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客引きに出るガールズバーの女性が「容姿もやる気もイマイチ」である"本当の理由"

プレジデントオンライン / 2021年7月13日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SetsukoN

なぜガールズバーの女性店員は、店先でダラダラと客引きをしているのか。経営コンサルタントの高松智史さんは「ガールズバーの客引きは新規顧客を狙っているわけではない。リピーターに気づかれることが目的なので、かわいくてやる気のある店員を店先に出す必要はない」という――。(第2回/全3回)

※本稿は、高松智史『変える技術、考える技術』(実業之日本社)の一部を再編集したものです。

■彼女たちの「やる気のなさ」を二項対立で整理する

二項対立をマスターすると、「違う世界」が見えるようになる。

それを実感していただくために、ここでは理解しやすいよう、「ガールズバー」を題材にしよう(YouTube「考えるエンジンちゃんねる」でも語っているので、合わせて観てもらえるとありがたい、というか観なくてもいいから登録してください)。

駅前に立っているガールズバーの女の子、みなさんも一度は見たことがあると思う。お客さんを勧誘している彼女たちの前を通る度に、いつも不思議に思っていることを二項対立で整理していく。

このプロセスを見れば、二項対立の威力がわかるはずだ。ここでは「ガールズバーのオーナー」または、「お店の売り上げを高めたいと考えるコンサルタント」目線で考えていく。まず気になるのは、彼女たちの「やる気のなさ」。これを二項対立で整理すると、こうなる。

①「携帯を見ながら、やる気がない」「勧誘しようと、元気よく」

次に気になるのが、立っている女の子の「お顔立ち」だ。ガールズバーのビジネスモデル(=可愛い子と楽しく飲む)から考えると、「こんな子が?」という方はそうは見かけない。

②「可愛いような、可愛くないような子」「めっちゃ、可愛い子」

更に更に、駅前で突っ立っている彼女らの「やる気のなさ」から伝わってくる「いつまでこれやらせるのか?」という態度。ここから、

③「長期戦(ポケットティッシュ配りのように)」「短期決戦(ぱっと)」

という3つの二項対立が出てくる。

■「客寄せガールズ」のターゲットは誰か

ここで少し整理すると、よく見かけるガールズバーの女の子の多くは、①「携帯を見ながら、やる気がない」、②「可愛いような、可愛くないような子」、③「長期戦(ポケットティッシュ配りのように)」が当てはまりそうだ。ここまでは誰が見てもすぐにわかる、外見や様子の話だ。

次に、ガールズバー経営のビジネス構造という「見えない部分」を考察していく。ガールズバーの経営者が、どういう「狙い」があって、彼女たちを立たせているのか、その理由や意図を考えていくということだ。まずは、集客施策としてどういう目的があるのかに目を向ける必要があるだろう。

④「新規顧客狙い」「リピート客狙い」

が、まず気になる。あの「客寄せガールズ」のターゲットは、新規顧客か、はたまた、一度ご来店頂いたことのあるリピーターなのか? そして、実際にお店のメンバーの中から誰を立たせるか? を選ばなければならない(バーなので、店内で接客するメンバーとは別の稼働を確保しておく必要がある、ということだ)。

⑤「常時いるお店の子」「客寄せパンダ的な一時的な子」

の分岐も存在するので、計5つの二項対立があぶり出された。二項対立を使うだけで、「駅前に立っているガールズバーの子」から、色々なことがわかってきた。

プランAとプランB
写真=iStock.com/Andrii Zastrozhnov
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Andrii Zastrozhnov

■やる気がない店員はリピーターを狙っている

少し長くなってしまったので、整理しておこう(ついてきてくれてありがとう)。

①「携帯を見ながら、やる気がない」VS「勧誘しようと、元気よく」
②「可愛いような、可愛くないような子」VS「めっちゃ、可愛い子」
③「長期戦(ポケットティッシュ配りのように)」VS「短期決戦(ぱっと)」
④「新規顧客狙い」VS「リピート客狙い」
⑤「常時いるお店の子」VS「客寄せパンダ的な一時的な子」

①〜③は前者が概ね該当すると考えられるが、④⑤はどちらか、まだわからない。ここで、二項対立が本領を発揮する。未確定な情報があっても、ガールズバーオーナーの狙いがわかるのだ! 全部を「辻褄合わせ」にいく。まず④だが、このオーナーの集客対象は「リピート客狙い」であると考えられる。

なぜなら、来たことがあるお客さんが見つけてくれればいいから、①「携帯を見ながら、やる気がなく」てもいい。立っているだけで十分だから、やる気がなくてもいいのだ。であれば、⑤「常時いるお店の子」でなければ意味をなさない。

なにせリピート客狙いなので、たまにしかお店にいない女の子を立たせても、お客さんはその存在に気づかないからだ。リピート客がターゲットだとすれば、外見よりも「前にお店にいた子」というのが大事になってくるから、②「可愛いような、可愛くないような子」でもよい。

集客だけのために、あえてコストをかけて「めっちゃ、可愛い子」を用意するビジネスロジックは成り立たない。そして、リピート客に見つけてもらうのが目的なのだから、③「長期戦(ポケットティッシュ配りのように)」にするはずだ。

これで、おー、全部辻褄があった! となるわけだ。

■フリップに料金を記載するのは戦略的なのか

①〜⑤の二項対立が、「リピート客狙い」と仮定すれば、すっきりする。何も違和感なく、戦略通りだ。ふむふむ。

駅前に立っている「ガールズバー」の子は、そういう狙いだったわけかぁ……と、思ったはず。しかし、もう一つの二項対立が残っている。実はここからが、このお話の面白いところ。

残っているのは「ガールズバーの子が持っているフリップ」である。今度、駅前で見かけたら注意深く見てもらいたいが、フリップには「料金」が書いてある。「飲み放題2000円」とか、明朗会計と言わんばかりの内容だ。

ここでは料金が記載されているとしたが、「女の子の名前」を書く場合もある。ということで、フリップの内容も二項対立にしよう。

⑥「飲み放題2000円」「今日いる女の子の名前」

あれれ? おかしいぞ。フリップの内容が「料金」だと辻褄が合わない。「リピート客狙い」であれば、リピート客に対する「需要喚起」=“あそこのガールズバーにもう一回行ってみるか”が論点だから、フリップの内容は「今日いる女の子の名前」でないと、あかんやん。

本来であれば、「今日いる女の子の名前」でなければいけないのに……。いや、待てよ、今度は逆の「辻褄思考」をしてみよう。仮に⑥「飲み放題2000円」=「料金」だとすると、その狙いは安さに惹かれてやってくる「新規顧客」だ。

すると、他の二項対立は自ずと決まってくる。新規なのだから、「携帯を見ながら、やる気がない」姿勢では意味がない。

■「二項対立思考」を使えばビジネスの構造が見えている

①「勧誘しようと、元気よく」新規顧客に声をかけ、当然、②「めっちゃ、可愛い子」で、一回来てもらうための⑤「客寄せパンダ的、一時的な子」が求められる。ダラダラやっても新規は来ないから、③「短期決戦(ぱっと)」やん。

つまり、フリップの内容が「料金」だと、最初の5つの二項対立はすべて「逆」が正しい戦略に見えてくる。まとめると「リピート客狙い」なら、フリップのみが間違った戦術で、「新規顧客狙い」なら、すべて裏目の戦術やん、と、なるわけだ。

高松智史『変える技術、考える技術』(実業之日本社)
高松智史『変える技術、考える技術』(実業之日本社)

今回のガールズバーの例では、「集客のための目的と戦術があべこべやん」という「構造」が明らかになった。面白くない? 「駅前にいるガーズルバーの女の子」という題材でも、二項対立という思考を使うだけで、これだけ深く考えられる。

もし、ガールズバーを僕がコンサルするとすれば、この二項対立を1、2枚のパワーポイントのスライドにして、議論を始めるだろう。そうすれば、「新しい視点」や「ビジネス構造」を詳(つまび)らかにでき、濃い議論ができる。

その複雑な世界を、二項対立で紐解くと、面白いくらい「単純」な構造がお目見えする。ぜひ、二項対立を意識して、使ってみてほしい。

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高松 智史(たかまつ・さとし)
経営コンサルタント
カナタ代表取締役。一橋大学商学部卒。NTTデータ、BCG(ボストン・コンサルティング・グループ)を経て「考えるエンジン講座」を提供するKANATA設立。本講座は法人でも人気を博しており、これまでアクセンチュア、ミスミ等での研修実績がある。BCGでは、主に「中期経営計画」「新規事業立案」「組織・文化変革」などのコンサルティング業務に従事。YouTube「考えるエンジンちゃんねる」の運営者でもある。

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(経営コンサルタント 高松 智史)

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