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「驚愕の事実」すべての先進国で男子よりも女子の成績が高い科学的理由

プレジデントオンライン / 2021年7月30日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/shironosov

最先端の科学では人間の脳=こころの謎が次々明らかになってきている。著書『スピリチュアルズ「わたし」の謎』(幻冬舎)でその全貌を紹介した作家の橘玲氏は「すべての先進国では男子よりも女子のほうが成績が高い。男女に知能の差はないので、成績の差が生まれるのは『堅実性パーソナリティ』の性差が影響していると考えられる」という──。

※本稿は、橘玲『スピリチュアルズ「わたし」の謎』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。

■歴史上の英雄には「多動力」タイプが多い

イギリスの心理学者ダニエル・ネトルは、「今日では障害とされている注意欠陥・多動性障害(ADHD)こそが、かつては強さだったかもしれない」と述べる(※1)

ADHDと診断される子どもは堅実性スコアがきわめて低く、男の子の発症率は女の子の5倍と明らかに性差がある。

橘玲『スピリチュアルズ 「わたし」の謎』(幻冬舎)
橘玲『スピリチュアルズ「わたし」の謎』(幻冬舎)

これは、(男の役割とされた)旧石器時代の狩猟で、目の前の刺激に対して素早く反応した方が有利だったことの名残だと考えられている。事実、プロスポーツの世界ではADHDの若者が成功している例がいくつもある。

堅実性が低いと「衝動的」「不真面目」「いい加減」などネガティブなレッテルを貼られるが、つねに不利なわけではなく、異性から「ぶっ飛んでいて魅力的」と思われたり、革命家やアジテーター、あるいは芸術家として成功することもある。

歴史上の英雄には、現代ならADHDと診断されるであろう「多動力」タイプが多い。

このことは、そもそもADHDが「病気」ではないことを示している。それは人類が進化の大半を過ごしてきた(旧石器時代の)環境では、きわめて有利なパーソナリティだった。

それが「発達障害」とされるようになったのは、わたしたちが生きているのが、人類の進化が想定しないほど「とてつもなく安定した社会」だからだ。その結果、本来であれば「正常」なパーソナリティが「不適応」になってしまったのだ。

※1 ネトル『パーソナリティを科学する』白揚社

■「女の方が男より真面目だ」といわれる理由

安定した現代社会では、「いま、ここの自分」より「いつか、あそこでの自分」に配慮できた方が有利なことは間違いない。とはいえ、堅実性スコアが高ければ高いほどいいというわけではない。

精神医学で強迫性パーソナリティ障害(OCPD)と呼ばれる症状は堅実性が極端に高く、全成人のおよそ2%がこの診断基準にあてはまる。

興味深いことに、OCPDと診断されるのは男性が女性の2倍で明らかな性差がある。特定のジャンルの商品を大量に入手し、完全なコレクションをつくることに人生を懸けたりする熱狂的コレクターも男に多い。

堅実性が極端に低いADHDは男が女の5倍で、堅実性が極端に高いOCPDは男が女の2倍ということは、堅実性の分布のばらつきが男の方が大きいことを示している。

その結果、(男が両極にばらついているのだから)堅実性の平均近くでは女の割合が高くなる。これが、「女の方が男より真面目だ」といわれる理由ではないだろうか(図表1)。

男と女の堅実性の分布
出所=『スピリチュアルズ「わたし」の謎』より

■男の子が劣化していく

アメリカにおいては、女子は小学校から大学まで、すべての学年で男子より成績がいい。

13歳と14歳の中学生で作文や読解が熟達レベルに達している男子は4分の1にも満たないが、女子は41%が作文で、34%が読解で達している。

2011年には男子生徒のSAT(大学進学適性試験)の成績は過去40年で最低だった。また、学校が渡す成績表の最低点の70%を男子生徒が占めていた。

これはアメリカだけの現象ではなく、OECD(経済協力開発機構)の調査によると、先進国のすべてで男子は女子より成績が悪く、落第する生徒も多く、卒業試験の合格率も低い。

スウェーデン、イタリア、ニュージーランド、ポーランドといった国々では、PISAテスト(15歳を対象とした国際学習度到達調査)の読解力部門で女子が男子をはるかに上回り、1学年から1学年半も先を行っているという結果が出た。これでは同い年の男女を同じクラスで教えるのは困難だろう。

カナダとオーストラリアでは、すでに大卒者の60%が女性だ。イングランドでは大学の入学申込者は女子4人に対し男子は3人以下、ウェールズとスコットランドでは、女子の申し込みが男子より40%も上回り、恵まれない家庭ではこのギャップがよりいっそう大きくなっている。

■知能が高いほど堅実性は低くなる

日本でも「女の子の方が男の子より優秀」と当たり前のようにいわれるが、男女の知能に(平均としては)差はない(男は論理・数学能力に優れ女は言語的知能が高いとか、知能のばらつきは女より男の方が大きいという研究はある)。

だとすればこれは、堅実性パーソナリティの性差が影響しているのではないだろうか。女の子の堅実性は平均付近に集まるのに対し、男の子は堅実性が高い方にも低い方にもばらついている。

その結果、堅実性が低い男子生徒が学校教育から脱落しはじめていると考えればこうした現象に説明がつく。

現代社会では、「賢くて真面目な子どもは成功する」と信じられている。これは間違いとはいえないが、奇妙なことに、知能と堅実性には(わずかに)ネガティブな関係があるらしい。知能が高いほど堅実性は低くなるというのだ。

これは常識に反するようだが、頭が切れるひとは前もって準備しなくてもうまくやれてしまうため、わざわざ手間暇をかけて訓練を積む必要がないと考えれば理解できるだろう。高すぎる知能は堅実性を引き下げる効果があるのかもしれない。

最後に「勤勉な日本人」と堅実性の関係だが、いまのところ人種別に堅実性スコアを比較した研究はないようだ。だが、ヒト集団で生得的なちがいがないとしても、日本人の堅実性のレベルが高く見える理由はシンプルに説明できる。

外向的なひとは欲望に向かう強力なエンジンをもっており、内向的な性格はエンジンの出力が弱い。これはアクセルを思いきり踏んでもスピードが上がらないのと同じだ。

大馬力のエンジンを制御するには強力なブレーキが必要だが、出力の弱いエンジンなら簡易なブレーキでもなんとかなる。内向的な(エンジンの馬力が小さい)日本人は、平均的なブレーキ(前頭葉の活動)でも堅実性スコアが高くなり、高い神経症傾向の影響もあって、電車の時間を1秒単位で管理するようになるのではないだろうか。

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橘 玲(たちばな・あきら)
作家
2002年、小説『マネーロンダリング』でデビュー。2005年発表の『永遠の旅行者』が山本周五郎賞の候補に。他に『お金持ちになる黄金の羽根の拾い方』『言ってはいけない』『上級国民/下級国民』などベストセラー多数。

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(作家 橘 玲)

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