ストレスに寝不足…歯科医が警鐘「インプラント治療が失敗する人」の意外な特徴

プレジデントオンライン / 2021年1月24日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/recep-bg

全身の健康に繋がる歯科医療を追求する医師の堀滋さんは、「削っては詰めるという治療を繰り返す日本の歯科医療は遅れている」と警鐘を鳴らします。快適に長生きするための最新の歯の新常識とは——。

※本稿は堀滋『歯のメンテナンス大全』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

■ごく初期のむし歯はむやみに削らない

歯に限ったことではないのですが、最新の医療は患者さんの体への負担をできるだけ軽くする「低侵襲治療」が主流となっています。歯の治療でもそれは同じで、健康な歯をできるだけ削らない治療が最新トレンドです。しかも、ごく初期のむし歯の場合は削らずに治すケースもあります。これは「要観察歯」の場合で、正確にはむし歯の一歩手前。むし歯は歯のエナメル質が溶け出して、穴があいた状態ですが、エナメル質が溶け出している[脱灰」という段階であれば、正しい歯磨きや歯科での削らない治療(再石灰化促進)でそれ以上の脱灰を防ぎ様子を見ます。歯の表面が白く濁ったときは「脱灰」が始まっているサインです。

穴があいてしまうと削らないといけないので、早めに歯科を受診して適切な治療を受けましょう。脱灰を自分で見つけるのは難しいかもしれません。こうした初期のむし歯を見つけるためにも、定期的な歯科でのメンテナンスが大切です。治療が遅くなるほど削る部分が大きくなってしまいます。

■古い銀歯は認知症の要因に

いま認知症の要因のひとつとして「治療済みの歯」のリスクが指摘されています。それは、認知症のなかに毒物性アルツハイマー病と呼ばれるものがあり、そのリスクとしてもっとも影響が大きいとされているのが水銀だからです。こわいことなのですが、日本ではそれほど遠くない過去に水銀とほかの金属との合金であるアマルガム(いわゆる「銀歯」です)が歯の治療に使われていました。危険性が指摘されたため、30年ほど前から徐々に使用されなくなり、現在ではごく一部を除いて使われていませんが、過去にアマルガムによる治療を受けてそのまま残っているというケースがあります。

歯に詰められたアマルガムからは1日平均1~10㎍(マイクログラム)の水銀が放出されているといわれます。除去したほうがいいのですが、なんの対策もしないとアマルガムそのものやガス化した水銀を飲み込むことがあるのでとても危険です。安全に除去するために、除去したアマルガムがのどに落ちないよう「ラバーダム」というカバーをして施術する歯科医を選びましょう。ラバーダムなしの除去は水銀の害を広げてしまう危険性があります。

■インプラント治療が失敗する人の特徴

インプラントとは体内に埋め込む医療機器の総称です。一般的には歯の治療を指すことがほとんどで、歯が抜けたあとのあごの骨に金属の土台(インプラント)を埋め込み、その上に義歯をつける治療法です。インプラントの利点は義歯をしっかり固定できること、残っている歯を削るなどの負担がなく治療できることです。

歯科インプラント
写真=iStock.com/Talaj
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Talaj

ただし、糖尿病や高血圧などの持病がある場合や、高齢で体力の心配がある場合は、前もって歯科医に病状を伝え、かかりつけ医と連絡を取ってもらう必要があります。また、糖尿病の方や喫煙者の方は、術後の感染だけでなく、インプラントが骨とくっつきにくい点や、将来インプラントを失う危険性が高いことを納得したうえで手術を受けましょう。

また、近年、インプラント治療の失敗は持病だけでなく、栄養不足やストレスが要因になるという説もあります。ご自身の食生活や睡眠時間など生活全般を見直すことも必要です。インプラント治療は診断も含め全て保険適応外となります。患者さんの生活習慣、年齢や健康状態のほか、残っている歯の状態などにより、インプラント以外の治療法が適しているケースもあるので歯科医とよく相談して決めましょう。

■インプラントは一生モノではない

インプラントは自前の歯に比べると炎症が起きやすく、日常の十分な歯磨きだけでは不十分で、定期的なメンテナンスを受けないと周囲に炎症(インプラント周囲粘膜炎)が起こってしまうことがあります。これを放置すると、まだ治療法が確立されていないインプラント周囲炎へ移行して、インプラントを外さないといけなくなるケースもあるので、歯科医院での定期的なチェックとメンテナンスが絶対に欠かせません。

また、自前の歯の場合は骨と歯の間に歯根膜(歯周靱帯)という、あごの骨や歯にかかる力を逃すクッションのような役割をする組織があるのですが、インプラントはあごの骨に直接、金属の土台を埋め込み、固定しています。噛み合わせに問題がある場合は、あごや歯に過剰な力が加わってインプラント部分のかぶせ物が割れてしまうケースもあります。噛み締めへの対処や定期的な噛み合わせのチェックも必要です。インプラントはきちんとケアすれば10~15年以上もつといわれます。治療の選択肢のひとつではありますが、インプラントに精通し、治療後の定期的なメンテナンスをきちんとしてくれる歯科医を選ぶことが重要です。

■治療方法は歯科医に任せず、自分でも調べてみよう

医療技術は日進月歩で進歩しています。歯科も同じで、新しい治療法がどんどん開発されています。そして、どの治療を選ぶのかは歯科医によって異なります。詰め物やかぶせ物を例に、わかりやすく説明しましょう。

堀滋『歯のメンテナンス大全』(飛鳥新社)
堀滋『歯のメンテナンス大全』(飛鳥新社)

部位や症例にもよりますが、現在、保険適用になっている素材はレジン(プラスチック製)、金属(金銀パラジウム合金)、ハイブリッドセラミックですが、それ以外にも金(ゴールド)、オールセラミック、メタルボンド(中は金属で外はセラミック)、ジルコニアなど種類がたくさんあります。それぞれメリットとデメリットがありますし、かかる費用も異なります。自分の予算に合って、体に優しく安全で、できるだけ長持ちするものを選ぶことをおすすめします。

歯の治療は一生に関わります。おまかせではなく、どのような治療があるのか、あとで後悔しないためにも自分でも調べましょう。これがベストと推奨してくれる治療法のほか、保険外も含めて複数の治療法を提示して、選択肢を与えてくれる歯科医での治療が望ましいでしょう。きちんと説明があるかどうかも判断基準になります。

----------

堀 滋(ほり・しげる)
サウラデンタルクリニック院長(旧堀歯科診療所院長)
1959年生まれ。日本大学松戸歯学部卒業。昭和大学歯学部付属歯科病院口腔外科勤務の後、日本橋中央歯科診療所などを経て、1990年に東中野にて堀歯科診療所を開設。歯学部卒業後も診療の傍ら、スウェーデン・イエテボリ大学で実践されている歯周病臨床実践コース、同アドバンスコースなど、海外の最新治療を学び、治療に取り入れている。

----------

(サウラデンタルクリニック院長(旧堀歯科診療所院長) 堀 滋)

×

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング