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「部下から嫌われたくない。パワハラは避けたい」と悩む上司はどうしたらいいか

プレジデントオンライン / 2020年9月25日 11時15分

ゼンマスター 室町憲寿氏

■仲良しクラブから脱却できない上司

私はサラリーマンも自前の会社の社長も経験済みですが、どうも日本人の上司は、自分に似たタイプを部下に持ちたがる。かみついてくるような部下を避け、お山の大将であり続けたいと思うのでしょうかね。とりあえずの仕事はできるのかもしれないが、守備範囲も狭くて価値基準が狭いくせに、自分の言っていることが正しいと思っている上司をいっぱい見ましたよ。

そういうヤツはだいたい高学歴。偏差値教育がただの去勢工場なのだということが、よくわかりますよ。部下は部下で、SNSなんかで「いいね」を求めるだけのもっと狭い領域でしか活動しない。そんな上司と部下がついつい、仲良しクラブをつくっちゃう。

コロナショックで経済・企業は戦後の焼け野原同然。今後は新しい時代を模索することになります。なのに、こんなんじゃ企業の発展なんて望めません。自ら活路を閉じているようなもの。いまだに学閥意識が抜けない企業すらあるというから、呆れますね。

ここにきて上司の悩みもより表面化していて、私の元へもたくさん寄せられています。何かというと、「いまどきの部下をどう扱っていいのかわからない」。これって、上司が仲良しクラブの意識から脱却できていないから起こる悩みですよね。自分より部分的に優れた部下たちを束ねるのが、最強チームをつくる秘訣。自分に牙を向けてくる部下だって、チームの武器になるならそれを生かし、伸ばすことを考えるべきです。となると、部下との対立を恐れちゃいけない。これからの上司は、部下にいい顔をするばかりではダメ。今のうちに「いい人をやめる練習」をしておこうじゃありませんか。

ただ忘れちゃいけないのは、「対立とは融合すること」という逆説です。「賓主互換」という禅語があります。相対するもの同士が、時と場合によって、あるいは、見方や価値観に応じて入れ替わるということ。つまり部下は上司になりうるし、上司は部下になりうる。対立する主体と客体が一体となるということです。

上司や部下といった分け隔てなく、「不二一体」となって相乗効果を生み出すんです。好きも嫌いもなく、異質なものとのコミュニケーションをもって、深い創造的な世界に転じていかなきゃならない。それこそが上司と部下の間柄というわけです。上司は、部下に鍛えてもらうくらいの心構えが必要。「こいつはデキる」という部下とコンビを組んでみるといい。互いに成長できるはずです。

■部下一人一人の持つ“我”の強さを見極める

では具体的に今、どう部下と接すればいいのか。最初の答えは「突き放すこと」。禅の法話の中に「自燈明」という言葉が出てきます。釈迦が亡くなるとき、弟子たちは「これから私たちは何を頼って生きていけばいいのですか?」と泣いて聞きました。すると釈迦は、「わしが死んだあとは、自分で考えて自分で決めろ! 大事なことはすべて教えた」と答えました。

上向きの右目で悟りを求め、下向きの左目で人心を摑む不動明王。上司の心がけそのものだ。
上向きの右目で悟りを求め、下向きの左目で人心を摑む不動明王。上司の心がけそのものだ。(PIXTA=写真)

その真意は、「自ら明かりを灯せ!! 誰かが灯してくれる明かりを頼りに暗闇の中を歩くのではなく、自らが明かりとなれ!!」、つまり、おのれの指針を持たなければいけないと突き放したのです。なぜなら、変化に対応できないことが生きていくうえでの最大のリスク。自分の人生は自分で決めるしかないからです。部下には、「会社にとって都合のいい、奴隷になる勉強をするんじゃなくて、自由人になれ!」と言ってあげなきゃいけません。

次にすべきことは、部下の一人一人がどのような“我”の強さを持っているかを見極め、その特長を引き出すこと。そして、もし部下が妙なこだわりやプライドを持っているなら、それを取り払ってやることです。

部下は上司にとって異質な存在であり、異質な“我”の強さを持っています。「おまえのプライドを挙げてみろ。“我”の塊を出してみろ」という接し方で問い詰めてみるといい。すると、高学歴なヤツに限って何も出せないもの。代わりに文句を言い始める。もしそうなったら、「おまえが言っているのは文句だろ。そしてプライドと思い込んでいたのは見栄にすぎない。その文句や見栄はどこから出てくるんだ」とさらに問い詰めます。

■おまえには何もないじゃないか

最終的には「おまえには何もないじゃないか。偉そうな口をきくなよ」となるわけですね。部下もすぐには納得しないでしょう。でも、そうした対立がなければ融合することもできないのです。そのままでは部下は自分の心の壁、メンタルブロックを打ち破ることができません。

部下の持つ“我”が武器になると思えばどんどん伸ばしてやればいい。逆にくだらぬプライドに固執しているだけだとわかれば、そんな“我”は潰してやる。しょせん部下なんて消耗品。いや、上司だって消耗品なのだから。

“我”の強さってのは、自分のプライドの裏返しなわけだから、それを強く表に出すヤツには、たとえば「いいことを言うじゃないか。そのままやって、もっと売り上げを伸ばせよ」と焚きつける方法も有効です。つまり部下には、思ったことをどんどん言わせる。ただし、言っただけのことはやってもらう。すると、そいつのプライドが本物か似非かがわかります。なぜなら、たとえば営業であれば売り上げという結果に表れるわけだから。結果で示せる本物のヤツの“我”は、そのまま残しておかないと会社が繁栄できません。私が経営した会社では、結局は似非のほうは辞めていきました。

スキルはあるのに“我”が弱い、自信を持てない部下は、アフター5に飲みに連れていくなりして、「そのままで大丈夫だから」とストレートに言えばすごく効く。ただ、「病は不自信の処にあり」という禅語もあって、そういう自信のない状態から脱皮できないヤツには辞めてもらうしかありません。

私は部下とのディベートをすごく大事にしました。賛成と反対、相対立する主張や意見を2つ用意しておき、くじ引きでどちらの側に立つかを割り当てる。それで議論してみると、私自身の頭の中が整理され、部下が持つこだわりやプライドも詳らかになる。さらに双方に、知識ではなく考え方が身についてきます。「不思量底を思量する」という禅語の通り、思考回路を変えて物事を見ることはすごく大事ですね。それができないと、迷路から抜け出せなくなってしまうこともあります。固定観念に支配されちゃいけないんです。

繰り返すようですが、ただ単に上司と部下の間で対立の構図をつくれと言っているのではありません。安易な妥協を排し、孤高真実の道を進むとともに、部下とは熱く心を通い合わせなければならないと言いたいのです。

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室町 憲寿(むろまち・けんじゅ)
ゼンマスター
1957年、神奈川県生まれ。全国紙記者等を経て98年、慶應義塾大学大学院で経営学修士を取得。2002年小池心叟老師ら3長老から臨済宗老師の印可を取得。著書多数。室町義塾 090-5770-5483

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(ゼンマスター 室町 憲寿 構成=小澤啓司 撮影=小原孝博 写真=PIXTA)

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