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「親が貧乏だと就職も結婚もできない」日本の若者を待ち受ける地獄のルート

プレジデントオンライン / 2021年4月19日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/tuaindeed

■「学歴は社会の役に立たない」は本当?

「学歴なんか、社会では何の役にも立たない」

そんな言葉を耳にすることもあると思いますが、そう論じる本人自身はたいてい高学歴だったりします。高学歴ならば成功者になれるわけではないですし、成功者が皆高学歴であるというわけではありませんが、こと大部分の人にとって、学歴と生涯稼ぐ所得というのは、統計上は強い正の相関があります。要するに、高学歴ほど人生の稼ぎは大きいわけです。学歴別に生涯賃金を比較すると、それは明らかです。

厚労省の賃金構造基本統計調査の「退職金を含めない学歴別生涯賃金比較」によれば、大企業に就職した大卒男性の生涯賃金は約3億1000万円。対して、大企業に入った高卒は2億6000万円で、同じ規模の会社に入っても、大卒と高卒とでは生涯賃金に5000万円の差がつきます。さらに、小さい企業に入った高卒の場合は、生涯賃金は1億8000万円に下がるので、大卒大企業就職組と比較すると、ほぼ倍近い1億3000万円もの差が開いてしまいます。女性においても、この傾向は一緒です。

こうみると、将来の所得を考えるならば、勉強が嫌いと言っている場合ではなく、なんとか大学へ進学すべく努力したほうがいい、と言ってしまいそうですが、問題は本人の努力以前にあります。

そんな残酷な現実のお話をします。

■私大の授業料はどんどん高くなっている

文部科学省の学校基本調査(確定値)によれば、2020年度の4年制大学進学率は54.1%に達し、(短大も入れると58.5%)過去最高を記録しました。が、その一方で、進学した学生の親の負担が増え続けています。国立大学の授業料はともかく、私立大学の授業料の上昇率は、大卒の子を持つ親世代(45~54歳)の父親の平均給料の伸びよりはるかに高いものになっています。

つまり、親の給料はこの30年間全然上がっていないのに、大学の授業料だけは右肩上がりに高くなっているということです。グラフの数字は私立大学全体の平均値であって、理系、特に医学部など高額な授業料が6年かかる学部の場合はさらに負担が重くなります。

大学授業料と親の年収推移

親の負担は授業料だけにとどまりません。地方から東京など都市部への進学をする場合には、家賃や生活費の仕送りなども考慮しないといけません。仮に、月10万円の仕送りをしたとしても、年間120万円の出費で、これは私立大学平均授業料すら超えます。

都道府県別の大学進学率とその年齢の子を持つ40~50代が世帯主の世帯所得中央値(2017年就業構造基本調査)をみると、0.7という強い正の相関もあります。親の所得が子の大学進学率に直結している何よりの証拠です。

■子どもの将来は生まれる前から決まっている

このように、子の大学進学は、試験の成績だけではなく、親の経済力がないとそもそも無理なのです。親の経済力によっては進学そのものをあきらめる子もいるでしょうが、どうしても進学したい若者は、奨学金を借りて進学することになります。その先には、よりつらい現実が待っています。運よく大企業に就職できた学生はまだしも、給料の安い会社にしか就職できなかった場合には、その中から自分の生活費と奨学金の返済というダブルの支払いを課せられることになるからです。

本人の学歴によって将来の所得格差が生まれるという局所に目がいきがちですが、問題の本質は、生まれた両親の所得状況によって子どもの将来は決定づけられているという厳しい現実です。もっと、有り体にいってしまうと、「どんなに努力しても貧乏な家の子は貧乏だし、裕福な家の子は裕福になる」ということです。

良い大学に行ける子は親が裕福だから行けるのです。本人の学力や努力だけの問題ではありません。どんなに優秀で医学部に行きたいと子が願っても、貧乏な親ではその学費を払うことは不可能です。つまり、遺伝子のように貧乏も裕福も遺伝する、とも言えるわけです。

■さらに残酷な「親が貧乏なほど結婚しづらい」現実

今まで述べた通り、学歴は生涯賃金に直結します。そればかりではありません。親が貧乏なら結婚すらできないのです。

親が貧乏なほど、子の未婚率は高い

男性の30~40代、女性の50代に関しては、親が貧乏である人の未婚率が明らかに抜きんでて高い。前回記事で「結婚は消費である」という話をしていますが、まさに、「結婚は贅沢な消費」なのです。

現代の未婚者は200万~300万円の年収がボリュームゾーンです。親元に住んでいるならまだしも、その収入でひとり暮らしをするとなるとなかなかきついものがあります。それでも、20代男性や30代女性を見ると、親が貧乏でも未婚率が平均を下回っているところもあります。

婚活の現場では500万円以上の年収が「普通の男」とみなされたりする「浮世離れ理論」が幅をきかせていますが、実際、男性の平均初婚年齢での年収は200万~300万円が大部分です。夫婦合わせて400万~600万円の世帯収入があればなんとかやっていけることも確かです。

とはいえ、子どもが生まれて以降も夫婦ともにフルタイム就業できている夫婦も少なくなります。子育て期間中、仮に妻が専業主婦になったとして、夫の一馬力で果たしてやっていけるのか、と考えると不安になるでしょう。

常々言っていることですが、「結婚は経済生活」であり、お金がなければ継続できないことは事実です。2019年度の司法統計によれば、妻からの離婚申し立て理由の多くは「性格の不一致」という理由を除くと「生活費を渡さない(夫の経済問題)」がトップなのです。

■「金がないから結婚できない」は自己責任ではない

たとえ、貧乏でも家族が仲良く、毎日笑ってすごせればいいよね、という意見もあるかもしれませんが、親の経済力は、その子の将来に直結してしまいます。親が貧乏であるというだけで、「大学に進学できない→大きな企業に就職できない→給料が安い→結婚もできない」という地獄のルートが確定してしまうようなものなのです。

東京で大手町を横断する人
写真=iStock.com/FilmMaker2000
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/FilmMaker2000

少子化の最大の要因は、そもそも婚姻数の減少にあることは明らかです。日本史上最大の婚姻数を記録したのは第二次ベビーブーム時代の1972年の約110万組です。その翌年は209万人、翌々年にも203万人の子どもが生まれました。戦後すぐの第一次ベビーブームをのぞけば、これがもっとも近い「最後の200万人超え」で、それ以降出生数は減り続け、2019年確定報では、86.5万人まで落ち込んだことはご存じの通りです。

出生数が半分以下になりましたが、年間の婚姻数も59.9万組とほぼ半減しています。結婚した夫婦の生む子どもの数である結婚完結出生児数はほぼ2近い数字で推移しており、結婚すれば2人の子どもを生んでいます。つまり、少子化の根本的な原因は婚姻数の減少なのです。

そして、それを若者の草食化の問題にすり替えるような論法も的外れです。また、若者自身の所得の低下も彼らの責任ではありません。「金がないから結婚できない」という声に対して、それは自己責任だという意見もありますが、不都合な真実をいえば「親に金がないから結婚できない」といっても過言ではないのです。

■50年前の問題が今になって顕在化している

第二次ベビーブーム期の1970年代に生まれた子どもたちが、まさに今、大学生の年頃の子どもを持つ世代です。平成になって彼らが就職してからの30年間というもの、親世代の所得がまったく増えない「給料デフレ時代」に突入したことは間違いありません。そのしわ寄せは、確実にその子どもたち世代に襲いかかり、本人の意志や努力とは関係なく、若者たちは、進学も就職も結婚すらままならない「目には見えない十字架」を背負わされて歩かされているようなものでしょう。

生まれたばかりの赤ん坊
写真=iStock.com/minianne
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/minianne

「結果の平等」はないが「機会の平等」はあるという人がいます。本当でしょうか? 機会すら与えられない子どもたちは山ほどいます。進学したくてもできない、やりたい仕事にもつけない、結婚したくてもできない、そうした声にならない叫びが埋もれているのです。

勘違いしないでいただきたいのは、それを親世代の責任であると断じるつもりは毛頭ありません。親世代もまた被害者だからです。

未婚化や非婚化の問題を、若者の意識の問題や出会いがないという問題だけに矮小化してしまうと本質的な問題を見失います。視野を広げ、視座を変えれば、違った視点で見えてくるがあります。2世代にわたって、50年前からくすぶっていた経済構造上の問題が今まさにここで顕在化しているとは言えないでしょうか。

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荒川 和久(あらかわ・かずひさ)
コラムニスト・独身研究家
ソロ社会論及び非婚化する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。海外からも注目を集めている。著書に『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会―「独身大国・日本」の衝撃』(PHP新書)、『結婚しない男たち―増え続ける未婚男性「ソロ男」のリアル』(ディスカヴァー携書)など。韓国、台湾などでも翻訳本が出版されている。新著に荒川和久・中野信子『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。

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(コラムニスト・独身研究家 荒川 和久)

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