コロナ休校中でも「学校みたいな感じ」がでるスマホ授業のコツ
プレジデントオンライン / 2020年3月12日 9時15分
■東大生が、休校中の生徒のために立ち上がった
ここまでの事態は予想していませんでした。コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、全国の小学校・中学校・高校が休校になり、多くの生徒が早めの春休みを迎えることになりました。
この「コロナ休校」に対応して、さまざまな企業・団体が立ち上がりました。『コロコロコミック』と『週刊少年ジャンプ』はネット上でバックナンバーの無料公開を行い、角川ドワンゴ学園のN高等学校では勉強アプリ「N予備校」を無料配布しました。家にいても、生徒たちが退屈せず、勉強もできるように、と多くの人が動いたのです。
そんな中で僕たち東大生も「自分たちにできることをしよう」と立ち上がりました。「本来なら授業のある時間帯に、生配信で授業をする」という活動を始めたのです。僕たちはこれを「スマホ学園」と名付けました。
対象は小学校高学年から高校生まで。僕をはじめ、10人ほどの東大生が得意科目を平日10時~15時(ただし12時~13時は昼休憩)の計4時間、授業をしています。3月いっぱい毎日授業をする予定です。
■動画授業のデメリットとは
この活動の中で、僕は「教育の未来」が見えてきたと感じています。
対面授業と動画授業では、どのような違いがあると思われるでしょうか。3月10日にプレジデントオンラインで配信された「東大生が『勉強は参考書より動画がいい』と断言する3つの理由」では、動画授業の利点について「いつでも好きな時間に受けられる」「自分に合ったスピードで進められる」「わからない部分だけを見られる」と指摘しました。
ただしデメリットもあります。それは、双方向性の乏しさです。対面授業では、手を挙げて質問したり、当てられた時に回答したりと、さまざまな形で生徒からのアウトプットを引き出せます。しかし動画授業ではスマホを見るだけで済んでしまいます。
■生配信をしてみてわかったこと
「授業を聞く」は英語で「take a class」と言います。「listen」でも「hear」でもなく、「take」。これは、「取る」という意味の英単語です。つまり授業とは聞くだけではなく、自分から能動的に「取りに行く姿勢」が必要なのです。
いま話題の「アクティブラーニング」はこの考え方によるものです。「アクティブな学び」「双方向性のある授業」という点では動画授業は難しいという考え方もあります。
しかし今回、生配信で授業をしてみてわかったのは、動画授業でも生配信であれば双方向性を担保できるということです。僕らは毎回、一度の授業の中で10回程度、問題を出します。そして「コメント欄で回答を教えてください!」と宣言します。そうすると、多くの生徒がクイズ感覚で答えてくれます。
■「学級委員」も現れた
例えば、こんな問題を出しました。
答え:空
「1」「1」「2」「9」
(例:1×9-1×2=7、のように、+−×÷を自由に使って10を作る)
A 「1×9+2-1」
このような問題を出題すると、コメント欄では「だれが一番早く答えられるか」というゲームが始まります。そして1番になった人のコメントとユーザーネームを読み上げると、その人が「やった!」と喜びのコメントを打ち、それを見ている人が「おめでとう!」「自分も惜しかった!」とさまざまな反応を返してくれます。
また、答えが複数ある問題を出すと、自分だけでなく、ほかの生徒の回答も見られるので、「あっ、そんな回答もあるんだ!」と他者の考えを共有できるようになったのです。
このように、収録済みの動画とは異なり、生配信であればコメントという形でアウトプットを誘発できるのです。
また、驚いたことに、このスマホ学園には本物の学校のような構図もあらわれました。
運営開始から2日目のこと。2日続けて来てくれた生徒の一人が、他の人の少しふざけたコメントやネガティブな発言に対して「そういうのは良くないよ」「ふざけてないで、ちゃんと聞こうよ」と発言したのです。そしてそれをほかの生徒が、「あっ、学級委員だ!」とはやし立てました。
■コロナを新たな学びの契機にしよう
そして次の授業までの空き時間には、「あっ、○○さんだー」とか「みんなお昼何食べた?」と、リアルの学校のような盛り上がりを見せるようになったのです。
僕らは何も特別なことはしていません。ただ、コメント欄を読み上げることでコミュニティの形成を後押ししただけ。それだけで、このような盛り上がりが見られるようになったのです。
このようなコメント欄での盛り上がりを見ていると、ネット上でのコミュニケーションに対し、今のスマホ世代がまったく抵抗感をもっていないことがわかります。このことから、僕はネット上でも学校と同じようなコミュニティを形成することは十分に可能だと感じました。
学びの形態は非常に多様になっています。
コロナウイルスの休校で、僕の受け持つ生徒の多くが「今まで活用したことのない勉強」に足を踏み入れています。休校で学校に行けないからこそ、動画やスマホアプリ、生配信授業などの新しい学びに挑戦しているのです。きっとその体験は、コロナウイルスが終息した後も持続することでしょう。
臨時休校を「勉強ができない時期」として捉えるのではなく、多くの生徒がこうした「もう一歩踏み超えた勉強」の契機にしてほしいと思います。
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東京大学4年生
1996年生まれ。偏差値35の無名校から東大を目指すものの、2年連続で不合格に。二浪中、独自のスマホ勉強術を駆使して東大合格を果たす。自身のノウハウを全国の高校生に教える傍ら、人気漫画『ドラゴン桜2』(講談社)に情報提供を行う「ドラゴン桜2 東大生チーム『東龍門』」のプロジェクトリーダーも務める。『「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく東大読書』など(東洋経済新報社)など著書多数。
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(東京大学4年生 西岡 壱誠)
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