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コロナ不安で脳がおかしくなるとどうなるのか

プレジデントオンライン / 2020年4月5日 11時15分

新型コロナウイルス感染拡大の象徴となってしまったダイヤモンド・プリンセス号。市中感染が広がる恐れのある今、試されているのは私たちの気の持ちようだ。 - 毎日新聞社/アフロ=写真

■コロナ危機を好機に変える「楽観力」

新型コロナウイルスの感染が広がっている。大変な危機ではあるが、リスク対応の課題を脳の働きから見ると、それは危機であると同時に学習のチャンスであるとも言える。

今回のような事態があると、どのようなことが起こりうるのかということには不確実性がたくさんある。ある程度確実に予想できることもあれば、どうなるかわからないこともある。

不確実性を前提として、起こりうるさまざまな出来事に対して準備をしておくことが、緊急時対応計画(コンティンジェンシープラン)である。

いざというときの人員の配置計画、物資の輸送計画、予算措置、一人ひとりの役割分担、行動計画など、いろいろとシミュレーションして準備しておくことで、いざというときの安心安全につながっていく。

あらゆる可能性を網羅する計画を立て、準備をしておくこと、また、データや知見に基づいてさまざまな予想を行うことは、リスクの対策になるだけでなく、ビジネスの局面でも役に立つ。

例えば、市場の動向に応じて、商品やサービスの生産、供給の計画を立てたり、その際の人的資源の準備、展開を考えたりするような場合と、緊急時対応計画とは、脳の使い方が基本的に同じである。

■「正」の局面における脳の使い方にもつながっていく

新型コロナウイルスへの対応という、「負」の影響を避けるための脳のエクササイズは、その本質を見抜きさえすれば、転じて、より積極的にビジネスを展開し、生き方を創造していく、そのような「正」の局面における脳の使い方にもつながっていくのである。

十分な対応策を検討して準備しておくことは、心の平穏や前向きな気持ちをつくるうえでも役に立つ。

未知のリスクに直面したときに大切なのは、楽観的な見方を失わないことである。必要な対策を打つ一方で、いたずらに不安になったり、恐れたりすることがないようにする。そうしないと、脳がうまく働いてくれない。

脳は、さまざまな内分泌系や神経系を通して体のコンディションを整えたり、自分を治癒したりする能力を持つ。そのような働きは、不安に感じたり、ストレスを受けたりしているとうまく機能しなくなってしまう。

ブドウ糖のかたまりを薬だと言って与えると、脳がその気になって本当に効いてしまう「プラシーボ(偽薬)」の事例でもわかるように、脳は前向きの気持ちになったときにその自己調整能力を最大限に発揮できる。

考えられるいろいろな事態に備えて準備をすると安心につながり、前向きの気持ちを持つことができる。危機管理の鉄則は、最悪の事態を想定して準備する一方で、最善の結果になると楽観的な気持ちを持つこと。この発想は、危機対応だけでなく、ビジネス全般の現場で役立つことは言うまでもない。

ところで、サッカー、野球、大相撲などのスポーツや、旅行、イベントなどにも影響が出そうな状況。予定していたスケジュールがぽっかり空いてしまったという人もいるかもしれない。

そんなときは、「創造的休暇」の考え方も取り入れたい。アイザック・ニュートンが、当時流行していたペストを逃れての休暇中に、「万有引力」の発見やさまざまな天才的創造をしたという故事のように、空いた時間をうまく使えばクリエイティブになれる。

新型ウイルスへの対応は大変だが、ポジティブな発想にもつなげたいものである。

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茂木 健一郎(もぎ・けんいちろう)
脳科学者
1962年生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学院理学系研究科修了。『脳と仮想』(新潮社)で第4回小林秀雄賞受賞。『幸せとは、気づくことである』(プレジデント社)など著書多数。

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(脳科学者 茂木 健一郎)

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