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鳥貴族が「おかわり自由のキャベツ盛」を提供している恐るべき理由

プレジデントオンライン / 2020年4月2日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ma-no

儲かっている飲食店は、さまざまな鉄則を守っている。飲食店特化型コンサルタント・須田光彦氏は「鳥貴族など人気のある居酒屋は、おかわり自由のキャベツ盛を出すことが多い。これはお酒の注文を増やすための施策で、とても効果がある」という――。

■客寄せパンダ的メニューは原価率が4~6割かけるケースも

儲かる飲食店を立ち上げようとして、メニューを作るときには「集客商品」と「利益獲得商品」の2つを考える必要があります。

集客商品とは、誰でも名前を見聞きした瞬間に、味をイメージできる料理です。集客商品は、ほかのお店と比べて圧倒的に価値が高い(たとえば、値段の割においしい、ボリュームがある、すぐに提供されるなど)ことが重要になります。この集客商品を確立できると、お客さまに「あそこは○○のお店でしょう」=「○○がおいしいお店」と認知され、記憶されることになります。

「ああ、あのトンカツがうまい店でしょう」(焼肉屋だがランチメニューのトンカツがおいしい)
「あの焼鳥屋でしょう」(本来は海鮮居酒屋だが焼鳥がおいしい)

こうなると、集客商品のおかげでお店が認識されている状態なので、店名では呼ばれません。

集客商品は、高単価商品ではなくて、扱いやすい食材を使って、低単価で誰でも頼めるものがいいでしょう。1000円以下、できれば500円以下で、どのテーブルにも必ず1つは置かれている、あるいはビールやハイボールととても合うので1人に1つずつ頼んでもらえるとなれば最強です。

こういう商品は、必ずオーダーされるのがわかっていますから、まとめて大量に仕込むことができ、キッチンのオペレーションが楽になります。

集客商品は「客寄せパンダ」なので、「損して得取れ」の発想で、最大の価値を提供するためにはあえて原価率を高くすることもあります。「損して得取れ」の精神でお客さまに最大限の利益を還元する、価値を提供するということですから、原価率が4割、5割、場合によっては6割になってもいいという覚悟の商品です。

■繁盛店は「商品の原価率は30%にするべし」という鉄則を無視する

利益率の低い集客商品でお客さまを集める一方で、利益獲得商品を用意し、こちらで確実に利益をとります。

日本の居酒屋メニューの様々な料理
写真=iStock.com/deeepblue
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/deeepblue

利益獲得商品は原価率が15パーセントないし、20パーセントを切るくらいの商品もので、きちんと利益が取れるように設定します。理想をいえば、集客商品とセットで注文されるようものが望ましいです。

※原価率は「原価÷販売価格」、利益率は「利益÷販売価格」で計算する。

飲食店業界には「商品の原価率は30パーセントにするべし」という鉄則みたいなものがあります。私は単なる幻想だと思っているのですが、これを信じ込んでいる人が多い。

たとえば、原価100円のものを450円くらいで売りたいのだけれども、原価率は30パーセントでなければならないと思っているから300円で売ってしまうということがよくあります。ほとんどのお店で行われていることです。

こんなことをしていては、儲かるものも儲かりませんし、利益を上げることはできません。商売はいつまでもしんどいままです。

しんどいだけではやっている意味はありません。「ビジネスなのだから、儲けるところはきちんと儲けましょう」というのが、私の言いたいことなのです。

たとえば、お客さまから3000円いただきたいということであれば、3000円に匹敵する価値を提供するという発想が自然に出てくるはずです。あるいは、4500円いただきたいというのであれば、お客さまが4500円払っても満足する、あるいは4500円払って得した気分になるような価値が高いものを提供すればいいのです。それができれば、「あのお店はすごいよ(価値が高い)」という評判が広まるのです。

つまり、お客さまの期待以上の価値を提供する、それが儲かる仕組みなのです。

よくいわれている「原価率30パーセント」というのは、「集客商品や利益獲得商品などすべての商品をまとめて計算すると、最終的にそれくらいの原価率に落ち着くことが多い」というくらいのとらえ方で十分です。

■鳥貴族が「おかわり自由のキャベツ盛」を提供している理由

集客商品と利益獲得商品を具体的に見てみましょう。今回は鳥貴族の集客商品と利益獲得商品を考えてみます。

Twitter公式アカウントより
Twitter公式アカウントより

鳥貴族の集客商品は統一価格の焼鳥です。298円という統一価格というわかりやすさはお客さまをひきつけます。

しかし、焼き鳥ばかり売っているとあまり儲かりません。利益獲得商品が必要です。それが呼び水商品のキャベツ盛とアルコールドリンクなのです。お酒は原価率が低く、一般的には8~20パーセント程度くらい。例外は生ビールで1杯の原価が180~190円くらいとなります。原価率が低いドリンクをより多く売るために、キャベツ盛があります。キャベツ盛にはお酒が飲みたくなる味つけがされているうえに、おかわり自由です。お客さまはお酒が進みます。

飲食業における料理の鉄則は「ご飯が食べたくなるか、お酒を飲みたくなるか」つまり、ご飯ものかお酒を利益獲得商品にすることです。鳥貴族は、この鉄則をきちんと押さえています。

■原価は1個あたり数円「餃子の王将」の儲け方

また、「餃子の王将」の餃子は集客商品であると同時に利益獲得商品です。

HPより
HPより

かつてラーメン屋さんの利益戦略は、ラーメンの価格を低めに設定して、生ビールと餃子で利益を獲得するという戦略でした。生ビールは居酒屋みたいに価格競争に巻き込まれませんから550円くらいの価格をつけられます。それよりも利益率が高いのが実は餃子なのです。生ビールの原価が180~190円に対して、餃子の原価は1個数円レベルです。

しかし、餃子の弱点は提供時間が長いことです。一般的には冷凍の餃子を焼くので提供時間が長くなります。ところが、餃子の王将の場合、圧倒的な集客商品の餃子はオーダー率がダントツに高いため、セントラルキッチンから届けられた餃子を冷凍する必要はありません。つまり、チルドの状態で焼き上げるので、スピード提供できるという理想的なサイクルができあがっていました。

別のお店の集客商品と利益獲得商品を見てみましょう。

私の故郷(北海道帯広市)にある平和園という超老舗の焼肉屋さんで、年商は10億円を超えています。

このお店の集客商品はジンギスカンですが、その原価率はなんと75パーセントです。

利益獲得商品はジンギスカン定食、ハラミ、カルビ、ナムルなどです。お客さまは、ジンギスカンだけでなく、ほかの料理も召し上がってくださるので、トータルで儲かっています。

■「串盛り」や「刺身の盛り合わせ」でめちゃめちゃ稼ぐ

ここまでお読みいただいて利益獲得商品の重要性にお気づきいただいたかと思います。

須田光彦『絶対にやってはいけない飲食店の法則25』(フォレスト出版)
須田光彦『絶対にやってはいけない飲食店の法則25』(フォレスト出版)

さっそく開発しようと思っている方もいらっしゃるかもしれません。その前に、利益獲得商品になりにくいものと、なりやすいものを知っておきましょう。

利益獲得商品になりにくいものはみんなが知っている商品です。つまり、名前を聞いただけで味がぱっと思い浮かぶものですが、こういうものはお客さまが簡単に原価を想像できてしまいます。

ただし、そうしたものもオーダー数が大変多いのであれば、数の論理で利益獲得商品になることがあります。1品あたりの原価率は下げづらいですが、大量にオーダーされるということがわかれば、あらかじめ食材をプレカットするなど、調理の手間(コスト)を軽減できるため、結果的に利益獲得商品になったりします。

利益獲得商品の代表例は、居酒屋の串盛りや刺身の盛り合わせなどのセット商品です。複数の商品をまとめることで、お客さまはオーダーを選ぶ手間を省けますし、お店側も売り上げ・利益を取りやすくなります。

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須田 光彦(すだ みつひこ)
飲食店特化型コンサルタント
1962年、北海道生まれ。飲食店の価値創造と向上に強いフードビジネスバリューデザイナー。クレドマネジメント株式会社代表取締役社長。これまでコロワイド、レインズインターナショナル、はなまるうどんなど、手がけてきた案件数は500件超。若い起業家のサポートから年商2000億円を超える上場企業まで、食にかかわる業態ならどのような業態でもコンサルティングする。2013年より『有吉ゼミ』(日本テレビ系列)の人気コーナー「芸能人の心配な店」にも出演している。

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(飲食店特化型コンサルタント 須田 光彦)

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