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免疫学的に正しい働き方「午前に重要な仕事、午後は軽い仕事」

プレジデントオンライン / 2020年7月24日 11時15分

■近年明らかになった自律神経と免疫の驚きの関係

私たちの体のなかには「交感神経」と「副交感神経」という2つの「自律神経」があり、ストレスが加わると交感神経の活動が高まって、心拍数が増えて胸がドキドキしたりする。逆にストレスフリーになると副交感神経の活動が高まり、心拍数が抑えられる。こうしたストレスと自律神経、そして免疫力との関係が明らかになりつつある。

「神経系と免疫系との関係を、科学的論文として1919年に世界で初めて発表したのが細菌学者の石神亨氏でした。肺結核に罹った患者さんの白血球を調べ、事業の失敗や家庭内の不和など強い社会心理的ストレスを受けた人の場合、結核菌を食べる貪食機能が低下していることが判明したのです」

こう語るのは神経系と免疫系との関係を研究している大阪大学免疫学フロンティア研究センターの鈴木一博教授。

その鈴木教授が研究しているのが、免疫細胞のなかでも獲得免疫(適応免疫)を司るリンパ球と交感神経との関係だ。リンパ球は、頸部、腋窩などにあるリンパ節とリンパ節との間を行き交いながら、全身をパトロールする。そしてリンパ節で細菌やウイルスなどの病原体の侵入を検知すると、リンパ球がとどまって病原体の性状を記憶し、獲得免疫を引き起こす準備を行う。

「マウスの実験では、交感神経が興奮して活動が高まると、リンパ球がリンパ節から出ていくのが抑えられてリンパ節にたまり、強い獲得免疫を引き起こす準備が整えられました。夜行性であるマウスの場合、夜に交感神経の活動が高まって、こうした現象が起こります。マウスにとって夜は餌を取りに行く時間帯で、天敵に遭遇したりして、傷を負って病原体が体内に侵入する可能性が高くなるため、それに備えたメカニズムと考えられます」(鈴木教授)

■勧められない就寝間際のスマホ

翻って人間の場合、交感神経の活動が高まるのは朝起きてから午前中で、それ以降は低下する。こうした生理的なリズムを「サーカディアンリズム(概日リズム)」という。「交感神経が沈静化して活動が低下すると、リンパ節のなかのリンパ球は、鼻や喉などの末梢組織に送り出され、そこにいる細菌やウイルスに対して獲得免疫の作用を及ぼします」と鈴木教授は話す。

そういえばデキるビジネスパーソンほど、午前中に重要でストレスフルな仕事に集中し、午後は軽い仕事を流している。見事に交換神経のサーカディアンリズムと一致している。外出すれば、細菌やウイルスとの接触機会が増えるため、重要な商談に出向くのは、リンパ節にリンパ球が集中している午前中にこなしたほうがいいとの判断も働く。鈴木教授も「免疫機能の理に適った働き方といえそうです」という。

就寝間際にスマートフォンを操作する人がいるが、「交感神経の活動を不必要に高める可能性があります。また、サーカディアンリズムを崩しかねないのでお勧めできません」と鈴木教授は指摘する。要注意である。

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鈴木一博
鈴木一博(すずき・かずひろ)
大阪大学 免疫学フロンティア研究センター 教授
1998年、東京大学理学部、2003年大阪大学医学部医学科(学士編入)卒業。07年大阪大学大学院医学系研究科修了。日本学術振興会特別研究員、カリフォルニア大学サンフランシスコ校博士研究員などを経て、17年4月より現職。

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(宇佐美 拓憲 撮影=石橋素幸 図版作成=大橋昭一 写真=amanaimages、Getty Images、PIXTA)

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