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不倫を繰り返す人は、なぜバレるまで止められないのか

プレジデントオンライン / 2020年7月10日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Motortion

不倫をする人にはどんな特徴があるのか。臨床心理士の福島哲夫氏は、「恋愛にはいくつかの型があり、狂気的な愛や遊びの愛を追求するタイプは不倫しやすい。また、生育環境から恋人や配偶者へ不信感を持ちがちで、そこから浮気願望がわく人もいる」という。男女関係や不倫について20年以上取材を続ける、フリーライターの亀山早苗氏が話を聞いた——。

※本稿は、亀山早苗『人はなぜ不倫をするのか』(SB新書)の一部を再編集したものです。

■結婚相手としての異性を決めるプロセス

【福島哲夫氏】恋愛心理学には「SVR理論」というものがあります。これは社会心理学者、マースタインが提唱した理論で、結婚相手としての異性を決めるプロセスは、次の3つのステージを経て関係が深まるというものです。

S(Stimulus)……出会いから恋愛初期の段階。ここでは相手の外見、声、性格や社会評価などからの刺激が重視される
V(Value)……恋愛関係にあるステージ。ここでは趣味や価値観の共有が重視される
R(Role)……結婚や共同生活を始めるステージ。ここではお互いの役割を理解し、補完し合う関係であることが重視される

恋愛というのは、このように推移することから免れられません。どこかの段階にとどまっていることはむずかしいのです。もうひとつ、カナダの社会学者ジョン・アラン・リーが分けた恋愛の6つの型というのもあります。

Mania:狂気的な愛
独占欲が強く、嫉妬・憑執・悲哀などの激しい感情を伴う愛
Eros:美への愛
恋愛を至上のものとしてとらえ、ロマンティックな考えをとる愛
外見を重視し、一目惚れを起こしやすい
Agape:愛他的な愛
相手の利益を考え、自分自身を犠牲にすることをいとわない愛
Storge:友愛的な愛
穏やかな、友情的な恋愛。長い時間をかけて恋愛が育まれる
Pragma:実利的な愛
恋愛を地位の上昇などの手段と考え、相手の選択には社会的な地位の釣り合いなど様々な基準を立てる愛
Ludus:遊びの愛
恋愛をゲームととらえ、楽しむことを大切にする愛。相手への執着が少ない

不倫しやすい人というのは、SVR理論では永遠にS、つまり恋愛に刺激を求め続ける人で、リーの6つの型でいえば「マニア(狂気的な愛)」や「ルダス(遊びの愛)」を追求する人といえるでしょう。恋愛がすべてこうした型に分かれるわけではありませんが、ひとつの分類として興味深いと思います。

■不倫はある意味「いいとこ取り」の関係

自分が独身にしろ既婚にしろ、既婚者とばかりつきあってしまう人は少なくない。そういう人はたとえ痛い目に遭ってもまた不倫を繰り返す。どうしてそうなってしまうのだろうか。

【福島哲夫氏】恋愛は先ほど言ったように、錯覚から始まることが多いんです。自分の理想の恋人、理想の恋を相手に勝手に投影した経験をもつ方は少なくないのではないでしょうか。若いときにはよくあることです。そしてそこから脱していって、自分と合う人を見つけるわけです。

でもこれが不倫の場合、相手を独占できなかったり、パートナーとして次の段階に移行できないために、幻滅や脱錯覚が起こりにくくなります。ずっと一緒にいれば相手の悪いところも合わないところも発見しやすいでしょうが、不倫はずっと一緒にいるわけにはいかない。こういう言葉で言っていいかどうかわかりませんが、ある意味では「いいとこ取り」の関係でいることも可能です。だからなかなか不倫から抜け出すことができないという事態が生じるんです。

不倫を純然たる恋愛と考えれば、不倫は結婚のように、相手の人生や運命をも引き受けなくてはいけないという重い責任からは逃れられる。これも不倫を繰り返す要因です。さらには恋愛にはつきものの「ひょっとしたら選ばれないかもしれない」という厳しい選別に対しても「最終的なパートナーとしては選ばれないのが当然」という安心感からそこにどっぷり浸かる結果になります。そして「不倫とわかっていたはずの関係にはまり込んで、いつしか抜けられなくなった」という事態を招くわけです。

■「感情的なやり直し」で浮気願望がなくなる

現代心理療法から考えると、不倫や夫婦不和は、過去の「アタッチメントの失敗」と考えられるといわれています。そこで近年注目されている体験型の心理療法に、このアタッチメントをセラピストとの間で再体験・再修正していくものもあります。

「アタッチメント・コクーン」と呼ばれる繭の中に、セラピストと一緒に入るかのような体験を積み重ねます。つまりは子ども時代に戻っての、感情的なやり直しです。親との関係でつらい記憶があるなら、「あなたは全然悪くない」ということを理解してもらう。一方で親のいいところも思い出してもらう。そして「あなたは当時の自分になんと言ってあげたいか」に答えてもらう。時間をかけてネガティブな自分の記憶を修正していくことで、心の痛みが減っていくんです。その結果、恋人や配偶者への不信感や、そこから来る浮気願望などがなくなることは多くの例で見られます。

■毒親に育てられたケースは…

最近「毒親」とか「毒母」とかの問題が取りざたされていますよね。実際、これでは娘はつらいだろうなと思われるケースもよく見ます。

でも親に対しては、誰でも若干の嫌な思い出はもっているものです。それは子どもの望むような愛し方ではなかったり、見当違いの感情的怒りだったりしますが、親は結構忘れていることが多い。誰もが適度にひどい目に遭いながら大きくなるということです。

ただ、今はそういった「誰もが通ってきた親子の関係」とは質が違うんです。私の知るケースでは、20歳を過ぎた娘が母とケンカになり、娘がどんなに泣いて謝っても許してくれない、と訴えてきたことがありました。「何をしても許さない」と母が激怒し続けるんです。こうなると単なる母娘ゲンカという枠を超えています。小さなころから娘の気持ちをまったく考えずに、すべて母親が決めてしまい、それが大人になっても続く例もあります。これも単なる過干渉を超えています。

■毒親育ちの女性は恋愛相手の男性に母性を求める

子どものことを話し合う懇談会で会った母親は、50歳前後で分別がありそうに見えましたが、彼女は会うなり20分くらいひとりでしゃべり続けました。彼女の子どもに関する私の話などまったく聞かないわけです。こういう親では、子どもは本当に苦労すると思います。小さいときからずっとそういう親と一緒にいたら、子どもの精神状態は不安定になりますよ。

こういう親に育てられた女性は、恋愛相手の男性に母親のように抱きしめられることを望みます。男性に母性を求めるんですね。だけど相手は男なので、母性がないわけではないにせよ、「母親のように」ケアしてくれるところまではいかない。だから満たされずに苦しんでしまう。そういう人がたくさんいます。

完璧な健康がないように、完璧な生育歴もない。何が「普通」なのかわからないが、恋愛においてことごとくうまくいかない場合は、一度、自身と親との関係や育ってきた環境を考えてみてもいいのではないだろうか。完璧なやり直しはできないが、追体験はできるし、そこで歪んだ記憶を修正したり、つらかった記憶と少し距離を置いたりすることならできるかもしれない。

■不倫相手の条件は「口が堅いか、節度があるか」

【福島哲夫氏】私は不倫の善悪に関してどうこう言うつもりはありません。一夫一妻に関しても、おそらく他の方法よりはベターだからそうなったんだと思っている程度です。

亀山早苗『人はなぜ不倫をするのか』(SB新書)
亀山早苗『人はなぜ不倫をするのか』(SB新書)

ただ、現実問題として結婚していながら恋愛する人は少なくない。知人でやはり不倫経験のある男性がいます。彼は家庭を非常に大事にしているんですが、どこも同じようにやはりセックスレスという問題を抱えています。結婚期間が長くなり、誘っても奥さんに断られるようになった。最初はそれがいらだたしく思えたし、自分が拒絶されたようでつらかったそうです。でも、セックスレスって慣れていくんですよね。彼自身も、家族として妻への愛情が減ったわけではないと自覚しています。

そんなときに恋が忍び寄ってきた。相手も既婚者です。彼は恋愛していいものかどうか、非常に悩んだそうです。バレたら大事な家族を悲しませることになるし、社会的な立場も失うかもしれません。そこで彼が確認したのが「相手の女性は口が堅いか、節度があるか」ということでした。相手も自分と同じように家庭を大事にしているなら、恋愛は恋愛として成立させられるのではないか。もちろん性的な要素も重要な条件だと彼は言ってましたが(笑)。

■心のバランスが整ったら手を引くこと

ただその恋愛は2年ほどで終わったそうです。彼女のほうから「もうそろそろこのままではいけないと思う」と言われたとのことでした。確かにそのときには、彼のほうにも恋が始まった当初のわくわく感はなくなっていました。お互いに情緒が安定して、心の深い部分でわかり合ったという実感もあり、とてもいいつきあいだったと言える状態にあった。フラれるのはつらいけど、彼女が言うようにそこが潮時だったのでしょう。彼女には「節度」があった。彼はそれを受け入れました。

この話を聞いたとき、こういう不倫だったら他人がどうこう言えないと感じてしまいました。ある意味で「不倫は純愛」だというのは本当なんだなとも思いました。独身同士と違って結婚という目的がないから、ふたりの愛情だけを頼りに歩んで行くことができる。とはいえたとえ純愛であっても、ずるずるといくとあまりいい結果にはなりません。

空いた穴に足りないものを埋め、心のバランスが整ったら、関係から抜けられなくなる前に手をひき、誰にも迷惑をかけないというのが、大人の知恵かもしれません。

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福島 哲夫(ふくしま・てつお)
臨床心理士
1959年生まれ。大妻女子大学人間関係学部教授。明治大学文学部卒業後、慶應義塾大学大学院博士課程単位取得満期退学。著書に『心理療法のできることできないこと』(共編著、日本評論社)『新世紀うつ病治療・支援論―うつに対する統合的アプローチ―』(共編、金剛出版)『事例でわかる心理学のうまい活かし方―基礎心理学の臨床的ふだん使い―』(共著、金剛出版)『図解雑学ユング心理学』(ナツメ社)『面白くてよくわかる!ユング心理学』(アスペクト)など。

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亀山 早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター
1960年生まれ。明治大学文学部卒業後、フリーライターとして活動を始める。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』(ともに新潮文庫)『人はなぜ不倫をするのか』(SB新書)『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』(扶桑社)など著書多数。

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(臨床心理士 福島 哲夫、フリーライター 亀山 早苗)

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