1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

「睡眠の悩みは食事で改善できる」朝に食べると夜ぐっすり眠れる"ある食べ物"

プレジデントオンライン / 2021年9月9日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Viacheslav Peretiatko

寝つきの悪さは、どうすれば改善できるのか。早稲田大学先進理工学研究科の柴田重信教授は「睡眠の悩みは食事で改善できる場合がある。たとえば朝食でタンパク質をたっぷり摂れば、夜間のメラトニンの分泌量が増加して睡眠が改善することが知られている」という――。

※本稿は、柴田重信『食べる時間でこんなに変わる 時間栄養学入門 体内時計が左右する肥満、老化、生活習慣病』(ブルーバックス)の一部を再編集したものです。

■いくつかのアミノ酸に睡眠改善作用が知られている

最近、食品や食品成分で、体内時計に作用する可能性があるものが、報告されつつあります。

ただ、機能性表示食品の分類では、体内時計の変調を改善する作用を表示することは認められていません。一方、睡眠に対する表示は認められていて、機能性表示では睡眠改善効果となっています。もちろん、体内時計は入眠や起床など睡眠行動を強く支配しているので、食べたものが体内時計に作用し、結果的に睡眠の改善が期待できることもあるでしょう。

実際いくつかのアミノ酸に、睡眠や体内時計に対する作用が知られています。そのなかで、ここではグリシン、トリプトファン、L-セリン、γ(ガンマ)-アミノ酪酸(GABA)、テアニン、オルニチン、ヒスチジンなどのアミノ酸について、またそれ以外の食品成分や化合物、生薬についても解説していきます。

マウスの実験においては、いろいろな食品や食品成分あるいは漢方薬などが、時計遺伝子発現に影響を及ぼすことが報告されています。一方で、ヒトを対象とした研究においては、体内時計に影響を与えると明確にわかっている食品類はまだ少ないのですが、わかってきているものもあり、少し紹介したいと思います。図表1に、以下の食品成分の働きをまとめています。

【図表1】食品成分の働き
出所=『食べる時間でこんなに変わる 時間栄養学入門 体内時計が左右する肥満、老化、生活習慣病』

■シジミは睡眠の改善につながるかも

アミノ酸をいくつか紹介していきますが、まずはシジミに豊富に含まれているオルニチンです。シジミから成分を濃縮したものや、合成などで作られたものが市販されています。一般的には疲労回復や二日酔い、あるいは睡眠に良いといわれています。

我々は、オルニチンをマウスに投与することで、血中GLP-1(食事を摂って血糖値が上がると、小腸にあるL細胞から分泌され、膵臓のインスリン分泌を促進する働きのあるホルモン)の上昇とインスリン濃度の上昇が見られ、それが肝臓の時計遺伝子、Per2の位相シフトを引き起こすことを報告しました。さらに我々は、マウスの細胞の研究から、このように時計遺伝子に作用する可能性を見出していたので、ヒトでの研究も行いました。

中高年の健常者にお願いし、1週間にわたって毎日、試験食品のオルニチン400mgを就寝前に飲んでもらいました。比較のために影響の出ない対照食を飲んでもらう対照群と共に、夕方から23時近くまで、薄暗い中で唾液を採取し、メラトニンの量を調べました。このメラトニンの分泌リズムを調べる方法は視交叉上核の体内時計を間接的に観察できる方法として広く用いられているものです。

今回のオルニチンの実験はクロスオーバー試験(すべての被験者が両方の条件下で実施する試験)といい、最初の1週間に対照食を摂った人は次の1週間はオルニチンを、最初の1週間にオルニチンを摂った人は次の1週間は対照食を摂取するというやり方で行いました。その結果、各週でオルニチンを摂取したグループはもう一方のグループと比較して、眠りを誘うホルモンとして知られているメラトニンの分泌リズムが有意に1時間程度遅れることがわかりました。

このことから、オルニチンを摂取すると体内時計が夜型化する可能性が考えられ、特に極端な朝型の人にとってはメリットがあるかもしれません。極端な朝型になりがちな高齢者にとって睡眠の改善につながる可能性があります。

■豆類や大豆加工食品で早寝早起き体質になれる可能性

アミノ酸であるL-セリンは、神経伝達物質であるGABAの作用を増強し、鎮静効果があると考えられます。GABAは視交叉上核に豊富に含まれていることから、L-セリンの体内時計に対する作用が調べられました。

明暗周期を前進させて新しい明暗環境に順応するまでの期間を測る実験では、L-セリンを投与したマウスではその時間が短縮し、順応しやすかったという結果が出ました。

また、GABA受容体の働きを阻害するとL-セリンの作用も阻害されたという実験があり、睡眠をもたらすことで知られるGABAはL-セリンの作用機序に関与している可能性が考えられます。

ヒトでは、入眠前にL-セリンを摂取すると、夜間のメラトニン分泌リズムの位相が前進しました。したがって、L-セリンは、若者に多い夜型の人が入眠薬として服用することで、体内時計を朝型に持っていけるかもしれません。L-セリンは大豆などの豆類や大豆加工食品などに含まれています。

カーテンを開ける女性
写真=iStock.com/show999
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/show999

■豚肉、ホタテ、イカは目覚めを良くするかも

味の素が販売している、これもアミノ酸であるグリシンのサプリメントは、睡眠作用を有する機能性表示食品として市販されています。その入眠に導くメカニズムとして、視交叉上核に対する作用や体温低下などがあげられています。ただ、体内時計に対する作用に関しては、十分に解明されているとはいえません。

目から視交叉上核へ光の情報を伝える際には、グルタミン酸を神経伝達物質として使用しますが、グリシンはその受容体を活性化させる作用があるので、光に対する反応を促進させる可能性があります。すなわち、寝る直前に摂取したグリシンが明け方に効き、朝の光による体内時計の位相が前進し、メラトニン分泌の抑制をもたらす可能性があります。そのため朝の目覚め感を良くするのではないかと考えられています。グリシンは豚肉や魚介類(ホタテ、イカ)に多く含まれています。

■タンパク質豊富な朝食を摂っておくと夜の睡眠に効果的

必須アミノ酸(体内で十分に合成されないため、食品で摂る必要のあるアミノ酸)であるトリプトファンは、脳内の脳幹にある縫線核という部位で、神経伝達物質として重要なセロトニンへと合成されます。

柴田重信『食べる時間でこんなに変わる 時間栄養学入門 体内時計が左右する肥満、老化、生活習慣病』(ブルーバックス)
柴田重信『食べる時間でこんなに変わる 時間栄養学入門 体内時計が左右する肥満、老化、生活習慣病』(ブルーバックス)

セロトニン受容体は主時計の視交叉上核にも発現していますが、その一つに刺激薬を作用させると、体内時計の位相を変えることが認められています。したがって、トリプトファンがセロトニンとして作用する可能性があります。

またセロトニンは、脳の松果体というところでメラトニンへと合成されます。メラトニンは視交叉上核からの情報を直接受け取り、夜に増加し睡眠を引き起こします。また、トリプトファンを多く含む朝食を摂取し、明るい光を浴びて日中を過ごすことにより、夜間のメラトニンの分泌量が増加したとの報告があります。トリプトファンを多く含む食品には豆腐や納豆などの大豆製品や牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品、バナナや卵などがあり、朝食にタンパク質が豊富な食事を心がけると夜の睡眠に効果的です。

また、サプリメントとしてのトリプトファンの摂取によって睡眠が改善したとの報告があり、アメリカ合衆国ではよく使用されています。

----------

柴田 重信(しばた・しげのぶ)
早稲田大学先進理工学研究科教授
1953年生まれ。1976年九州大学薬学部薬学科卒業。1981年同大大学院薬学研究科博士課程修了。薬学博士。早稲田大学人間科学部教授などを経て、2003年より現職。日本時間栄養学会会長などを務める。監修書『食べる時間を変えれば健康になる』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、共著書『Q&Aですらすらわかる体内時計健康法 時間栄養学・時間運動学・時間睡眠学から解く健康』(杏林書院)など多数。

----------

(早稲田大学先進理工学研究科教授 柴田 重信)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください