「おじフード、おじドリンクが来る」サラリーマンの街・新橋に若者が増えている意外な理由
プレジデントオンライン / 2021年2月28日 8時15分
工藤 慶人くん/一橋大学経済学部2年生。男性
鈴木 俊太朗くん/慶應義塾大学法学部3年生。男性
安田 愛麻さん/慶應義塾大学総合政策学部2年生。女性
高杉 真由香さん/慶應義塾大学総合政策学部2年生。女性
矢追 耕太郎くん/早稲田大学政治経済学部2年生。男性
赤峰 沙都さん/法政大学国際高等学校2年生。女性
■有名スイーツのコラボ商品が話題
【原田】最近、若者の間ではどんな食べ物がはやっているんだろう。皆の周りで人気だったり、話題になっていたりするものを挙げてみてくれるかな。
【赤峰】お取り寄せスイーツで有名な「ミスターチーズケーキ」が、セブン‐イレブンとコラボした商品が話題です。
カップアイスとコーンアイス、それとチロルチョコともコラボした商品の3種類があってどれも人気。ミスターチーズケーキは、ステイホーム期間中に入手困難になるぐらい売れて「幻のチーズケーキ」と呼ばれていました。それがコンビニでいつでも楽しめるようになったのでうれしいですね。
■ステイホームだからこそはやるものも
【安田】これから来そうな商品では、「ダーティーコーヒー」があります。エスプレッソに泡立てたクリームをたっぷり注いでつくるドリンクで、韓国カフェの人気メニュー。カップからクリームがあふれる様子が、インスタ映えやTikTokでの動画映えにぴったりだということで人気が広がっています。前回の自粛期間中には、おうちで「ダルゴナコーヒー」をつくるのがはやったので、次はこれがブームになるんじゃないかと思います。
【原田】ミスターチーズケーキそのものは入手が難しくても、近くのコンビニで簡単に買えるのならとりあえず試してみたいと思うよね。ステイホーム期間にヒットした商品とコラボするのはいい戦略だと思ったよ。ダーティーコーヒーもそうだけど、今後は自粛期間中だからこそはやるものもたくさん出てきそうだな。
■ピノ アーモンド味「下からのPR」が絶妙
【赤峰】ステイホームとは関係ないかもしれませんが、ピノの「やみつきアーモンド味」も話題になりました。チョコアソートの中で人気だったアーモンド味だけを商品化したもので、発売が公式Twitterで発表された時は「いいね」が15万を越えたんですよ。今は売れすぎて販売休止になっちゃったみたい。
【工藤】アイドルがソロデビューする時みたいに、「ピノ アーモンド味の独立に関するご報告」っていう文章でPRしたんですよね。ちゃんと読むと広告だとわかるんですが、若者はTwitterの文章をじっくり読むことなんてあまりないから、第一印象で広告と感じさせないことが大事だと思うんです。普通の広告は企業との間に壁を感じることが多いけど、このPRは企業側が下手に出ている感じでよかった。僕は親近感が湧きました。
【原田】これからは、他の企業もこれぐらい思い切って若者目線のPRをしたほうがいいのかもね。今の子は上から目線で見られることを嫌うから。企業でも、距離感を縮めるために若い部下に対して下手に出る上司が増えているそうだよ。実際、そうすると親近感を持ってもらえる傾向があるそうなんだ。じゃあ次に、飲み物で最近はやったものはある?
■モス×獺祭のシェイクが大人気、“おじドリンク”がくる
【矢追】モスバーガーと酒造メーカーがコラボした期間限定ドリンク「まぜるシェイク 獺祭 -DASSAI-」は大人気になりました。アルコールは入っていませんが、「日本酒は飲めないけど味は知りたい」という若者に刺さったみたいです。
【原田】獺祭のシェイクが人気なのはちょっと意外だな。日本酒っておじさんっぽいイメージだと思うんだけど、なぜ若者が惹かれたんだろう。
【矢追】「おじドリンク」は今年くると思いますよ。それを買ってSNSに載せることで、大人の味がわかる自分をアピールできるから。獺祭のシェイクも、人気すぎて売り切れ続出だったそうです。
【安田】そういうドリンクを飲むと「通」になれた気がするのかも。おじさんの渋さがわかる自分、みたいな感じかな。若者の間では、おじさんの街って言われる新橋に飲みにいくのもはやっています。
【原田】新橋って隠れ家的な名店もあるけど、それより入りやすくて安く飲める店のほうが断然多いよ。「通」の人というより普通のサラリーマンが飲みに行く街だから、おじさんの間では別に渋くないんだけどな(笑)。
■若者はなぜ新橋に「通」を感じるのか
【安田】おじさんの街っていう部分を「渋い」とか「通」だと勘違いしている若者が多いのかな。おじさんが行くような、おしゃれでもキレイでもない店を好む自分かっこいい、みたいな。
【高杉】新橋のお店には、若者にも手が届くぐらい安いところも多いから、そこも魅力なのかも。でも、意外な街のおいしいお店を知っていると通っぽいっていう意識は、皆にあるような気がします。あと、他の若者が行くようなエリアじゃなくて、わざわざおじさんエリアの店を探索するのが「面白い人」みたいな感覚もありそうです。
【原田】本当の通を目指しているわけじゃなくて、自分が持っているバリエーションを増やしたいっていうことかな。渋谷だけじゃなくて新橋も知っているぞっていうような。自己ブランディングに近いものがありそうだね。
■「俺は新橋に行ってる」と言える自分
【工藤】そうだと思います。若者からすると、渋谷や新宿に行く人って普通なんですよ。その普通から少しズレて、「俺は新橋に行ってる」って言える自分が大事なのかも。他の人と差別化できるし。おじさんから見たら新橋って何てことのない街かもしれないけど、そういう若者にとっては特別感がある場所なんだと思います。
【鈴木】でもそういう人も、本当に汚い店や高い店には行かないですよね。おじさんが多すぎる店にも多分行かない。新橋なんだけど少し下北沢風な店とか、客層がサラリーマンでも20代半ばぐらいとか、そんな店が好まれると思います。
【原田】なるほど。獺祭もそうだけど、今はホルモンや餃子などの「おじフード」も若者の間で人気だよね。でも、昔ながらの店に行くんじゃなくて、若者向けにキレイに改装した店に行く人が多い。おじドリンクやおじフードを楽しむ、新橋を楽しむと言っても、あまりにディープなところは避けたいのかなと思ったよ。
この冬にはやった食べ物や飲み物には、さまざまな特徴があったように思います。外出自粛の影響を先読みした商品もあれば、PR戦略が成功した商品、また人と差別化したい若者心理をうまくつかんだものもありました。差別化という点では、新橋に「通」を感じる若者も出始めているようですが、あくまで入りやすい店だけを選んでいる様子。おじさんっぽい食べ物や飲み物、街などが注目されていると言っても、店づくりや商品づくりをする際には、若者向けに別途アレンジすることが必要だと思います。
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マーケティングアナリスト
1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年よりマーケティングアナリストとして活動。信州大学特任教授。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』などがある。2019年1月より渡辺プロダクションに所属し、現在、TBS「ひるおび」、フジテレビ「新週刊フジテレビ批評」「Live News it!」、日本テレビ「バンキシャ」等に出演中。「原田曜平若者研究所」のYouTubeチャンネルでは、コロナ禍において若者の間で流行っていることを紹介中。
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(マーケティングアナリスト 原田 曜平 構成=辻村 洋子)
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