カフェが非対面社会で生き残るための、たった1つの道
プレジデントオンライン / 2020年8月15日 11時15分
■「現代のカフェは“しゃべり場”の象徴」
2020年6月20日、東京駅前の商業施設にあるサザコーヒーKITTE丸の内店で「ゲイシャ」の試飲イベントが行われた。ゲイシャとは現在最高級のコーヒー豆の品種だ。
この日は新社長に就任した鈴木太郎氏がゲイシャの魅力を紹介。イベントはオンラインでも同時配信された。「実店舗+ネット」の2本立ては、コロナ後の「今」を象徴する。
「現代のカフェは“しゃべり場”の象徴」──日本のカフェを生活文化の視点で研究する筆者は、何年も前からこう伝えてきた。
飲食店の「談笑」だけの意味ではない。各種のシンポジウムが、よく「××カフェ」という名称で行われたように、人が集まり・交流する場の代名詞となっていたからだ。
だがコロナによる外出自粛中は、集まりも交流も失われた。
この間、カフェチェーンは何をしたのか。最も積極的だったのは国内で1500店以上を展開する最大手のスターバックスだ。
スタバは約8割の店舗を休業とするまでは、ギリギリまで営業継続の道を探った。当初は「こんな時期だからこそ、くつろぎの場を提供することが使命」と表明していた。
■コーヒー豆の売れ行きが好調
その一方で、店舗の感染防止対策を具体的に列挙し、衛生管理に注力。それでも従業員が不幸にして感染した場合(数例あった)は店名を公表し、すぐに店舗閉鎖。陽性の従業員は入院させて、当該店舗の従業員を自宅待機とした。さらに、自治体や保健所と連携して店舗を徹底消毒した後、期間を置いて営業を再開。この間の経緯も「重要なお知らせ」として公式サイトで告知した。結局、20年4月9日から営業休止を決断した。
並行して「スターバックスの味わいをご家庭でも」を掲げ、オンラインでは、(1)「ご自宅でのコーヒーのいれ方」、(2)「Message on the mug」、(3)「バリスタたちのおうちコーヒー」の3大施策を中心に、消費者とつながる企画を実施。これには休業中の店舗従業員も参加し、顧客とネットで交流し続けた。売り上げは非公表だが非常に好評だったという。具体的な内容については、プレジデントオンライン20年6月12日配信の「『王者はSNSをこう使う』2カ月の休業中にスタバが採った3大施策」を参照いただきたい。
店舗数で国内4位(約740店)のタリーズコーヒーの場合、目立つ活動はなかったが、それでも顧客はコーヒー豆をオンラインで購入。前年を上回る豆売りを記録した。
スタバが営業休止後も、少しの間タリーズは営業を続け、カフェを求める消費者が店に殺到した。それが休業すると、今度は「豆やグッズ」で店とつながろうとしたのだ。
前述のサザも「オンラインでは前年比の約3倍、豆が売れた」(鈴木氏)という。もともと同社は高品質の豆が店舗で売れる。カフェでコーヒーの味が気に入ったお客が、同じ豆(200グラムで1200円以上する)を自宅用に買い求める光景も珍しくない。巣ごもり消費でもそれが支持された。
自粛期間中、サザは名物の自家製ケーキを工夫してテークアウト販売したり、冷凍にしてオンライン販売したりもした。
各人気店とも、店舗営業再開後は、オンラインでもつながっていた顧客が訪れている。大手でも個人店でも、コロナ前からイベント告知や新商品情報をSNSなどで訴求し“ネット営業”していた店が強い。
ウィズコロナで何が変わったか。例えばスタバは「サードプレイス」(自宅でも職場・学校でもない第三の場所)を掲げてきたが、それがオンライン空間にも広がった。今後は「フードトラック」(移動販売)業者が加わるかもしれない。
筆者はこれまで、「人気店には居心地のよさがある」と説明してきたが、居心地はお客の心の中にも芽生え、実店舗はその再確認の存在となったのだ。
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経済ジャーナリスト/経営コンサルタント
1962年名古屋市生まれ。日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆多数。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。
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(経済ジャーナリスト/経営コンサルタント 高井 尚之 写真=時事通信フォト/スターバックス コーヒー ジャパン)
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