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「11年間ずっと右肩下がり」まったく期待されていない新党「立憲民主」の残念さ

プレジデントオンライン / 2020年9月11日 19時15分

合流新党の新代表に選出された枝野幸男氏(左)。右は泉健太氏=2020年9月10日、東京都千代田区 - 写真=時事通信フォト

■新党立ち上げの瞬間としてはあまりにも「低温」だった

野党の離合集散は後を絶たないが、今回ほど「熱のない」野党政局はなかったのではないか。9月10日、枝野幸男氏を代表に選び、新たな立憲民主党として船出した新党のことである。同時進行の自民党総裁選の陰に隠れた印象は薄いのは明らかだ。

今秋に衆院解散・総選挙が行われる可能性が高まりつつある中、この「新味のない新党」はどう活路を見いだすのか。

「こうした選挙の後には、『これでノーサイドだ』とよく言われるが、私はノーサイドと思っていない。いよいよプレーボール。これから戦いが始まる」

10日、都内のホテルで行われた代表選で勝利を決めると、枝野氏は参加メンバーたちの前で声を張り上げた。新型コロナ対策のため会場設営がソーシャルディスタンスをとっていたこともあるが、通常の新党立ち上げの瞬間としては「低温」だった印象はいなめない。

この日は、枝野氏と旧国民民主党の泉健太氏の一騎打ちとなった代表選とともに、枝野氏が提案した「立憲民主党」と、泉氏が提案した「民主党」のどちらかを選ぶ党名選挙も行われた。

■「マイナーリーグの代表選」にふさわしいフィナーレに

結果は代表選が枝野氏107票、泉氏42票。党名は立憲民主党が94票、民主党が54票。旧・立憲民主党から新党に参加したのが88人、国民民主党からの参加者が40人だったことを考慮すると、2人の得票も、党名の投票数も、ほぼ妥当な数字。話題性もない。代表選が始まってから、自民党総裁選の陰に隠れ「マイナーリーグの代表選」と揶揄(やゆ)されてきた選挙にふさわしいフィナーレともいえる。

2017年の衆院選を前に「枝野立て」のエールとともに枝野氏を代表に旗揚げした立憲民主党。その後、党勢はじり貧だ。そして今回、国民民主党の多くの議員と合流して新党結成となったのだが党名も代表も同じ。「昔の名前で出ています」新党なのだ。

新党に加わった149人のうち約7割はかつて民主党か民主党から党名が変わった民進党に籍を置いた経験者。旧国民民主党の多数は新党に加わったが、代表だった玉木雄一郎氏ら加わらなかった議員たちも新たに政党を立ち上げる。

今までと何が変わったのか分からない。さらに言えば「変わったことすら知らない」有権者もたくさんいるのではないか。

■11年間、野党勢力はほぼ一貫して縮小再生産の道を歩んでいる

この10年あまりの野党再編の歴史を正式に語れる人はほとんどいないだろう。2009年、国民の熱狂の中で衆院選に圧勝、民主党政権が誕生した時がピークだとすれば、それから11年間、野党勢力はほぼ一貫して「右肩下がり」、縮小再生産の道を歩んでいる。

2012年、民主党政権末期の野田政権下で消費税増税を柱とした「社会保障と税の一体改革」を決断した際、深刻な内部対立が生じ、小沢一郎氏らが離党。「国民の生活が第一」という政党をつくった。同年暮れの衆院選で民主党は57議席という大惨敗。その後、小さな合従連衡は後を絶たなかった。

2016年、「結いの党」や、「維新の党」らが合流して民進党をつくったが、翌17年の衆院選前には小池百合子氏が「希望の党」を旗揚げしたことで同年の衆院選は野党分裂選挙となった。この時に立憲民主党が立ち上がり、衆院選後に国民民主党が結党した。

今回の新「立憲民主党」旗揚げは、10年以上の混迷にピリオドを打ったとは言いがたい。むしろ、混迷が続いていることを国民にさらけ出したと言っていい。

■世論調査では退陣する安倍政権の支持率が上昇中

14日の自民党総裁選では菅義偉官房長官の勝利が確実視される。首相に就任すれば早期に衆院解散に踏み切るとの見方が有力だ。ここで新「立憲民主党」は活路を見いだすことができるのか。

常識的には極めて厳しい。最近の各種世論調査では、退陣する安倍政権の支持率は急上昇。それに引っ張られる形で自民党の支持も上がり、事実上の後継者となる菅氏への評価もうなぎ登りだ。9月8、9日に共同通信が行った世論調査で「次の衆院選の比例代表ではどの政党に投票するつもりですか」との質問に対し、自民党と答えた人が48.1%。「立憲民主党と国民民主党などが合流してつくる新党」は15.7%。自民党の約3分の1にとどまっている。

枝野氏は衆院勢力で100人を超える塊をつくることにこだわってきた。これは2009年、民主党が政権奪取する前の衆院勢力も、2012年に自民党が政権奪還する前の衆院勢力も110人台だったため、「3ケタ」が政権交代に向けた発射台になると考えているからだ。

今回の新党の衆院議員は106人。大台には乗った。ただし、09年の民主党、12年の自民党とは、注目度も期待値も比べるべくもないことが現実だ。

■野党勢力が「消費税減税」で一致すれば望みはあるが…

唯一、活路を見いだすとすれば「消費税」だろう。枝野氏は国民民主党が合流交渉の際に求めていた消費税減税を受け入れる考えだ。

一方、新党には加わらなかった玉木氏らの新党や、山本太郎氏がひきいる「れいわ新選組」も消費税減税を求める。税率や減税期間など、詳細は詰める必要があるが、コロナ禍で経済が冷え込む中、消費税減税は共闘できる政策テーマ。しかも、国民にもアピールできる。

菅氏は10日のテレビ東京の番組で「将来的なことを考えたら行政改革を徹底した上で、国民の皆さんにお願いして消費税は引き上げざるを得ない」と発言。税率アップを念頭に置いていると受け止められた。

この発言は、「今後10年間は上げる必要がない」という安倍晋三首相の考えを大前提にして、人口減少が進む中で中長期的には税率上げも覚悟しなければならないという一般論を述べたものだが、一部メディアは「菅氏が税率アップに言及」と受け止めた。

菅氏は翌11日の記者会見で10%の税率を当面の間据え置く考えを強調、真意を説明した。ただ、これによって「消費税減税か、将来の増税を視野に入れた据え置きか」が衆院選の大争点になる流れができてきた。

野党側が、減税率や期間などの「小異」は捨ててスクラムを組めば、「最も注目度の低い新党」も、一定程度、有権者に浸透する可能性は残っている。

(永田町コンフィデンシャル)

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