行っていた具体的な営業の仕事の一つひとつのこと。技術や手法が重視され、目に見えてわかりやすい世界だ。「お客様にどう価値を伝えるか?」「上司にどう伝えるか?」「どうしたら信頼してもらえるか?」などという視点と、実際の行動である。

事業に関わる方であれば、対象となるお客様や市場に対して、「顧客ニーズは何か?」「どうわかりやすく伝えるか?」「どう歓んでもらうか?」「自分たちをどう信頼してもらうか?」を考え、戦略を立案し、具体的な戦術を実行すると思う。まさにマーケティングやデザイン思考は、策を支える手法である。

要は、「他人軸」は他者に合わせる視点や機能であり、この他人軸がないと具現化できないので大事な存在と言える。

■大切だけど多くの人が見失う「自分軸」

それに対して、「自分軸」は、個々に違ったピュアな欲求、情熱、興味、好奇心、ワクワクなどが根っこにあり、その人が大切にしている生き方や倖せ感、豊かさなど、まさに在り方(Being)のこと。

そのうえで、事業を行うリーダーには、つくり出したい世界観やビジョンがある。もう少しわかりやすく言うと、「誰のために、何のために事業を起こすのか?」「なぜ、その事業をするのか?」「結果としてどんな(リーダーが)ワクワクする豊かな世界になるのか?」ということである。「自分軸」は、目に見えなくて、自分の心と連動して感じる世界である。

イラスト=勝屋久
自分軸と他人軸 - イラスト=勝屋久

ひと昔前の経済右肩上がりの時代なら、強力な「他人軸」があればその時代の成功者になれたかもしれない。長いものに巻かれることで出世できたかもしれない。けれど、今という時代では、「自分軸」と「他人軸」との掛け合わせがないと、いい流れには乗れない。なぜなら、「他人軸」には、AI(人工知能)やロボットでも置き換え可能な部分が広がっているからだ。

■これまでのプレゼンメソッドはもう通用しない

僕はスタートアップのピッチコンテスト(短い時間で自社の製品やサービスを紹介するコンテスト)やビジネスコンテストの審査員として、多くの経営者を見てきているが、自分の純粋な想いや情熱ではなく、注目されているウェブメディアに出る流行(はや)りの専門用語を並べて、典型的なプレゼンメソッドで話す経営者をたまに見かける。

あるピッチコンテストで起業家のプレゼンを聞いていたときの話だ。そのときの話に僕はどうにも違和感を覚えて、「それ、本当にやりたいことなの?」と尋ねると、難しそうなことを機械のように論理的に説明し出した。「僕は説明ではなく、やりたいことなのかどうかを聞きたいの」と伝えると、本人はザワザワして、少し感情が出始め、「昔、こんな体験をして、悲しいと思って、どうにかしたいと思って……」と語り始めたのだ。

僕にはだんだんその人の存在がはっきりと見えてきて、「いいじゃない! その話を聞けてうれしいよ」と伝えると、彼の顔がみるみるうちに笑顔に変わり始めた。横軸である流行りの専門用語を巧みに使うだけでは、縦軸であるその人の存在が霞(かす)んで見えてこない。

大切なのは「純粋な欲求」「好奇心」「興味」といった自分の根っこと、自分の世界観、そして、手がけるビジネスのビジョン、つまりは自分軸を育てることだと思う。そして、自分軸を育てながら社会と関わることで、「集団圧力」「SNSの情報」「他者の存在」といった他人軸に翻弄(ほんろう)されることは少なくなる。他人軸に振り回されず、意識的に、そのときいいと思う選択ができるようになる。

■数字に縛られると人は生きていけない

今度は、別の視点で、人を木に例えて話を進めてみたい。幹や枝や葉の部分が「行動(Doing)」で、花や実を「行動した結果や成果(Have)」と例えている。

イラスト=勝屋久
木に例える - イラスト=勝屋久

社会では長年、成果主義が定着しているから、数字に縛られて生きる人が多いのが当たり前になっている。僕も会社員時代はそうだった。目標を達成したら評価される。評価されたいから、次の目標値を達成するように頑張る。頑張って達成して、また評価される。評価されたいから、また次の目標値を達成するように頑張る。この繰り返しだ。

限界を超えて頑張りすぎると、だんだんと疲弊して、やる気がなくなる。それは、このイラストの右上のように、木も根もやせ細り、枯れてしまいそうになる状態だ。心からやりたい事業をしている創業社長でも、強靭(きょうじん)なスーパー会社員のような人の場合でも、重い病気になったり、あるときは死に至ることもあるだろう。それは、木がバキッと折れてしまうような状態だ。

■自分を生きるには許してあげること

木の土から上の部分は自分の外側の世界、つまりDoing⇄Haveのように成果や結果がある、目に見える世界である。一方、地上からは見えない根の部分がその人の人間的な器、すなわち「在り方(Being)」を表している。この根の部分がとても大切なのである。でも、大切だからこそ、普段、目にすることができない。

この根を育てるには、「観念/思い込み」を外すことだろう。それに、僕が自分の存在を許したことのように、「許し」は肥やしになる。

また、お金、時間、人、環境などを理由にして、自分に制限をかけていることを「許可」することも大切である。小さいことからでもいいので、少しずつ自分の欲求を叶えると制限の枠が広がり、自由になり、創造力も高まるだろう。

■生きる力は感情に素直になることで生まれる

最後に「癒し」である。つらいとき、悲しいとき、そして寂しいとき、自分のために泣いてあげる、怒ってあげる。普段の生活では抑えている感情を解放してあげることは、とても効果的だと思う。断捨離もそうだが、まず捨てる。そうしたら自分に必要なものが入ってくる。

勝屋久『人生の目的の見つけ方 自分と真剣に向き合って学んだ「倖せの法則」』(KADOKAWA)

こういった「許し/許可」「観念や思い込みが外れる」「癒し」が栄養分になり、根が広がった分だけ強く、たくましくなる。この根っこが受容性(人の器とか、自分を生きる力)なのである。屋久島の杉の木のように、樹齢の長い大木は、枝葉を広げている分だけ根を張っているそうだ。

そうなるためには、自分に栄養となる時間を注ぐことだ。そうしたら、結果として大木の下で誰かを休ませられるかもしれないし、たくさんの実がなり、豊かさの循環を生み出し、たくさんの人と感情や思いを分かち合うことができるのではないだろうか。

これが、自分の内側と外側との「調和と統合」の状態であり、まさに自分とつながり、無限の力がみなぎってくるのだ。

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勝屋 久(かつや・ひさし)
アカツキ社外取締役
マクアケ社外取締役、画家。1962年、東京都生まれ。上智大学理工学部数学科卒業後、日本IBMにて25年間勤務。2000 年、IBM Venture Capital Groupパートナー日本代表、経済産業省IPA未踏IT人材発掘・育成事業プロジェクトマネージャーなどを経て、2010 年8月にリストラを期に独立。生き方そのものを職業として夫婦で活動中。2014年から本格的に画家としても活動開始。

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(アカツキ社外取締役 勝屋 久)

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