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「電気代は2030年まで毎年必ず高くなる」毎月こっそり徴収される"隠れ税金"の正体

プレジデントオンライン / 2021年8月23日 15時15分

画像=経済産業省 資源エネルギー庁「固定価格買取制度とは」より

電気料金の明細に「再エネ賦課金」という見慣れない項目があるのをご存じだろうか。「EnergyShift」発行人の前田雄大さんは「電気代は基本料金のほか、『再エネ賦課金』が徴収されている。平均的な家庭では月1300円程度だが、これは2030年まで上がり続けることが決まっており、家計の圧迫は避けられない」という――。

■省エネをしても電気代が安くならないワケ

夏真っ盛りのこのシーズン。連日のように30度以上の真夏日が続き、寝苦しいと感じる夜も増えた。そこで欠かせないのがエアコンの冷房だが、後日、電気代の請求額に驚き、もう少し省エネしておけばよかったと後悔することも多いだろう。

どうせ電気代を支払うなら安く済ませたいが、実際は省エネだけではなかなか難しい。原因の一つは、電気料金に上乗せされた“ある料金”の存在が挙げられる。

それが再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)だ。

私たちが支払っている月々の電気代には、電力会社に支払う電気料金の他に、この再エネ賦課金が含まれている。電気明細を見るとしっかりこのように書いてある

この再エネ賦課金は、消費者がどの電力会社と契約していようとも、一部の大量電気消費している企業の特例を除き必ず支払う必要がある。

2021年度の単価は1kWhあたり3.36円。契約者数が最も多い東京電力の従量電灯Bプラン(120kWh~300kWh)の単価が26円台であるため、10%以上もこの再エネ賦課金が電気料金に上乗せになっているのだ。

一般的に、4人世帯の電力消費は月平均400kWhと言われている。その条件だと電気料金に上乗せされる形で、各家庭は月1300円程度、年間約1万5000円を負担している。

■再生可能エネルギー発電促進賦課金とは何か

そもそも再エネ賦課金とは何なのか。この問いに対して簡単に答えるならば、日本で導入された再生可能エネルギーに対する「国民の負担金」という表現が一番シンプルだろう。

この制度は、2012年に始まった再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)を抜きには語れない。この制度は、再エネの導入促進を目的として導入されたが、そもそも当時は再エネが容易に普及するような状況にはなかった。

そこで政府は再エネを導入・促進する目的で再エネで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度を設計した。いわゆる政府保証だ。民間事業者にとって投資回収ができるめどが立つなどの予見性の提示が必要であり、政府が民間事業者の参入を促すためにインセンティブを設け、目的を達成しようとした。

ただ、政府が保証をするにしても、その買取保証の原資が必要となる。

そこで電力会社が買い取る費用の一部を、賦課金という形で国民(電気の利用者)から広く徴取する形が採用された。それが再エネ賦課金である。

したがって利用者が再エネ推進を好む、好まざる関係なく、基本的に一律に、利用者へ賦課金がかけられる格好となった。

■再エネ普及の一方で、“難あり”の制度に

電力事業は大規模なインフラ建設を伴い、再エネにかかわらず初期投資には大金が必要になる。電力会社は、発電・送電などの電気に関連するコストを電気料金に上乗せし、国民に転嫁するという手法を採っていた。これがかつて採用されていた総括原価方式だ。

したがって、いま稼働をしている火力発電や原子力発電のコストも電気代に反映をされてきた。この点を踏まえれば、再エネの発電所建設コストが再エネ賦課金として国民負担になること自体はおかしな話ではない。

問題なのは制度設計だ。そもそも民間事業者の参入を呼び込み、再エネの導入・促進を図るために固定価格買取制度の買取単価が非常に高く設定をされ、国民の負担は大きくなった。

例えば産業用の太陽光からの買取単価は初年度は1kWhあたり40円。現在家庭が使用している電力単価は高いレンジであっても30円強であることを考えれば、採算性を無視して再エネの導入が図られたことが分かる。

ソーラーパネル
写真=iStock.com/chinaface
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/chinaface

新しいことを導入する時にはコストは付き物だと考えることもできるし、この制度の下で再エネ自体のボリュームが増えたのも事実だ。これを「功」とするならば、一方で結果論かもしれないが、高く設定された買取価格によって「罪」の部分も現れた。

■“高価買取”の功罪……制度が生み出したひずみ

再エネ参入事業者の利益が保証されたため生じたひずみがある。

国産の太陽光パネル生産が好例だろう。2000年代中盤には世界シェア4割超で世界1位に君臨していたが、今では1%台まで落ち込んでいる。コスト削減の企業努力が進まなくなった結果、メーカーも含めてイノベーションが起きにくい土壌となってしまった。

脱炭素時代の本格到来となったこの2020年代において、世界に誇った“日の丸ソーラー”は世界でまったく勝負できないセクターとなってしまった。

再エネのために豊かな自然が犠牲になるという本末転倒な現象も生じた。山林を切り崩して大規模な太陽光発電施設を造成する事例あった。高価格での買取保証ゆえに、それでも事業者は利益が期待できたからだ。

地元との軋轢を生むケースが出てきたのも、固定価格買取制度が始まった当初の特色と言えよう。

■買取価格は下がっても、賦課金は2030年まで上がる

導入当初の買取価格こそ高いものの、価格は年々緩やかに下げる制度設計になっている。事実、先ほど紹介したように初年度(2012年度)は40円だった産業用太陽光の買取価格は、今年度第1四半期は11円が上限になっている。

もちろん気象などの自然条件に発電が左右される特性はあるものの、発電コストだけで見れば、この買取価格はすでに他の電源と同等程度、あるいは安い水準になっている。

再エネ業界も徐々に淘汰が進展し、まっとうな経営をしている筋肉質な企業が生き残る格好になってきている。また、大規模造成を伴う発電所開発は採算がとれにくくなり、各種問題はようやく是正されつつある。

だが、それとは逆に、電気の利用者が負担する賦課金は当面上がり続ける。制度上2030年までは上がり続けるのだ。

その理由を簡潔に言えば、再エネの導入時のコスト負担を、将来に先送りにする設計にしたためだ。

環境省[環境省,2013]の分析結果(2030年までの導入量に対する賦課金単価)
環境省[環境省,2013]の分析結果(2030年までの導入量に対する賦課金単価)

固定買取制度の下では、産業用の発電では20年間の買取が約束されている。したがって、初年度1kWhあたり40円という高い価格設定で政府が買取保証した分、利用者の負担は20年間続くことになっている。

そして、毎年の負担分が上乗せされていく。その間、いくら再エネの発電コストが安くなろうが、導入された再エネの量が増えれば増えるほど、この再エネ賦課金は増え続けることになる。それは制度上、そのように設計されているので当然の帰結である。電力中央研究所によれば、2030年時点で1kWhあたり最大4.1円になるという。

■2030年以降も再エネ賦課金は上がる恐れも

そうなると気になるのが、ピークを越えた2030年以降の賦課金だ。政府の元々の試算では、2030年ごろをピークに再エネ賦課金が下がる想定だ。

しかし、いまは制度が設計された当時と前提が異なっており、完全な脱炭素時代に突入をしている。2050年カーボンニュートラルに向けては再エネの大幅導入なくして達成は難しく、現在素案が発表されているエネルギー基本計画でも2030年に向けて再エネを大幅に増やすことが盛り込まれている。

2014年度から洋上風力発電プロジェクトの電力に対する固定価格買取制度が始まった。この構図は太陽光の初期と同じであり、コストの低減が図られるまでは参入を促進するため、買取単価を高く設定をせざるを得ない。2021年度の単価はいずれも30円を超えている。

風力タービン
写真=iStock.com/TebNad
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/TebNad

これらの再エネの導入が進んだ場合、再エネ賦課金の上昇要因となる。つまり、元々予定されていた2030年以降の負担金の低減のスピードを上回る速度で新規の再エネ導入の負担増が生じた場合、2030年以降も継続して再エネ賦課金は上昇する恐れがある。

■太陽光の発電コストは劇的に低下しているが……

賦課金は2030年までは確実に上がり、少なからず家計を圧迫することは確かだ。

しかし近年、太陽光の発電コストは劇的な低下し、世界の発電コストの平均は10年間で5分の1以下となった。まさに太陽光発電は「安価な電力源」へと成長を遂げた。

経済産業省は、このほど2030年の電源別発電コスト試算の結果を公表した。

これによると、太陽光の発電コストは事業用で8円台前半~11円台後半(円/kWh)、住宅用で9円台後半~14円台前半。対して、既存の原子力は11円台後半~、LNG火力は10円台後半~14円台前半、石炭火力は13円台後半~22円台前半と、太陽光発電の優位性を裏付ける結果となった。

太陽光発電のコスト自体は今後も下がると見込まれており、家計の電気代を押し下げる効果が期待できる。しかし、これまで述べてきたように年々上がり続ける再エネ賦課金を利用明細で目にするたび、利用者は再エネに対する不信感を募らせるだろう。

再エネ賦課金の制度が致命的な欠陥を抱えているとしたら、まさにこの点である。

■最大の問題は“ブラックボックス化した電気料金”

そもそもの問題をたどれば、電力料金がブラックボックス化していることにたどり着く。

インフラ建設には初期投資が必ずかかるものであり、それは何も再エネだけではなく、これまでも電気代に転嫁されてきた。にもかかわらず再エネだけ賦課金という形で負担金が明記され、火力や原子力のコスト分はひっそりと電気代に上乗せされている。

特に原子力は、安全確保の追加費用や事故リスクの対応費用などのコストがかかる。火力も世界的な脱炭素の流れの中で、CO2排出対策の費用はかさむことが見込まれる。

電力料金の見える化が進めば、発電コスト減が続く再エネの恩恵を利用者も認識できる。また、どの電源を選択するのが安価で適切か、利用者の理解は一層進むことになるだろう。

■安価になった再エネの恩恵を享受できる仕組みが必要だ

制度設計上、これからも再エネ賦課金が上がるという報道は毎年続くことになる。指摘したように、必ず上がるように設計されていること自体も問題であるが、真に問題なのは、そうした表層的なところに大事な事実が隠れてしまっていることだ。

電気料金がブラックボックス化していることや、再エネコストの低下を利用者が実感しにくいというのも根本的な問題だ。また、脱炭素時代に再エネにシフトしていくことについて国民理解を得られにくい仕組みになっていることも今後大きな問題となるだろう。

日本は資源が乏しい。年によっては年間25兆円を超えるお金を、日本は化石燃料の調達のために海外に支払っている。また、エネルギー供給の外国依存は極めて高く、エネルギー安全保障上の脆弱性も抱えている。

再エネの拡充が進み、エネルギー自給率が向上すれば、これまで海外に支払ってきた国内資産が国内に循環することにもつながる。再エネ賦課金にばかり焦点が当たってしまえば、こういう大局は見えてこない。

脱炭素化の国際的な流れは決定的だ。利用者の負担軽減を念頭に、これからについては国民負担の在り方を見直すとともに、ブラックボックス化した電気料金を見える化するなどの改善が必要だ。再エネの恩恵を、多くの国民に享受されてこそ、脱炭素化ははじめて実現しうると考える。

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前田 雄大(まえだ・ゆうだい)
元外務省職員、EnergyShift発行人兼統括編集長(afterFITメディア事業部長)
1984年生まれ。2007年、東京大学経済学部経営学科を卒業後、外務省入省。開発協力、原子力、大臣官房業務などを経て、2017年から気候変動を担当。G20大阪サミットの成功に貢献。パリ協定に基づく成長戦略をはじめとする各種国家戦略の調整も担当。2020年より現職。日本経済研究センターと日本経済新聞社が共同で立ち上げた中堅・若手世代による政策提言機関「富士山会合ヤング・フォーラム」のフェローとしても現在活動中。自身が編集長を務める脱炭素メディア「EnergyShift」、YouTubeチャンネル「エナシフTV」で情報を発信している。

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(元外務省職員、EnergyShift発行人兼統括編集長(afterFITメディア事業部長) 前田 雄大)

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