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「うちの上層部はバカばっかり」仕事のできない高学歴社員ほど会社の愚痴を吐くワケ

プレジデントオンライン / 2021年8月4日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/franckreporter

誰もが一目置く大学や大学院を卒業しているのに、仕事のできない人がいる。マーケティングコンサルタントの酒井光雄さんは「過去の栄光を引きずったまま、無自覚であることが最大の原因だ。彼らには共通する残念な思考法がある」という――。

■使えない高学歴な人は、どんな組織でも見つかる

誰もが一目置く大学や大学院を卒業して企業に就職したのに、どういうわけだか仕事ができない人がたまにいます。読者のまわりにも、そういうタイプの人が見つかるはずです。

難関校に合格して卒業した人は、頭がよくて仕事ができると周囲から思われがちです。ところが予想された成果がでず、あるいはリーダーとして人心をつかめずにいると、社内での評価は逆に厳しく風当たりは強くなります。

なぜ仕事ができない高学歴社員が現れるのでしょうか。

学生時代に周囲から評価される基準は、学校の成績やスポーツ競技の力量でした。学生時代の評価基準なら、それで良かったでしょう。しかし有名校出身という評価が社会で通用するのは就職活動の段階までです。社会に出て企業で働くようになると、人心をつかむリーダーシップと共に仕事の成果・結果が問われてきます。

高学歴なのに仕事ができない残念な人が生まれるのは、思わぬところに原因が潜んでいます。それは輝かしい過去を引きずったまま、本人が意識せずに現在を生きているところです。

■高学歴社員が引きずる「過去の栄光」という病

①高すぎる自己評価

学生時代に勉強ができ、偏差値の高い大学や海外への留学、MBAを取得した人の中には、勉強ができるという自負がおのずと高くなります。

「あれだけ狭き門を突破できたのだから、仕事でも恐れるものはない」
「主席を続けられたのだから、会社でも当然そうなるはずだ」

などと考えがちです。

勉強ができれば仕事もできると思い込みやすいのですが、皆がそうなるわけではありません。

②一つの正解を求める偏差値教育の呪縛

学校の教育とそれを測るテストでは、「答はひとつ」「選択肢から正解を選ぶ」という設問が多くなります。しかし実社会では答がいくつも存在し、考えられる方向性の中から最善策を導き出すことが要求されます。ビジネスで結果を出す方法はひとつではなく、その方法を導きだすプロセスも千差万別です。

学校の勉強で答えを導き出す時は、参考書を見ればそこに手順が解説されていました。しかし実社会で個別企業が取るべき戦略や戦術は、自分たちの手で独自に考え出すことが必要です。経営書やビジネス書があっても、自社に最適な答は残念ながら記されていません。ネット検索で、企業や組織が必要とする正解が見つからないのと同じです。

■100%の完成度を無意識に求めがちになる

ちなみに学校の先生は、大部分の人にビジネス経験がなく、ビジネスを通じてお金を稼いだ実績もありません。そのため教師はビジネスでは必須といえる商才を備えていない人が大半で、商才について教えることはできません。

お金を稼ぐことに後ろ向きだったり後ろめたさを感じたりしている先生もいますから、社会で私たちが必要になるお金の知識は学校では習得できません。これは私たち全員に共通する教育の課題ともいえます。

③完璧主義とプライド

学校で勉強ができた人の中には、時に完璧主義の人が出現します。自分で出来ることは他人もできると思い込んでしまう人が好例です。他人への要求レベルが非常に高くなり、それが原因でメンタルストレスやパワハラの原因を起こしやすい素地が生まれます。

マークシートを鉛筆で塗りつぶす手元
写真=iStock.com/molaw11
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/molaw11

学生時代にテストで100点を取ってきたため、実社会でも100点満点の答えを出そうする習慣が続く人もいます。仕事はテストではないですから、100%の完成度よりも時間を最優先する場合もあります。学生時代の習慣が、無駄に時間を掛けてしまうことにつながるケースもあります。

また学校での成績が優秀だと、先生はもとより周囲の人たちからも一目置かれてきたせいで、どうしてもプライドが高くなります。このプライドが高くなりすぎると、自分のやり方や自分のルール・方法論を変えることができなくなり、自分のやり方に固執して頑固になる人が出てきます。職場にとってはいずれも、チームを乱す要素になりかねません。

■仕事ができない高学歴社員が生まれる根本原因

学生時代に受けた賞賛や評価が高ければ高いほど、実社会では通用しない思考や行動が表面化し、その弊害が生まれることがあります。高学歴社員として周囲から受けた評価とそこで生まれたプライドによる弊害とは、実社会での経験を生かせないところに潜んでいます。

①「IQは高いのに、EQが伴わない」共感を得られず、人望も集まらない

実社会では多様な人たちが生活しています。経済的理由から大学などに進めず社会に出た人が、努力を重ねて結果を出している事例は数多くあります。このような人たちと共に仕事をしていくとき、人の心の痛みや挫折が理解できない人は共感されず、ついて行く人はいなくなります。

頭を抱える、スーツを着た人
写真=iStock.com/Asia-Pacific Images Studio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Asia-Pacific Images Studio

学歴は高くなくても、企業を成長させている経営者は数多く存在します。彼らの中には学歴のコンプレックスをバネにして努力を続ける人もいます。そんな人たちは失敗を知らずに生きてきた人をすぐに見抜き、「きれいごとしか知らないエリートに、何がわかるのだ」と心の中でつぶやきます。

挫折や学歴コンプレックスなど心の痛みを持つ人は、世の中に大勢います。挫折した経験が、後の人生で飛躍につながることを知らずにいると、人の心を察するEQ(心の知能指数)が高くなりません。

②できる方法よりも、できない理由づけがうまくなる

勉強を通じて多くの知識と事例を知っていると、そのセオリー通りでないと物事はうまく進まないと早合点してしまう場合があります。実社会ではやってみなければわからないことがたくさんあり、行動を起こし、都度修正しながら前に進めていくのがビジネスの流儀です。

■知識ばかりの評論家は会社に求められていない

多くの知識と事例を知れば知るほど、当事者意識が希薄になり、評論家になってしまう人も出現します。勉強ができる人は論理的に説明することに長けているので、できない理由を列挙することが上手です。

「それはアメリカの企業が昔挑戦して、失敗していますよね」
「日本では過去の事例から判断して、その市場は生まれないでしょう」

といった具合です。

しかしできない理由を説明する人のために、企業は給与を支払っているわけではありません。どうすれば実現できるかを考えて行動を起こさないと、使えない人の典型になってしまいます。

③失敗を避ける意識が強くなる

学生時代を通じて失敗した経験がないと、新たなことに挑戦する意欲よりも、失敗することを恐れてしまう人が出てきます。これが行動力につながらない理由です。

④自分と違う人を受け入れられない

高学歴の人の中には、自分は頭がいいのに会社から正当な評価を受けていないと感じてしまう人が現れます。この思いがつのると、鬱憤(うっぷん)がたまっていきます。

その結果、

「うちの上層部はバカばっかりだ」
「自分ならこうはしない」
「この会社には先がない」
「こんな会社なら、いつでも辞めてやる」

といったことを口に出す人が生まれます。

周囲の人たちからは、

「そう思うなら自分でやればいいのに」
「挑戦もせずに、批判ばかりしている人だ」

と思われ、結果として孤立していきます。

■高学歴社員と職場の距離がますます広がる悪循環

⑤無自覚な上から目線とマウンティング

学生時代に他人よりも優秀だったという経験が、時に人を傲慢にさせることがあります。

「(二流校のくせに)生意気だ」
「そんなことも知らないのか」
「それくらい常識でしょ」
「レベルが低いよ」

こうした表現がつい口に出てしまったり、心の中でつぶやいたりしていると、他人には伝わってしまいます。マウンティングする人も同様です。

実は私にも経験があります。大企業の経営者ですら呼びつける力を持つと言われる中央官庁に勤務する課長職の人物に、仕事でヒヤリングした時でした。あまりに上から目線の物言いに辟易(へきえき)としたせいか、翌日私は熱を出して寝込んでしまいました。

⑥「評価が低い理由が分からない」不平不満が口癖になる

自己肯定感として機能するプライドや、倫理観や品格に繋がるプライドは、人間には必要です。しかし学歴の高さだけをよりどころにしている人が、自分のプライドを傷つけられると厄介な事態を生じさせます。パワハラや陰湿ないじめに結びつくことがあるからです。

「同期の中で自分だけ評価が低いのは納得できない」
「こんなレベルの低い部署に、なぜ自分は異動したんだ」

こうした発言の裏には、学歴というプライドを傷つけられたという思いが潜んでいます。

■仕事ができる人は、挫折を知っている

勉強ができたことは、誇れることです。しかし過去の評価にとどまらず、現在と未来に向けて結果を出せるように日々取組み、ビジネスで必要な知見と判断力を磨き続けることは欠かせません。

ビジネスで求められる答はひとつではなく、最善策を考え出して結果が出るように行動することが欠かせません。その上で部下や同僚、外部の人たちとチームを組み、実現に向けて取り組んでいくことになります。

経済ジャーナリスト岸宣仁さんは新著『財務省の「ワル」』(新潮新書)の中で、以下のようにつづっています。

『高級官僚、とりわけ財務官僚には、「挫折を知らないエリート集団」というイメージが常について回る。だが実際は、寄り道せずに最短距離で財務省に入るより、多少回り道した人のほうが最後の栄冠を手にする確率が高いのは、どんな理由によるのだろう。(中略)それは人として考えれば当然の結論ともいえるが、心の温かさが滲み出る人間味であり、もっと砕けた言い方をすれば、愛嬌や可愛げといった人間性の豊かさを示す何かである。財務官僚に限る話ではないが、どんな世界でも回り道をした人のほうが、人間味を感じさせるプラスアルファを持っているケースが多い。(中略)あえて単純な物言いが許されるなら、偏差値教育による学校秀才と、組織でもまれる社会人秀才とは別物、ということを言外に示唆しているのではないだろうか』

学校教育では学べなかったことを実社会で経験し、それを生かした人にチャンスが訪れることを知ると、凡人の自分としてはとても救われる思いがします。

偏差値教育が生んだ「学校秀才」に決定的に欠けているものは、挫折です。心が完全に折れてしまう挫折は害悪でしかありませんが、再起可能な挫折はむしろ自身の人間力を高め、職場で求められるスキルの土台になります。

高学歴でも仕事ができない人は、このコラムを読んでくれないかもしれませんが、学歴の高低にかかわらず自分の弱さに向き合った経験がある人は強く、また等しく「社会人秀才」への道は開かれているのです。

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酒井 光雄(さかい・みつお)
マーケティングコンサルタント
学習院大学法学部卒業。事業経営の本質は「これまで存在していなかった新たな価値を生み出し、社会に認めてもらう活動」であると提唱。価値の低いものはいつの時代も、必ず価格競争に巻き込まれ、淘汰されていくとして、一貫して企業と商品の「価値づくり」を支援している。日本経済新聞社が実施した「経営コンサルタント調査」で、「企業に最も評価されるコンサルタント会社ベスト20」に選ばれた実績を持つ。著書に『不況を乗り切るマーケティング図鑑』『デジタル時代のマーケティング・エクササイズ』(共にプレジデント社)、『全史×成功事例で読む「マーケティング」大全』、『成功事例に学ぶ マーケティング戦略の教科書』(共にかんき出版)、『コトラーを読む』『商品よりもニュースを売れ! 情報連鎖を生み出すマーケティング』(共に日本経済新聞出版)、『価値づくり進化経営』『中小企業が強いブランド力を持つ経営』『価格の決定権を持つ経営』(共に日本経営合理化協会)、『図解&事例で学ぶマーケティングの教科書』(監修)『男の居場所』(共にマイナビ出版)など多数ある。プレジデント社のオンラインサイト「プレジデントオンライン」で連載コラムを執筆し、多くのファンに支持されている。日経BP社が主催する日経BP Marketing Awardsの審査委員を長年務めている。http://www.ms-bgate.com/

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(マーケティングコンサルタント 酒井 光雄)

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