「食事よりも通信費を優先させる」日本の"隠れ貧困層"問題が深刻な理由
プレジデントオンライン / 2021年2月22日 13時15分
■実は、食料は十分に足りているという事実
持続可能な開発目標、SDGsが掲げる17の目標の2つめ「飢餓をゼロに」にもあるように、世界の食糧危機問題はいまだ深刻だ。しかしながら実際には世界の穀物生産量だけを見てもそれは足りており、“きちんと行き渡ることさえできれば”世界中の人が食べられる十分な量が毎年つくられているのだ。
そうであるにもかかわらず、誰もが知っているとおり世界にはその日食べるものに困っている人が約7億人存在するといわれている。過去50年間で最悪の食糧危機に陥っていることも国連は警告した。一方で国際社会は、SDGsの中で2030年までに飢餓をゼロにすることを目標と設定している。
世界のどこかで誰かが困窮していることは知っていたとしても、実はわが国日本にも“その日の食事に困っている”人々がいるのをあなたはご存じだろうか? 生活水準の高い国だからこそ、その豊かさに隠れて、実は食糧難に陥っている人が身近にいるとしたら、あなたは何を思うだろうか。
■豊かさに覆われて、気づかれない貧困層がいる
実際に住んでいる私たちでも日々実感するように、日本はどこに行っても清潔で、サービスが行き届き、公共の乗り物は発達し、道路もきちんと整備されている。普段の暮らしを見渡してみれば、自分も含め多くの人がスマホや携帯電話を所持し、きちんとした身なりで職場に通い、コロナ禍にある今はひとり一台パソコンを所持し当たり前にリモートワークを行っている。
食料廃棄量は年間600万トンを超え、足りないどころかあり余っている印象さえあるわが国日本。ゆえに、貧困について考える機会もあまりないといえる。けれど、だからこそ見逃してしまいがちなのが身近に潜む貧困層の存在なのだ。
事実、“貧困”という言葉から連想するのは、着るものや住むところがなく、いつもお腹をすかせている様子を想像してしまうのではないだろうか? しかしながら日本のように豊かな国に存在する貧困層は、きちんとした身なりに関わる被服費や、昨今のコロナ禍で急速に整える必要があった通信関連費などに費用がかかり、食事を削ってでもそれらを優先している“隠れ貧困層”をいう。生活水準が高い国だからこそ、そこに見合っていない格好をしていると社会的に認められない側面があるため、さらに食にかける予算が圧迫されるというわけだ。
この場合、当然見た目には貧しいということがわからないため、自ら声を上げない限り助けは来ない。つまり食料不安を抱えたまま暮らす可能性が大いにあるのだ。ちなみにその国や地域の水準内で比較したときに、大多数よりも貧しい状態のことを「相対的貧困」というが、そのような家庭が2015年当時で日本では15.6%存在し、7世帯のうち1世帯がそれに当たるとされる(出典:内閣府「国における子供の貧困対策の取組について」)。これは、国や地域の水準とは関係なく、生きるうえで必要最低限の基準が満たされていない「絶対的貧困」とはまた異なるものだが、それでも予想以上に多く、驚くべき数字ではないだろうか。
■食糧飢餓問題において私たちができること
前述したように、今はまさに飽食の時代。飢餓というのは遠い国の話と捉えがちだが、社会の一般的なレベルに追いつこうと、食以外の環境を優先した結果、さらに深刻化しがちなのが先進国の飢餓問題だ。このため本人が自身を相対的貧困層だと自覚していない場合もあり、適切な支援が受けられなかったり、徐々に体調不良に陥ったりするという問題も起きているのだそう。
では、私たちに何かできることはあるのだろうか? いちばん身近なのは、NPOやNGO団体を通じて援助をすること。ありがたいことに、貧困層を助ける活動をしている団体は数多くあるので、そこを通じて困っている人たちを支援することができる。
団体によっては直接お金で支援できるところもあれば、未開封・消費期限内の食品を募っているところに食べ物を持ち込むフードバンク型、また、子どもたちに食事をふるまう子ども食堂などもある。団体に所属しなくともサポートできるところが多いので、ぜひ一度はトライしてみたいところだ。
「もうお腹いっぱい」「おいしくない」「余っちゃった」……そういって私たちが日々捨てている食べ物は、どこかの誰かが食べたくても食べられなかったかもしれない大切ないのちの糧。食品ロスをなくすことと同様に、身近な飢餓問題についても真剣に考える必要がありそうだ。
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フリーエディター/執筆家
新ファッションウェブマガジン「LIV,」女性ファッション誌のフリーエディターをしながら執筆家としても活動、いくつかの連載を掛け持ちする。アメブロやnoteなどのブログでは、大人の女性に役立つファッション・仕事・サステナブル・ライフスタイル・独自の人生哲学を発信。
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(フリーエディター/執筆家 乙部 アン)
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