「社員ゼロ、在庫ゼロ、オフィスなし」で10億円企業を作った私の方法
プレジデントオンライン / 2021年1月12日 11時15分
※本稿は、株本祐己『稼ぐことから逃げるな』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■SNSを活用して固定費ほぼゼロで売上は右肩上がり
2017年に立ち上げた僕の会社StockSunは3期目を終えた時点で、売上が10億円規模になりました。
そうしたレベルの会社は他にもあるでしょうが、特筆すべき点はStockSunが「社員ゼロ、在庫ゼロ、オフィスなし」という、いわゆる固定費がゼロ(に限りなく近い形)で売上10億円規模となったことです。
その要因として大きいのがSNSの存在です。
StockSunはクライアント企業からの受注も、フリーランス人材のアサインも、全てSNSをはじめとするインターネットの発信を通して行ってきました。
営業マンも新規のテレアポ営業もいませんし、採用のための会社説明会もしません。全てインバウンドで集客と採用が完結します。
仕事は本来、「頼まれなくてはいけないもの」だと私は考えています。
たとえば医師が「診療させてください」とテレアポをしてきたら、その人には絶対に頼みたくないでしょう。
医師が自分の知見や実績を学会・サイト等で発信し、それを見て病院に行くのが一番安心です。
■ホームページを持っていない会社を今どう思うか
正直、営業でゴリゴリと新規のアポを取るなんて時代遅れです。
withコロナの時代では、もはや訪問営業は“テロリスト”として扱われかねません。
だからこそ、インバウンドで仕事を取れることが非常に重要になります。
つまりは、そのためのウェブマーケティングがどれだけきちんとできるかという戦いに、今後はますます移っていくのです。
もちろん、上場企業などでは制約もあるでしょうが、非上場企業で上場を目指すつもりも当面ないのであれば、今SNSをやらないとか、YouTubeをやらないという選択肢は、なんてセンスがないんだろうと思ってしまいます。
ホームページを持っていない会社に対して、どのような印象を抱きますか。多くの人が「時代に取り残されている」と感じるでしょう。
それと同じ流れが、近い将来にTwitterやYouTubeでも起こるだけです。
■ブログを活用し大きな案件をつかむ方法
SNSの中でも、本当にやっていてよかったと思うのがブログです。
今でこそ更新頻度は下がりましたが、起業後しばらくはそれなりの頻度で更新していました。
仕事を受けて毎日働いていると、どうしても時間の切り売りになってしまい、何かのアウトプットが積み上がっていくことがありません。
一方、ブログは書いたものが全てストックされていきます。そのように「ストックされていくもの」に対し、安心感を覚えていた面も多分にあると思います。
ブログでは主に、「私にはこういうことができます」「私に仕事を任せたら、こんないいことがあります」といった内容を書き続けていました。
すると、起業から1年ほど経った頃、書き溜めていたいくつかのブログ記事がちょっとしたバズを起こしたことがきっかけになり、複数の案件を受注しました。
その中には大型案件が含まれていたこともあって、それまで300万円ほどだったStockSunの月商は、一気に約3000万円まで跳ね上がりました。
売上が約10倍にもなった大きなきっかけがブログだったため、この成功体験は今でも私の中に根づいています。
フリーランスは、「どのようにして仕事を取るか」が永遠の課題となりますが、少なくとも発信し続けるかどうかで圧倒的に差がつくということを、このブログの一件で学びました。
特に私が心がけたのは、「たとえば100万円で課題解決の依頼を受けたら、こんなことをします」と具体的に書くようにすることです。
そもそもコンサルティングというビジネスは曖昧なものだからこそ、クライアントの不安を解消するために、あえて実際の事例に落とし込んだ内容にしたのです。
■名刺交換よりフェイスブックのほうが意味がある
もちろん、コンサルはクライアントごとにオーダーメイドで行うので、全ての案件に同じ解決法が当てはまるわけではありません。しかし、できることを具体的に明記することで、コンサルのうさん臭さのようなものを払拭できます。
発注側は「解決法は全て同じではない」と理解してくれますが、なかには「ブログに書いてあった解決法でお願いしたい」という依頼をいただくこともあります。
このように、ブログを通して「発注側の心理」をよく考えるようになり、それが以降のブログ以外の発信でも活かされていきました。これはコンサル業に限った話ではないと思います。
また、ブログ記事を「読んでもらいたい層」に届けるのにとても役立ったのが、Facebookでした。
私はブログをアップすると、必ずFacebookにもシェアするようにしています。
私にはベンチャー時代にFacebookで友達になった経営者が多かったので、シェアすることで彼らの目に留まりやすくなるのです。
さらには、彼らが「いいね」やコメントを残すことで、その周りの経営者にも見てもらいやすくなります。
実際にそうした形で、知り合い経営者のさらに知り合い経営者から案件の問い合わせが入るケースが少なくありません。
私が「名刺交換より、Facebookでつながるほうが遙かに価値は高い」と伝える理由は、こうしたことも一因となっています。
■ビジネス系YouTubeチャンネルという差別化
SNSでいえば、StockSunが制作するYouTubeの「年収チャンネル」も、我々にとってターニングポイントとなりました。
当チャンネルでは2018年の開設当初から、キャリアや就活についての話、ビジネスノウハウなどを、ユーモアを交えながら紹介してきました。
今でこそビジネス系はたくさんいますが、我々が始めた時期はまだ黎明期の頃で、今やビジネス系YouTuberの中では“古参”的な立ち位置となっています。
ざっくりくくってしまえば、StockSunの業態はただの下請けのウェブ会社であり、代行会社に過ぎません。
その中で、他の企業がまだほとんどやっていなかったYouTubeでブランディングを行い、我々の特徴や強みをアピールすることができたこと。
それが他社とは圧倒的に差別化できた大きなポイントだと思います。
■マニアックなYouTubeチャンネルで受注増
2019年には別のYouTubeチャンネル「StockSunチャンネル」を開設し、これがまた受注を大きく増やすことになりました。
ビジネス系YouTubeとはいえ「年収チャンネル」はエンターテインメント性も強いのですが、「StockSunチャンネル」はビジネスに特化したコンテンツです。
たとえば「SEOコアアップデートへの見解及びフリーランスへの影響」「『お金or健康』関連業種のSEO(YMYL領域)」といったマニアックな話を展開しています。
そして、この「StockSunチャンネル」が大当たりしました。
チャンネル登録者数こそ1万7000人ほどですが、当チャンネル経由で案件の問い合わせが多数入るようになりました。
YouTubeの運用は、チャンネル登録者数を増やして広告収入で儲ける手法がスタンダードです。
対して、「StockSunチャンネル」は明確にペルソナを定め、そこをピンポイントで狙いに行くため、チャンネル登録者数が少なくても大きな利益が出るビジネスモデルです。
実際に「StockSunチャンネル」経由で受注した案件は、すでに数億円規模の売上となっています。
最近は、こうしたビジネスモデルを採り入れたYouTubeチャンネルが増えていますので、自分の業種に近いチャンネルを参考にしてください。
■固定費を持たない経営手法はこれから広がっていく
StockSun型経営の大きな特長は、リスクを負っていない点でしょう。
会社は通常、人件費+家賃という固定費を抱える必要があります。対してStockSunは全員がフリーランスで社員ゼロなので、固定費はかかりません。
固定費がゼロであれば赤字になりようがなく、会社としてつぶれようもありません。
こうした固定費を持たない経営手法は、コロナ禍を機に他社でも進んでいくでしょう。
リモートワークが増えれば、オフィスの必要性が下がるからです。実際、これまでのオフィスを解約する会社は増えています。
加えてリモートワークの浸透で、会社はよくも悪くも、社員を雇う必要がなくなっていきます。
■多くの会社が社員を雇わなくなる時代へ
もともと会社にとって正社員は、「●時から■時まで」と拘束できることに価値がありました。ところがリモートワークでは、実際に社員が働いているかどうかはわかりません。
そうなると「何をやったか」でしか評価ができなくなります。
要は「成果物主義」が進むわけです。
その結果、会社から見た社員は、忠誠心ややる気で評価するのではなく、「いくらでこんな仕事をしてくれる人」というドライな存在に変わります。
そうなると、会社はわざわざ固定費を投じて正社員を雇用し続けるより、「フリーランスに業務を委託するほうがよくない?」となるのは必然でしょう。
だからこそ、リモートワークが進むことで、社員の必要性も如実になくなっていくわけです。
したがってStockSun型の経営は、withコロナ・afterコロナの時代に、一気に浸透していくと思います。
■非正社員の数が正社員を上回るときがくる
もちろん業務によっては社員であるほうがいい場合もありますので、社員ゼロがベストとはいいません。ただし割合でいえば、非正社員の数が正社員を大きく上回る時代が来るでしょう。
社員がフリーランスに変われば、人件費が変動費となります。
「売上が上がったら人を入れよう」「売上が下がったら人を切ろう」と粗利にあわせて連動するものとなるのです。
そうして人件費が変動費化し、家賃もゼロに近づいていけば、固定費がなくなって赤字のリスクはほとんどなくなります。
この先はそうした経営手法を多くの会社が採り入れる、というよりも、採り入れざるをえなくなっていくでしょう。
その状況になってから焦るのではなく、今から準備し、「ビジネス戦闘力」を上げておきましょう。
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YouTube「年収チャンネル」運営者
1990年、ドイツ・ハンブルク生まれ。桐朋高校、早稲田大学卒業。学生時代にベンチャー企業で新規事業の立ち上げ、黒字化を経験。新卒で同社に入社し、その後、大手コンサルティングファームに転職。大手金融機関の管理会計業務支援やネットワーク更改などのプロジェクトに従事。フリーランスとして独立し、2017年にStockSun株式会社を創業。2018年、「年収チャンネル」開設。
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(YouTube「年収チャンネル」運営者 株本 祐己)
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